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【取材の周辺】「制度融資」開始から1年、予算確保と継続支援で揺れる自治体の今

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公開日付:2021.02.16

 長引く「新型コロナウイルス」感染拡大に伴い、2020年春に全国の自治体で始まった制度融資が3月で1年を迎える。東京23区では、開始1カ月で1年分の融資斡旋実績を記録した区も相次いだ。コロナ禍での業績悪化を前に、中小企業の資金需要は一気に高まった。
 都内の企業倒産は小康状態を保っている。ただ、飲食業や宿泊業、小売業を中心に、コロナ前の業績や受注確保が難しい中小企業は多い。こうしたなか、“1年の節目”で制度が終了する可能性もあり、中小・零細企業の経営への影響が懸念されている。


1カ月でほぼ1年分の申請

 都内有数の繁華街を擁する渋谷区では、「昨年4月、5月が(申請の)ピークだった」と区役所の担当者は語る。「1カ月でほぼ1年分の申請が寄せられた」が、その後の6月は5月のほぼ半分に件数は落ち着いた。渋谷区は郵送での申請が基本だったが、急を要する事業者のために来庁での斡旋にも対応している。「アクリルパネル越しにご相談を受けている。急場の資金需要でいらっしゃる人も一定数いる」と担当者は説明する。
 年明け以降は、一日数件の申請にとどまっている。ただ、土地柄、飲食やサービス業が多く、申請締め切りは3月末までだが、新年度以降の継続も検討しているという。

 都内最高水準の上限5,000万円を設けた大田区。今年2月9日までに3,750件を斡旋した。大田区は当初、窓口で申請を受け付けていたが、翌日分の整理券が前日午前中に配布終了になるほど相談件数が急増したため、4月中旬から郵送での受付に切り替えた。8月までは他部署からの応援も得て対応してきたが、現在は「一日に多い時でも10件程度で、落ち着いている」と担当者は語る。

大田区

‌制度融資を知らせる掲示(2021年2月、大田区)

 “町工場の多い区”として知られる土地柄、最も多い業種は製造業だ。「全体の3割弱を占めている」(担当者)という。また、製造業は他の業種に比べ融資規模が大きく、「全体件数(3,750件)のうち、4分の1が上限の5,000万円の斡旋」(同)と資金需要は活発だった。  大田区では、終了時期を明確に設けておらず、実施期間を「当面の間」としている。ただ、区が負担する利子分が財政負担となる。いつまで継続できるかは「不透明な状況で、年度末は一つの区切りになるかもしれない」(同)という。

「個人タクシー業者からの問い合わせ多い」

 隣県に接し、運送業者の事業所が多いイメージの足立区。融資上限は1,000万円で、ピークだった昨年4月はおよそ1年分に匹敵する1,500件超を斡旋した。その後、東京都による制度融資も開始され、6月は約600件、7月は400件、8月は300件と件数は減少をたどった。2021年1月は月間130件にとどまった。「一時に比べ、だいぶ落ち着いた状況」と担当者は語る。
 件数は小康状態にあるが、申請が目立つ業種は「個人タクシーの事業者さんからの問い合わせがここに来て多いように感じる」(同)という。タクシー業者は、年末年始の外出自粛による利用の低下に加え、長引くインバウンド需要の消失も直撃している。

 情報通信などの新興企業や小売などが多い港区。4月中旬から担当人員を追加配置し、専用回線によるコールセンターを開設して、融資相談に応じてきた。担当者は「4月の1カ月間ですでに1年分の斡旋があった」と振り返る。斡旋件数は4月、5月だけで約3,300件にのぼる。2月上旬でもコールセンターは継続しているが、申請は「日に数件」という。
 緊急事態宣言が再発令された1月を境に「相談件数が増えるだろうと予測していたが、極端な件数の変化はなかった」(同)という。ただ、担当者は「件数が少ないなかでも、飲食関連は申請が多い」と続ける。
 土地柄、時短営業や「Go To イート」の停止が影響しているようだ。


 コロナ禍の2020年、東京都の企業倒産は1,392件とバブル期の1990年(1,401件)並みの低水準で推移した。各自治体の制度融資がこうした倒産件数の抑制に一定の効果を示している。
 23区では、現時点(2月16日)で20区が3月31日を申請締め切りとし、2区は明確な締め切り期日を設けていない。新年度以降も現行制度を継続すると告知しているのは江戸川区のみだ。
 それ以外の区では、新年度予算を踏まえて検討し、継続を決定することになる。
 23区内では、すでに「コロナ対策の融資に相当数の予算が割かれ、公共事業を一部減らすなどして制度融資向けの予算を充てている」(区職員)自治体もある。こうした区では、新年度以降の現行の融資継続には慎重な姿勢だ。

 東京商工リサーチが1月に都内3,091社を対象に行ったアンケートでは、2020年12月の売上高が前年同月から「減少した」と回答した中小企業は72.7%にのぼった。新型コロナによる経営への影響は長引いている。
 業績回復が見通せない企業は多いが、多くの自治体で制度融資の申請終了まで2カ月を切った。時間が限られるなか、業績回復が見通せない企業にどう向き合うのか。一時的な資金繰り緩和に繋がった支援策だが、返済猶予期間はまちまちで1年を経過すると返済が始まる企業もある。
 支援策が過剰債務を招きかねない状況下で、次の一手をどうするのか。各自治体の担当者の苦悩が続く。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年2月17日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

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