信用力に不安がある企業への注目が高まっている。背景にあるのは、「倒産増加」と「過剰債務率」の高止まりだ。
2023年の企業倒産(負債1,000万円以上)は8,690件(前年比35.1%増)に達し、増加率はバブル崩壊の1992年(同32.1%増)を超える高水準を記録した。2023年12月の「過剰債務」企業率は24.8%(※1)に達し、4社に1社が債務過多を訴える異常事態だ。コロナ禍の大規模で矢継ぎ早な資金繰り支援が過剰債務を引き起こし、いま企業を苦しめている。
※1 2023年12月18日公表「業績予想・過剰債務・私的整理に関するアンケート調査」
2023年の企業倒産の負債総額ランキングの上位には、パナソニック液晶ディスプレイ(株)(TSR企業コード:322101352)の5,836億円を筆頭に、「らくらくスマホ」を展開していたFCNT(株)(TSR企業コード:027062554、商号は当時)の872億円、印刷方式の有機ELディスプレイの普及を目指した(株)JOLED(TSR企業コード:300600798)の337億円など、かつて日本が世界を席巻していたエレクトロニクス分野の凋落が目立つ。パナソニック液晶ディスプレイは特別清算で会社が消滅し、FCNTとJOLEDは民事再生だが、一部事業を譲渡し、最終的に清算される予定だ。
こうした産業構造の大きな変化に着目する与信担当者もいる。「コロナ禍支援の反動による倒産増」という紋切り型の理由の「その先にある危機」を先取りし、債権保全や今後の営業展開に活かそうとする動きだ。その際に話題に上るのが「ゾンビ企業」だ。
ゾンビ企業の定義は複数ある。アカデミズムの分野では星岳雄・東京大学大学院経済学研究科教授による「事業自体に懸念のある企業であるが、事業再構築が行われることなく、債権者や政府の金融支援によって破たんを免れている」との定義が主流だ。いわゆる「星方式」は、長短プライムレートや社債の発行実績による最低クーポン率と貸借対照表(BS)上の有利子負債か支払利息の下限の理論値を導き出すことをベースとする。
一方、国際決済銀行(BIS)によるゾンビ企業の定義は、「設立10年超で3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオ(利払いに対する営業利益+受取利息・配当金の比率)が1を下回る企業」だ。
東京商工リサーチ(TSR)は、2022年2月にBISの基準に則り、ゾンビ企業率を初算出した。その後、TSR社内で議論を重ねてチューニングし、2023年2月にゾンビ企業率の改定値を公表した。具体的には、ゾンビ企業率の算定後に国内企業数(経済センサスベース)と掛け合わせてゾンビ企業数を推定することを念頭に置くと、国内企業数は必ずしも設立年がクリアでない場合があることを考慮し、分母となる企業数の算出では設立年の縛りを外した。
今回(2024年)は昨年の基準を基に、星教授が指摘する「債権者や政府の金融支援」にも注目した。資金繰りをつかさどり、金融支援の実働部隊となるのは金融機関だ。支援者であり主要債権者の性格も持ち合わせる金融機関の貸出利率は、中央銀行の政策に影響を受けることに注目した。遠くない将来に利上げ局面が到来することも予想されるため、借入金利の上昇も加味したゾンビ企業率も算出した。
まず、BIS基準を基にしたゾンビ企業率を算出した。TSRが財務データを保有する企業を対象にしたが、決算年度ごとに変動はあるため、分母となる企業数は概ね20万~30万社だ。2022年度(4-3月)は15.38%で、前年度より3.41ポイント悪化した。上昇幅は、リーマン・ショック以降では2010年度(2.19ポイント増)を上回り、最悪となった。2023年度は決算未確定の企業もあるため参考値だが、14.45%と若干良化した。ただ、過去の分析から直近決算の参考値は最終的に1ポイント以上悪化する傾向にあり、手放しで喜ぶことはできない。
さらに詳細な分析もした。分析の基となるBIS基準は、主に損益計算書(PL)を拠り所にしているため、BSやキャッシュフロー(CF)の数値は反映されていない。このため、分子を「営業利益+受取利息・配当金」ではなく、営業CF(簡便法)に変えて算出した。事業活動で生み出すキャッシュが恒常的に利払い負担を下回っている場合を「ゾンビ企業」と定義する分析だ。この「営業CF」基準によるゾンビ企業率は、2022年度が4.80%で、前年度より0.64ポイント悪化した。
参考値だが、2023年度は4.89%だ。営業CF基準では、2022年度の数値より悪化しているが、背景には海外需要や昨年5月の新型コロナの5類移行による国内の経済再活性化を取り込み、売上債権や棚卸資産が増加(営業CFのマイナス要因)し、ゾンビ企業率を押し上げた可能性を含むべきだろう。
また、近時の物価上昇が棚卸資産の増減に影響を与えていることも考慮する必要がある。
上記2つの基準で「ゾンビ企業」と判定された企業が期末時点で債務超過であるかも加味して分析した。すると、2022年度の「BIS基準+債務超過」によるゾンビ企業率は5.94%(前年度比1.49ポイント増)、「営業CF基準+債務超過」は2.11%(同0.35ポイント増)だった。2023年度(参考値)は、それぞれ5.37%、1.99%だ。
さらに、BIS基準+債務超過基準と営業CF基準+債務超過基準の双方に当てはまる最狭基準での割合も算出した。2022年度は1.60%(前年度比0.45ポイント増)、参考値の2023年度は1.50%だった。
今回の分析で、最も厳しい基準での2022年度の「ゾンビ企業率」は1.60%ということになる。
これを経済センサス(令和3年活動調査)の企業数である368万社に当てはめると、2022年度のゾンビ企業数は以下の通りだ。
○BIS基準:56.5万社(368万*15.38%、前年度比12.5万社増)
○営業CF基準:17.6万社(368万*4.80%、同2.3万社増)
○BIS基準+債務超過基準:21.8万社(368万*5.94%、同5.5万社増)
○営業CF基準+債務超過基準:7.7万社(368万*2.11%、同1.3万社増)
○最狭基準:5.8万社(368万*1.60%、同1.6万社増)
最も厳しい最狭基準でもゾンビ企業は5.8万社で前年度より1.6万社も増加したと推定される。最も緩いBIS基準では56.5万社で、12.5万社増だ。いずれのゾンビ企業率も悪化し、ゾンビ企業数が増加したが、推定率・数には大きな幅がある。1つの基準のみを取り上げてゾンビ企業数を断定するのは、いささか実態を見誤りかねない。
大事なことは支援が必要な先をよりクリアにすることだ。このため、窮境の度合いが最も深刻とみられる最狭基準でのゾンビ企業率を業種小分類ごとに分析した。2023年度は12月期と3月期決算の未達企業が多く、2022年度を中心に算出した(前年度比較含む)。
2022年度に「ゾンビ企業率」が高かったのは「一般貸切旅客自動車運送業」の16.67%で、唯一15%を上回った。また、4位に「一般乗用旅客自動車運送業」(12.20%)、9位に「一般乗合旅客自動車運送業」(5.26%)、10位に「貨物軽自動車運送業」(5.13%)がランク入りした。2021年度の自動車運送業の10位以内のランク入りは2業種のみで、2022年度は大幅に悪化した。これらの業種は、いわゆる「2024年問題」による人手不足の加速や労務費の増加が見込まれる。今回の調査によって、他業種と比べ経営が悪化していることが浮き彫りになったが、取り巻く環境はさらに厳しさを増すとみられる。
なお、BIS基準による2022年度のゾンビ企業率を業種別(45分類)で分析すると、「宿泊業」が52.96%、「織物・衣服・身の回り品小売業」が31.58%と算出される。コロナ禍の強力な支援策は企業決算に大きな影響を与えた。このため、少ない勘定科目に依存して算出するBIS基準では異常値が出やすいことを示している。
今年2月の日銀の政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決めた。ただ、市場では遠くない将来に引き締めに転じるとの観測が根強い。企業の資金調達は政策金利に影響される局面が強い。実際、TSRのアンケート調査では、約7割の企業が年内の借入金利の上昇を意識(※2)している。このため、今後の金利上昇がどの程度ゾンビ企業率を押し上げるかも分析した。
借入金利の上昇がゾンビ企業率に与える影響を複数シミュレーションした。2022年度の決算を基に、PLの支払利息額をBS上の有利子負債で割った数値を当該企業の調達(借入)金利とした上で、仮定上昇金利(今回は+0.1%、+0.3%、+0.5%)をプラスした。これに有利子負債を掛け合わせ、ゾンビ企業算定の元となる金利上昇時の仮定利払い負担を算出した。
この結果、BIS基準では0.1%の上昇でゾンビ企業率が15.38%から17.18%へ1.8ポイント悪化した。しかし、+0.3%では17.88%、+0.5%では18.58%で、「仮定金利上昇率」の増加幅に必ずしもゾンビ企業率の悪化は一致しない。ほかの基準も同様で、営業CF基準では0.1%の上昇で4.80%から5.28%、BIS基準+債務超過基準では5.94%から7.06%、営業CF基準+債務超過基準では2.11%から2.55%、最狭基準では1.60%から1.95%で、+0.1%でのゾンビ企業率の悪化幅が、+0.3%と+0.5%の上昇時を上回った。
借入金利の上昇によって市場から退出をすぐに余儀なくされるわけではないが、小幅な金利上昇でも影響が甚大なことがわかった。
※2 2024年2月14日公表「2024年2月金融政策に関するアンケート調査」
ここまでゾンビ企業の実像に迫り、具体的な支援先の立案に役立つ分析を試行錯誤した経緯を記載した。窮境局面にある企業への支援は一分一秒を争う。机上の空論を超えたハンズオンに繋がる分析は欠かせない。
TSRが構築する財務データは、原則として取材対象企業の協力を中心に成り立っている。一部では、「収集データをこねくり回して、ゾンビ企業とラベリングするのは失礼極まりない」との意見もある。また、過剰債務率の高止まりや倒産増加の局面を迎え、再生ビジネスバブルも一部では見受けられる。
ゾンビ企業率は格好のプレゼン資料にもなるが、TSRはコロナ禍の2020年後半から「過剰債務」問題を懸念し、声にしてきた。そして、2022年の初算出から一貫して「ゾンビ企業って言うな!」とのタイトルで、分析を基にした精緻な企業支援の必要性を主張している。
「ゾンビ企業って言うな!」は、真摯に事業に向き合ってきた経営者の怒りの声であり、経営者と現場で向き合うTSR社員の呵責であり、再生ビジネスバブルを我先に謳歌しようとする一部の再生界隈へのメッセージでもある。
政財界を取材すると、「再生局面にある企業は数十万社だが、実際に対応できるのは良くて十数万社だろう」との声も聞こえる。窮境する企業数に対して、救われる可能性がある企業はあまりにも少ない。このため、再生の可能性が高かったり、窮境局面に陥る恐れのある企業や業種へのサポートにシフトしているようだ。
今回の分析では、0.1%の金利上昇でもゾンビ企業率は敏感に反応し、金利引き上げの耐性は決して高くないこともわかった。
金融政策の決定は、物価や賃金上昇ばかりに目が向くが、金利上昇を見据えた影響や手当の検討も重要になっている。
ゾンビ企業って言うな!――。
キャッチーな数字だけでは、誰も救えない。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年3月6日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)
牛乳販売を事業目的とする企業の廃業は、2013年以降では2017年の25件が最多だった。
昔から、牛乳はカルシウムやたんぱく質など栄養価が高い食品として人気だった。だが、少子高齢化や販売チャネルの多様化で、地域に密着した牛乳販売店の優位性も崩れてきた。このため、牛乳以外にも扱い商品を広げる一方、コロナ禍では資金繰り支援や巣ごもり需要を取り込み、経営は落ち着いてみえた。
ところが、生乳生産と牛乳など乳製品の需給バランスが崩れた2023年、余剰生乳の大量廃棄が大きく報道された。原乳価格の値上げで、牛乳の小売価格は急上昇した。2022年10月の212円(店頭売り・紙容器入り、1,000ml、総務省「小売物価統計調査」)が2023年1月には235円に上昇し、同年12月も256円と高止まりしている。
値上げによる需要減や配達コストの上昇、人手不足、そして宅配やデリバリーなど新たな参入が相次ぐ。また、“家庭の冷蔵庫”であるコンビニの出店攻勢もとどまらず、環境は厳しさを増している。
牛乳宅配最大手の明治は、スーパーやコンビニでは手に入らない牛乳以外の食品などの宅配専用商品を開発し、特約店は全国で約3,000店に達するという。
コロナ禍の2020年、「牛乳販売店」の新設法人は過去最多の20社に急増した。だが、2021年は13社、2022年は5社と急減した。この背景には、コロナ禍を経た消費者の行動も影響しているとみられる。今後は廃業だけでなく、倒産の増加も危惧される。2024年は、牛乳販売店の真価を問われる年になりそうだ。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年3月14日号掲載予定「SPOT情報」を再編集)
書店の倒産(負債1,000万円以上)は、2014年から2023年の10年間で140社に及ぶ。
ピークの2016年は25社発生した。2016年は、出版取次の(株)太洋社(千代田区)が自主廃業の方針から一転して3月に破産を申請した。連鎖する形で同月30日までに18社の書店が、次々と倒産や廃業に追い込まれた。書店の経営環境が厳しさを増し、書籍を卸す取次店の業績悪化も深刻な時期だった。
その後、書店の倒産は一進一退が続き、コロナ禍では資金繰り支援や巣ごもり需要などを背景に、倒産は減少に転じた。2021年、2022年の倒産は各5社と小康状態にあったが、支援縮小や特需が一巡した2023年は一気に13社と2.6倍に急増した。
倒産以外で事業を停止した休廃業・解散も分析した。太洋社が破産した2016年の休廃業・解散は63社(前年比28.5%増)と急増。その後も増勢をたどり、2018年は78社、2019年は77社と高水準が続いた。
コロナ禍では倒産と同様、休廃業・解散も減少したが、60社前後で高止まり状態にある。
倒産と休廃業・解散の合計は、ピークの2019年に101社に達した。コロナ禍では減少したが、2023年は67社に微増し、過去10年間で764社が市場から退出している。
一方、書店の新設法人は、2013年が81社だった。2013年の倒産と休廃業・解散の合計は75社で、書店は6社の純増だった。
ところが、新設数の減少から2014年は8社の純減に転じ、2019年は56社まで純減が拡大した。コロナ禍の2022年も21社の純減で、2014年から8年連続で純減が続いている。
電子書籍が浸透し、書店の存在が揺らいでいる。店舗で目当ての本を探す楽しみや、知らない本との出会いも、書店の減少で失われつつある。書店の復活には“待ちの営業”から客足を向かせる創意工夫への転換と同時に、国や出版社の継続的な支援が必要だ。
国内106銀行の2023年9月中間期の総貸出金残高は538兆5,999億円(前年同期比3.7%増)で、9月中間期では2012年から12年連続で増加。集計を開始した2010年以降、最高を更新した。
中小企業等向け貸出は365兆2,070億円(同3.6%増)、地方公共団体(以下、地公体)向け貸出は39兆5,098億円(同4.5%増)だった。2023年9月期は、総貸出金だけでなく、中小企業等向けと地公体向けもそろって最高を記録した。
コロナ禍は収束に向かうが、物価高や人件費上昇などのコストアップで企業の資金需要は増している。こうした状況を背景に貸出は増えたが、一方で過剰債務の中小企業への銀行の貸出姿勢が注目されている。
過去最高を記録した総貸出金残高の構成比率は、中小企業等向けが67.80%(前年同期67.85%)、地公体向けが7.33%(同7.27%)だった。9月期の貸出比率は、中小企業向けはコロナ禍の資金繰り支援が活発だった2021年をピークに、2年連続で前年同期を下回った。一方、地公体向けは2年ぶりに前年同期を上回った。
コロナ関連支援で過剰債務に陥った中小企業が多いため、貸倒リスクの低い地公体への貸出を積極的に進める銀行行動の一面が垣間見える。
負債1,000万円以上の企業倒産は、2024年2月まで23カ月連続で前年同月を上回り、増勢が鮮明になっている。業績回復が進まず、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)の返済原資を捻出できない中小企業は多い。さらに、円安による物価高や人件費上昇でコストアップが加速し、企業の資金繰りに大きな負担となっている。金融庁は、金融機関に事業再生への取り組み強化を促すが、リスクを取りながら対応できるか金融機関の力量が問われている。
※本調査は、国内銀行106行の2023年9月中間期決算の「地方公共団体向け」と「中小企業等向け」の貸出金残高を前年同期と比較、分析した(りそな銀行、沖縄銀行は信託勘定を含む)。「中小企業等」には、個人向け貸出を含む。
2023年9月中間期の中小企業等向け貸出は365兆2,070億円(前年同期比3.6%増、13兆255億円増)で、前年同期(352兆1,814億円)を上回り過去最高を更新した。伸び率は、コロナ禍から売上が回復したほか、物価高などで価格が上昇し運転資金の需要が押し上げた。ただ、地場堅実企業は伸びたが、過剰債務を抱えた中小・零細企業も多く、前年同期の3.7%増より伸び率は0.1ポイント縮小した。貸出比率は67.80%(前年同期67.85%)と、2年連続で前年同期を下回った。
業態別の中小企業等向け貸出は、大手行が141兆8,587億円(前年同期比3.5%増)、地方銀行が181兆579億円(同3.9%増)、第二地銀が42兆2,903億円(同3.2%増)と、全業態で前年同期を上回った。前年同期を上回ったのは、大手行が7行すべて(前年同期6行)、地方銀行は62行のうち58行(同58行)、第二地銀は37行のうち29行(同32行)の合計94行(構成比88.6%、前年同期96行)で、前年同期から2行減少した。
貸出比率は、大手行が61.49%(前年同期61.37%)で前年同期を上回ったが、地方銀行71.70%(同71.90%)と第二地銀76.29%(同76.55%)は前年同期を下回った。
コロナ禍の資金繰り支援策の反動で過剰債務を抱えた中小企業は多く、顧客層の違いから大手行と地方銀行、第二地銀で貸出比率の伸びに差が出た。
総貸出に占める中小企業等向け貸出の構成比トップは、南日本銀行の94.97%(前年同期93.76%)だった。調査を開始した2010年以降で、初めてトップになった。以下、スルガ銀行94.65%(同95.50%)、佐賀共栄銀行94.52%(同93.05%)、神奈川銀行93.45%(同94.02%)、福岡中央銀行92.64%(同87.67%)と続く。一方、最低は東邦銀行の49.99%(同49.92%)で、唯一、50%を下回った。
中小企業向け貸出比率は、大手行7行では2行の上昇にとどまった。地方銀行は、62行のうち33行(構成比53.2%)、第二地銀は37行のうち22行(同59.4%)と半数を超えた。大手や上場企業への貸出が主体の大手行と、地元中小企業がメインの地方銀行・第二地銀で対応に差が出た。
コロナ禍から本格的に経済活動が動き出したが、業績回復が遅れる企業や過剰債務を抱えた中小・零細企業の支援に金融機関がどのように取り組むか注視が必要だ。
銀行本店の所在地別では、中小企業等向け貸出金残高は10地区すべてで前年同期を上回った。
増加率トップは、中国の5.6%増。以下、中部4.4%増、東京4.2%増の順。また、貸出比率は四国の78.24%を筆頭に、近畿76.30%、中部76.28%の順。貸出比率の上昇は、東北、東京、中部、北陸、中国、四国の6地区だった。
地公体向け貸出金残高は、39兆5,098億円(前年同期比4.5%増)で、9月中間期では調査開始した2011年以降、13年連続で前年同期を上回り、過去最高を更新した。
地公体向け貸出金残高は、北海道、中部、中国、四国を除く6地区で増加した。
106行のうち、地公体向け貸出金残高が前年同期を上回ったのは43行(構成比40.5%)で、前年同期(48行)より5行減少した。業態別では、大手行が4行(前年同期3行)で前年同期を上回ったが、地方銀行が27行(同29行)、第二地銀が12行(同16行)だった。
総貸出金残高に占める地公体向け構成比は7.33%(前年同期7.27%)だった。経済活動の再開で中小企業等向け貸出が伸び、地公体向けの貸出比率は前年同期をわずかに上回る水準にとどまった。
地公体向け貸出金の構成比が前年同期を上回ったのは34行(構成比32.0%)で、前年同期の35行から1行減少した。地公体向け貸出比率が最も高かったのは、熊本銀行の47.08%(前年同期35.92%)。次いで、青森銀行36.13%(同30.93%)、十八親和銀行35.64%(同35.36%)と続く。貸出比率30%以上は4行(同4行)、同20%以上30%未満は11行(同8行)だった。
国内106銀行の2023年9月中間期の中小企業等向け貸出金は、大手行(前年同期比3.5%増)、地方銀行(同3.9%増)、第二地銀(同3.2%増)の全業態で伸ばした。
アフターコロナに向けて経済活動は、本格的に再開した。しかし、コロナ禍からの業績回復が遅れている企業は多い。そうしたなか、円安などによる原材料やエネルギー価格の上昇、人材確保のための賃上げなどでコスト負担が上昇し、企業の資金繰りを圧迫している。こうした企業の再生のために、銀行がどこまで踏み込んだ対応ができるか、銀行の存在意義が問われている。
2024年2月の負債1,000万円未満の企業倒産は、32件(前年同月比27.2%減)で、10カ月ぶりに前年同月を下回った。2月としては、2021年(34件)以来、3年ぶりに30件台になった。
ただ、円安が続くなかで物価は高止まりしている。さらに、人材確保のための賃上げなど、各種のコストアップが企業収益に足かせとなり、小・零細企業の体力をジワリと奪っている。
負債1,000万円未満の倒産は、2月こそ30件台に減少したが、当面は一進一退を繰り返しながら増勢をたどるとみられる。
産業別は、最多が小売業(前年同月比66.6%増)とサービス業他(同58.3%減)の各10件(構成比31.2%)。次いで、 農・林・漁・鉱業と卸売業が各3件と続く。
原因別では販売不振が21件(前年同月比22.2%減)と6割超(構成比65.6%)を占め、資本金別は1千万円未満(個人企業他を含む)が29件(前年同月比30.9%減)と大半を占めた(構成比90.6%)。
形態別は、破産30件(同93.7%)、特別清算2件(前年同月ゼロ) で、すべて消滅型だった。
政府は、コロナ禍からの企業の経営再建に向け、さまざまな施策を打ち出している。しかし、負債1,000万円未満の倒産は小・零細企業が大半で、金融機関からの借入の多くは信用保証協会の保証付融資で、プロパー融資は少額にとどまり金融機関との接点は乏しい。このため、金融機関の支援の網から漏れるケースもある。
経済活動が活発化するなか、物価高やエネルギー価格の上昇、人手不足など経営課題は多く、負債1,000万円未満の倒産は増加トレンドにあるとみられる。
※本調査は、2024年2月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。
2024年2月の負債1,000万円未満の倒産は、32件(前年同月比27.2%減)発生した。
コロナ禍での各種支援の縮小・終了とともに、2023年5月から2024年1月までに9カ月連続で前年同月を上回っていたが、2月は10カ月ぶりに前年同月を下回った。
ただ、コロナ禍で中小企業の資金繰りを大きく緩和したゼロゼロ融資の返済が本格化している。さらに、円安を背景に、原材料やエネルギーなど幅広い物価上昇に見舞われている。経済活動の再開で人手不足が深刻さを増すなか、賃上げムードが高まり人件費上昇も見込まれるなど、種々のコストアップが資金繰りに重くのしかかっている。
負債1,000万円未満は、小・零細企業が多く、資産背景がぜい弱で、新たな資金調達も厳しい。金融機関の支援も行き届かないこともあり、倒産は緩やかに増勢をたどるとみられる。
産業別は、10産業のうち、農・林・漁・鉱業と小売業、情報通信業の3産業が前年同月を上回った。
小売業10件(前年同月比66.6%増、構成比31.2%)と農・林・漁・鉱業3件(同200.0%増、同9.3%)が2年連続、情報通信業1件(前年同月ゼロ)が4年ぶりに、前年同月を上回った。
一方、サービス業他10件(前年同月比58.3%減)が2年ぶり、卸売業3件(同40.0%減)と運輸業1件(同66.6%減)が3年ぶり、不動産1件(同50.0%減)が4年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
建設業は2件、製造業は1件で、前年同月と同件数だった。金融・保険業は、2月としては2017年より8年連続で発生せず。
業種別では、野菜作農業と無店舗小売業(その他の小売)が各2件、素材生産サービス業、建築工事業、木造建築工事業、オフセット印刷業、受託開発ソフトウェア業、貨物軽自動車運送業、酒類卸売業、非鉄金属スクラップ卸売業、医療用機械器具卸売業、野菜小売業、コンビニエンスストア、書籍・雑誌小売業、無店舗小売業(各種商品小売)、無店舗小売業(飲食料品小売)、貸家業、喫茶店、訪問介護事業、自動車一般整備業などが各1件で、前年同月を上回った。
形態別は、32件すべてが消滅型の倒産だった。
破産が30件(前年同月比31.8%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。ただ、構成比は93.7%(前年同月100.0%)と、負債1,000万円未満の倒産の大半を占めた。
このほか、特別清算が2件で、8年ぶりに発生した。
負債1,000万円未満は、ほとんどが小・零細企業で、単独での再生計画作成はノウハウがなく難しい。また、事業の独自性も乏しく、民事再生法などの再建型ではなく、消滅型の破産を選択する企業が多い。
原因別は、最多が「販売不振」の21件(前年同月比22.2%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。構成比は65.6%(前年同月61.3%)だった。
このほか、「事業上の失敗」3件(前年同月比40.0%減)が3年ぶり、「他社倒産の余波」5件(同16.6%減)と「既往のシワ寄せ(赤字累積)」1件(同50.0%減)が2年ぶり、代表者の病気や死亡を含む「その他」1件(同50.0%減)が2年連続で、それぞれ前年同月を下回った。
一方、「事業外の失敗」が1件で、2月では2018年以来、6年ぶりに発生した。
資産背景が乏しい小・零細企業は、自力で経営不振から抜け出すことが難しい。さらに、経営再建や再生のための人的・資金的なリソースも乏しく、いったん歯車が狂うと倒産に追い込まれやすい。
資本金別は、1千万円未満が29件(前年同月比30.9%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。構成比は90.6%(前年同月95.4%)で、4.8ポイント低下した。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が14件(前年同月比30.0%減)、「1百万円未満」が7件(同12.5%減)、「個人企業他」が6件(同45.4%減)、「5百万円以上1千万円未満」が2件(同33.3%減)と、すべてで前年同月を下回った。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が前年同月と同件数の2件だった。一方、「5千万円以上1億円未満」は1件で、2月では2011年以来、13年ぶりに発生した。
2024年2月の「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」を利用後の倒産は、42件(前年同月比16.0%減)で、2023年12月から3カ月連続で前年同月割れが続いた。
月次では2023年3月に最多の63件が発生したが、その後は次第に落ち着き、同年11月から4カ月連続で40件台で推移している。初めて確認できた2020年7月からの累計倒産件数は、1,302件に達した。
産業別では飲食店(6件)などのサービス業他が最多の12件(前年同月比20.0%減)で、全体の約3割(構成比28.5%)を占めた。
負債額別では、負債1億円以上5億円未満が17件(前年同月比5.5%減)、同5億円以上10億円未満が5件(同150.0%増)発生し、同1億円以上は合計22件(構成比52.3%)と過半数を占めた。
コロナ禍の急激な業況悪化で、多くの企業がゼロゼロ融資で窮状をしのぎ、企業倒産は記録的な低水準にとどまった。しかし、コロナ禍からの業績回復が遅れるなか、資金繰り支援の副作用で過剰債務に陥り、新たな資金調達が難しくなっている。さらに、物価高や人件費高騰、人手不足などで資金繰りは余裕を欠き、ゼロゼロ融資返済も負担になり行き詰まる企業が相次いでいる。
金融庁は、2023年1月から開始した「コロナ借換保証」制度や資本性劣後ローンなどの活用を促し、金融機関に継続的な伴走支援を求めている。中小企業庁も、今年2月から1年間の期限で、早期経営改善計画の早期策定を支援(補助上限15万円)することで、民間金融機関に経営改善支援の促進を求めている。
今年4月に民間金融機関のゼロゼロ融資の返済開始がピークを迎える。物価上昇や人手不足に伴う人件費上昇も見込まれるなか、企業倒産は増勢を強めている。各種支援策が打ち出されるが、どこまで効果があるか未知数で、「ゼロゼロ融資」利用後倒産の動向はしばらく目が離せない。
※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。
2024年2月の「ゼロゼロ融資」を利用後の倒産は42件(前年同月比16.0%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。また、2023年11月から4カ月連続で40件台にとどまり、小康状態が続く。
負債総額は83億5,200万円(同55.7%減)で、2カ月ぶりに100億円を下回った。負債10億円以上の大型倒産(前年同月5件)がなく、負債総額を押し下げた。
産業別では、サービス業他が12件(前年同月比20.0%減)で最多、全体の約3割(構成比28.5%)を占めた。
次いで、建設業(前年同月同数)と製造業(前年同月比12.5%増)が各9件、小売業が5件(同66.6%増)、卸売業(同62.5%減)と運輸業(同40.0%減)が各3件、情報通信業が1件(同50.0%減)の順。
農・林・漁・鉱業と金融・保険業、不動産業は、前年同月と同様に発生がなかった。
業種別(中分類)では、「飲食店」6件が最多。コロナ禍で集客が落ち込み、業績不振が続くなか、原材料高が経営を直撃、返済の目途が立たず、事業継続を断念した。
次いで、「総合工事業」5件が続く。資材価格の高騰や人手不足に伴う労務費の上昇などで資金繰りが悪化、業績回復が進まず行き詰まった。
このほか、「食料品製造業」と「織物・衣服・身の回り品小売業」が各3件で並び、飲食関連やアパレル関連の苦境を反映した。
形態別は、破産が38件(前年同月比7.3%減)で最多。特別清算2件(前年同月ゼロ)と合わせた『消滅型』倒産は40件(前年同月比2.4%減)で9割超(構成比95.2%)を占めた。
『再建型』は民事再生法が1件(前年同月4件)で、2カ月連続で発生した。
このほか、私的倒産の取引停止処分が1件(同4件)。
従業員数別の最多は、5人未満の22件(前年同月比8.3%減)だった。次いで、10人以上20人未満が8件(同27.2%減)、5人以上10人未満が6件(同14.2%減)で続く。10人未満の小規模企業は28件で、約7割(構成比66.6%)を占めた。
50人以上300人未満は2件、300人以上はゼロ件で、それぞれ前年同月と同数だった。中堅規模以上は前年同月と変わらなかった。
地区別の最多は、関東の17件(前年同月21件)で、4割(構成比40.4%)を占めた。次いで、九州8件(前年同月5件)、中国6件(同ゼロ)、東北5件(同9件)、北海道と中部が各2件(同3件)、近畿(同8件)と四国(同ゼロ)が各1件の順。北陸(同1件)を除く8地区で発生した。
都道府県別では、東京都が9件(前年同月11件)で最多。このほか、広島県が4件(同ゼロ)、宮城県が3件(前年同月同数)で続く。2023年11月以来、4カ月連続で10件以上発生した都道府県はない。
2024年2月の「物価高」を起因とした倒産は57件(前年同月比39.0%増)で、前年同月の41件の約1.4倍に増加した。今年に入り、2カ月連続で前年同月を上回った。
負債総額は187億8,800万円(同4.7%減)で、2カ月ぶりに前年同月を下回った。ただ、10カ月連続で100億円以上が続き、円安などを背景とした財・サービスなどの価格上昇が、財務体質がぜい弱な企業にのしかかっている。
産業別では、最多が製造業の20件(前年同月比150.0%増)。次いで、運輸業10件(同66.6%増)、卸売業9件(同12.5%増)と続く。これらの産業は下請企業も多く、原材料や資材、燃料などの価格上昇分の価格転嫁が難しいことを示している。
負債額別は、負債1億円以上が33件(同43.4%増)で、約6割(構成比57.8%)を占めた。
形態別は、破産が49件(前年同月比32.4%増)で、8割以上(構成比85.9%)に達した。
今年2月実施の「価格転嫁に関するアンケート」調査では、今年1月の本業に係るコストが前年1月より「増加した」と回答した企業は7割(構成比73.6%)だった。また、コスト上昇分を「価格転嫁できていない」と回答した企業のうち、「原材料や燃料費、電気代の高騰」をあげた企業は約4割(同37.9%)を占めた。
今年4月、コロナ禍の資金繰り支援のゼロゼロ融資の返済開始が最後のピークを迎える。ただ、コロナ禍からの業績回復が遅れ、過剰債務に陥った企業は多い。そうした企業は、物価高への耐性が乏しいが、さらに人材確保のための賃上げなどのコスト上昇も見込まれることから、収益悪化による資金繰りへの影響が懸念される。
※本調査は、2024年2月の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。
2024年2月の「物価高」倒産は57件(前年同月比39.0%増)で、2カ月連続で前年同月を上回った。負債総額は187億8,800万円(同4.7%減)で、2カ月ぶりに前年同月を下回った。ただ、2023年5月より10カ月連続で負債総額は100億円超の推移が続く。
外国為替相場は1ドル=150円を挟んでの推移と、依然として円安基調となっている。実質賃金が前年同月を下回るなか、生活必需品の値上げが相次ぎ、消費停滞の影響も懸念される。
産業別は、5産業で前年同月を上回った。
最多は、製造業の20件(前年同月比150.0%増、前年同月8件)。次いで、運輸業10件(同66.6%増、同6件)、卸売業9件(同12.5%増、同8件)と続く。
外国為替相場は1ドル=150円前後での推移が続くなかで、原材料や資材、食材に加えて、電気やガス、燃料などのエネルギー価格の上昇が続いている。経営体力がぜい弱な企業ほど、価格転嫁は難しく、資金繰りに大きな影を落としている。
業種別(業種中分類)は、道路貨物運送業が10件(前年同月比66.6%増、前年同月6件)で最も多い。今年4月1日からドライバーの時間外労働時間の上限が規制されるなど、いわゆる「2024年問題」が間近に迫るなかで人手不足が顕在化。さらに、燃料価格の高止まりもあり、企業収益に影響を及ぼしている。
次いで、食料品製造業が9件(前年同月4件)、飲食店が4件(同5件)と続く。食材だけでなく、水道や電気・ガスなどの価格が上昇する一方で、個人消費者に近いだけに価格転嫁は容易ではない。
形態別は、破産が49件(前年同月比32.4%増)で、「物価高」倒産の8割以上(構成比85.9%)を占めた。ゼロゼロ融資返済だけでなく、物価高や人手不足などで事業環境は厳しさを増している。コロナ禍からの業績回復が遅れ、コストアップへの対応ができずに資金繰りに行き詰まり、破産を選択するケースが多い。
このほか、取引停止処分が4件(前年同月比33.3%増、前年同月3件)、民事再生法が3件(前年同月ゼロ)、特別清算が前年同月と同件数の1件だった。
負債額別は、最多が1億円以上5億円未満の24件(前年同月比33.3%増、前年同月18件)。
次いで、5千万円以上1億円未満の14件(同55.5%増、同9件)、1千万円以上5千万円未満の10件(同11.1%増、同9件)と続く。
1億円以上が33件(前年同月比43.4%増)で、全体の約6割(構成比57.8%)を占めた。
資本金別は、1千万円未満が32件(前年同月比60.0%増)で、構成比は5割超(56.1%)を占めた。
1千万円未満の内訳は、5百万円以上1千万円未満が14件(前年同月比133.3%増)、1百万円以上5百万円未満が12件(同33.3%増)、1百万円未満(同50.0%増)と個人企業他(同±0.0%)が各3件だった。
1千万円以上は25件(同19.0%増)だった。
地区別は、中部、北陸を除く7地区で前年同月を上回った。増加率の最大は、関東の前年同月比77.7%増(9→16件)。以下、北海道の同66.6%増(3→5件)、東北と九州の同60.0%増(5→8件)の順。
都道府県別は、増加が17道府県、減少9県、同件数が21都府県だった。47都道府県のうち、18県(構成比38.2%)で発生がなかった。
最多は、福岡の6件(前年同月2件)。以下、北海道5件(同3件)、東京(同4件)と兵庫(同2件)が各4件の順。
健康ブームを背景に、全国に広がったフィットネスクラブの倒産が急増している。ことし1月に3件、2月も3件が発生し、2023年度(4月‐2月)はすでに28件に達した。これまで最多だった2022年度(16件)を12件上回り、1998年に統計を開始以来、過去最多を記録した。
コロナ禍の外出自粛などでダメージを受けたフィットネスクラブが多く、コロナ禍が落ち着いた後は、駅近、安価、24時間年中無休など、様々なサービスを提供するフィットネスクラブが乱立し、競争が激化している。その一方で、コスト増への対応やトレーナーなどの人手不足もあって、業績不振が続くクラブの淘汰が急速に進んでいる。
※ 本調査は、日本産業分類の「フィットネスクラブ」の倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。
2023年度のフィットネスクラブの倒産は、2月までに28件に達し、すでに年度最多だった2022年度の16件を上回り、過去最多を更新した。現在のペースで推移すると、2023年度は30件を超える可能性が高い。
倒産増加の背景は、競争激化による「販売不振」だ。2023年度の28件のうち、販売不振が20件(構成比71.4%)と圧倒的に多い。さらに、28件すべて資本金1億円未満(個人企業含む)で、小規模事業者の行き詰まりが目立つ。ただ、負債は1億円以上が7件(前年同期2件)と3倍増し、ブームに乗った無謀な先行投資が負担になった構図が浮かび上がる。
これを裏付けるように、形態別では破産27件(構成比96.4%)、特別清算1件(同3.5%)とすべてが消滅型の倒産だった。いったん顧客離れが進むとフィットネスクラブの事業再生は難しい現実を突きつけている。
フィットネスクラブは、高価格帯で設備やトレーナーなどが充実したクラブと、一部のトレーニングマシーンを設置した安価なクラブに二極化している。老若男女を問わず健康志向の高まりで市場は拡大するが、急速に全国展開する「ChocoZAP(チョコザップ)」やグローバル展開する有力クラブの大手企業と、地場企業の間で価格、設備などを前面に出した顧客獲得競争が激化している。
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」によると、2023年のフィットネスクラブの利用者(延べ2億1,679万人、前年比3.0%増)は増加したが、事業所数(1,497カ所、同0.2%減)は減少している。テナント代や光熱費、トレーナー(人件費)などのコスト上昇と、広告や設備への先行投資などのバランスで採算が取れないフィットネスクラブの淘汰は今後も続きそうだ。
2023年度の「飲食業」倒産(負債1,000万円以上)は、2月までに842件(前年同期比65.7%増)に達し、年度で過去最多だった2019年度の841件を上回った。このまま2023年度の飲食業倒産の月間平均76.5件で3月も倒産が発生すると、年度では初めて900件を超えることになる。
飲食業は、「新型コロナ」関連倒産が478件(同44.8%増)、「物価高」関連倒産が54件(同260.0%増)、「人手不足」関連倒産が53件(同96.2%増)と急増、取り巻く厳しい環境が倒産を押し上げている。
業種別では、すべての業種で前年同期を3割以上上回った。特に、コロナ特需で好調だった「持ち帰り飲食サービス業」が前年同期比121.7%増(23→51件)、新しい生活様式の浸透により接待需要の低迷が続く「すし店」が同107.1%増(14→29件)で、大幅増が目立った。
手厚いコロナ関連支援が奏功し、飲食業の倒産は2022年度まで3年連続で減少したが、今年度に入り増加に転じた。インバウンド需要はあっても客足がコロナ禍前に戻らず、食材費や光熱費の上昇、人手不足や最低賃金の上昇などによる人件費の高騰で、採算悪化が深刻さを増している。
東京商工リサーチが2月に実施したアンケート調査で、コスト上昇分を価格に転嫁できていない飲食業は41.6%を占めた。物価高でも客足減少の懸念からメニュー価格の改定に踏み切れないケースもあるが、倒産が増えてきた飲食業界にとって、価格転嫁が死活問題になっている。
※本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー, キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2023年度(2023年4月-2024年2月)の倒産を集計、分析した。
2023年度の「飲食業」倒産は、2月までに842件(前年同期比65.7%増)発生し、4年ぶりに前年同期を上回った。また、これまで年度で最多だった2019年度(841件)を超えた。
コロナ禍の飲食業倒産は、手厚い支援もあって低水準で推移していた。しかし、2023年に入り、コロナが5類に移行した一方、各種支援策の縮小・終了を受け様相が一変。好調なインバウンド需要を取り込めなかった事業者や業績回復が遅れた事業者を中心に、倒産が急増している。
「新型コロナウイルス」関連倒産は478件(前年同期比44.8%増、前年同期330件)発生し、2月時点で年度の最多を更新した。また、物価高や人手不足の影響も深刻さを増している。「物価高」関連倒産は54件(同260.0%増、同15件)、「人手不足」関連倒産は53件(同96.2%増、同27件)と急増した。
経済活動が再開し、インバウンド需要が盛り上がるが、人件費や食材費、電気代などの加速度的なコストアップが飲食業者の利益を圧迫している。コロナ禍で悪化した財務の立て直しが進まず疲弊した事業者や、ゼロゼロ融資で借入負担が重い事業者も多く、飲食業の倒産は今後も増加が続く可能性が高い。
最多は日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店などの「専門料理店」の203件(前年同期比70.5%増)。以下、「食堂,レストラン」が188件(同66.3%増)、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」が155件(同42.2%増)と続く。
増加率では、最大が「持ち帰り飲食サービス業」の前年同期比121.7%増(23→51件)。次いで、「すし店」の同107.1%増(14→29件)、「バー,キャバレー,ナイトクラブ」の同89.6%増(29→55件)の順。コロナ禍の参入が増加したが、需要が一巡し競合から淘汰が進む「持ち帰り」業態や、インバウンド回復の一方で、接待需要がコロナ禍前の水準に戻らず苦戦する「すし店」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」の倒産が目立った。
コロナ関連倒産が占める割合が最も高かったのは、「そば・うどん店」の69.2%(コロナ関連9件)。以下、「専門料理店」(同140件)と「すし店」(同20件)の68.9%、「居酒屋」の63.8%(同99件)と続く。上位4業種で、倒産に占めるコロナ倒産の割合が6割を超えた。
物価高倒産の割合が最大だったのは、「宅配飲食サービス業」の16.3%(物価高関連10件)だった。
最多は、「破産」の797件(前年同期比66.0%増)で、飲食業倒産の94.6%を占めた。以下、「民事再生法」の25件(同150.0%増)、「特別清算」の15件(同15.3%増)と続く。
飲食業は小・零細規模が中心で、経営体力に乏しく、コロナ禍では消滅型の破産を選択するケースが大半。ただ、アフターコロナの人流回復もあって、再建型が占める割合は2.9%と3年ぶりに上昇した。
最多は「1千万円以上5千万円未満」の610件(前年同期比85.4%増、構成比72.4%)。次いで、「5千万円以上1億円未満」が119件(同26.5%増、同14.1%)だった。飲食業倒産では、負債「1億円未満」が86.5%を占めた。
増加率では、「10億円以上」の前年同期比150.0%増(2→5件)が最大。
飲食業者の倒産は引き続き小・零細規模が中心となっているが、一方で中堅以上の規模でも増加の兆しがみられる。
件数が「増加」は28都道府県、「減少」は15県、「同数」は4県だった。
件数が10件以上の都道府県では、増加が山口450.0%増(2→11件)、群馬325.0%増(4→17件)、兵庫245.0%増(20→69件)、福岡241.1%増(17→58件)、三重200.0%増(5→15件)、広島127.2%増(11→25件)、東京101.4%増(69→139件)、愛知91.6%増(36→69件)、神奈川82.3%増(17→31件)、栃木77.7%増(9→16件)、奈良75.0%増(8→14件)、静岡63.6%増(11→18件)、和歌山62.5%増(8→13件)、大阪51.6%増(62→94件)、滋賀44.4%増(9→13件)、北海道40.0%増(15→21件)、京都39.2%増(28→39件)、千葉30.7%増(13→17件)、茨城18.1%増(11→13件)。
一方、減少は、埼玉18.7%減(16→13件)のみ。宮城は前年同期と同件数(14件)だった。