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2025年、上場廃止への「TOB・MBO」は112社 TOBの買い手は約30%がアクティビストを含む「ファンド」

~2025年上場企業「TOB・MBO」動向調査~

 2025年に上場廃止を前提にした株式公開買付け(以下、TOB)は80社、および経営陣による買収(以下、MBO)は32社で、合計112社にのぼることがわかった。
 TOBの買い手は、最多がアクティビスト(物言う株主)を含む「ファンド」の22社で約3割を占め、アクティビストを含むファンドによる提案が活発なことがうかがえる。また、親会社が株式取得のために設立した会社などの「親会社系」が18社、「同業他社(大株主以外)」が15社、「大株主(ファンド除く)」が14社と続き、異業種の技術を自社の成⾧に取り込みたい企業などの「その他」も11社あった。

 東京証券取引所(以下、東証)は2023年3月、プライム市場とスタンダード市場の上場企業約3,300社を対象に、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請した。これを受けて、上場各社は資本収益性や中長期的な企業価値向上に向けた具体的な計画を策定。東証は取り組み状況を一覧表で公表し、働きかけを継続している。
 近年はPBR(株価純資産倍率)が1を下回る企業に対し、アクティビスト投資家が一定割合の株式を保有し、企業価値向上に向けて影響力を発揮するケースも目立つ。
 企業の中には収益性向上に抜本的に取り組むため、アクティビストを含むファンドの傘下に入り上場を廃止するケースもある。一方、アクティビストなどの標的になる前にMBOなどで上場廃止を選択する企業も目立つ。
 また、グループ全体の資本効率の向上を目指し、親会社が上場子会社にTOBを実施する「親会社系」のケースもあり、経営資源の適切な配分に留意する動きが強まっている。
 東証はその後も、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の変更、グロース市場の上場維持基準の見直しなど、上場企業に企業価値向上への取り組みを促す施策を相次いで要請している。
 このため、今後もTOBやMBOが活発な状況が継続する可能性が高い。

※ 本調査は、自社開示、金融庁・東証などの公表資料に基づき、2025年内にTOB・MBOの実施を開示した企業を集計した。
(進行中、および今後開始の企業も含め、2026年1月15日までの開示を集計対象とした。)
※ 同一企業に複数のTOB・MBOが発表された企業は、上場廃止を前提とするTOB・MBOが開始予定、進行中、成立のいずれかの場合にカウントした。上場維持のTOB・MBOが成立した場合でも、当初上場廃止予定だったTOB・MBOが不成立となった場合は不成立にカウントした。
※ TOKYO PRO Marketだけの上場企業、不動産投資法人(REIT)は除外した。
※「親会社系」は発表前の保有割合が50.0%以上、「大株主」は発表前の保有割合が50.0%未満で、被買収企業による直近の開示で大株主名簿に記載がある企業を対象にした。ただし、ファンドは除外した。
※ 本調査は、今回が初めての実施。

2025年に発表の上場廃止を前提とするTOB・MBOは112社

 2025年に上場廃止を前提とするTOB・MBOの実施を発表した上場企業は112社で、内訳はTOBが80社、MBOが32社だった。
 TOB80社の買い手の内訳は、アクティビストを含む「ファンド」22社(構成比27.5%)、親会社や親会社が株式取得のため設立した会社などの「親会社系」18社(同22.5%)、「同業他社(大株主以外)」15社(同18.7%)、「大株主(ファンドを除く)」14社(同17.5%)、「その他」が11社(同13.7%)だった。




上場区分別 「プライム」が49社で最多

 上場区分別は、「プライム」が49社(構成比43.7%)で最多。次いで、「スタンダード」が47社(同41.9%)で続く。
 新興企業の多いグロース市場は、2024年1月以降に上場した企業に割り当てられるアルファベットを含む証券コードの企業も1社(レジル(株)、176A)あった。
 東証によるグロース市場の上場維持基準の変更は、上場を目的にした「上場ゴール」を防止したい狙いがあるとみられる。


発表したTOB・MBOが不成立に終わる事例も

 2025年に上場廃止を前提とするTOB・MBOを発表した112社のうち、5社は不成立に終わった。
 不成立の5社のうち、(株)ソフト99コーポレーションとウェーブロックホールディングス(株)の2社は、MBO発表後、既存株主やアクティビスト投資家からMBO価格の引き上げを求められたが、買付予定数の下限に応募株数が届かず不成立となった。その後、ソフト99コーポレーションはファンドが上場廃止を前提としない対抗TOBを実施し、TOBが成立した。
 MBOは、既存株主と買い手である経営陣の利害が一致せず、可能な限り安く買付けを実施したい経営陣の思惑を勘ぐられることもある。近年、株主要求で成立した事例も含め、発表後に価格変更するケースも目立つ。特に、当初発表の買付価格のPBRが1を下回るケースや、PBRが1を超える場合でもPBRが業種平均の価格水準を要求されるケースもある。
 TOBが不成立となった東京コスモス電機(株)は12月4日、TOBを巡る特別調査委員会の調査報告書を公表した。同社を巡っては6月10日、米国企業がTOB開始を発表していた。6月24日開催の株主総会では、会社側提案の取締役候補5名が全員否決され、アクティビスト株主が提案した取締役候補8名が全員選任される異例の事態で注目された。その後、新経営陣は旧経営陣が米国企業によるTOBを決定するに至った経緯の適切性に疑義が生じたとし、経緯を解明するための特別調査委員会を設置した。
 調査報告書では、米国企業によるTOB実現に向け、価格設定などを助言するFA(フィナンシャル・アドバイザー)に企業価値を低く算出するよう強く要請していたことが明らかになった。
 具体的には、中期経営計画の5年間の売上計画は不確実性が高く、期間がより短く保守的な3年間の計画を採用するよう要請していたという。加えて、米国企業との買収協議を重ねていた時期に、米国企業による買収の成立を優先するため別の買収提案の協議を意図的に遅らせた点も問題視された。
 本来、株主の利益を追求すべき上場企業の経営陣が、特定企業への買収成立を優先するため企業価値の低い算出を要求するなど、異例の展開が明らかになった。
 株主軽視のTOB、MBOは、計画の頓挫や価格面などで恣意的な要求を受ける可能性もある。このため、少数株主などを含めた幅広い株主の理解を得られる価格設定が重要になっている。
 東証も様々な改革を打ち出しているが、割安な株価を放置する企業はアクティビストの標的になりやすく、買収価格が争われるTOB、MBOが増える可能性もある。


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