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全国の中小民鉄 約9割が増収も減益企業が大幅増加 売上高・利益トップは遠州鉄道、鉄路存続危機の民鉄も

~2025年3月期「中小民鉄41社」業績動向調査~ 

 全国の主な中小民営鉄道(以下、民鉄)41社の2025年3月期の売上高合計は2,258億700万円(前期比7.4%増)で、前期比157億2,000万円の増収だった。当期純利益合計も155億8,200万円(同8.8%増)で、堅調に増収増益を持続していることがわかった。

 増収は36社(構成比87.8%)と9割近くに及び、運賃改定や本業の鉄軌道事業以外の売上増が押し上げた格好だ。利益面は、増益が22社(同53.6%)と半数を超えたが、減益が19社(前期12社)と前期から1.5倍に増え、鉄軌道事業単体では苦しい事情も見え隠れする。

 売上高トップは、遠州鉄道(株)(静岡県)の409億3,500万円(前期比7.3%増)。不動産事業や介護事業などのウェルネス事業が好調で、鉄道事業に頼らない多角経営の成功事例になっている。以下、広島電鉄(株)(広島県)218億2,800万円、静岡鉄道(株)(静岡県)193億3,500万円、アルピコ交通(株)(長野県)143億7,600万円など、100億円以上が7社あった。利益もトップは遠州鉄道で、27億2,100万円(前期比105.6%増)と2倍の伸びをみせた。

 民鉄は、コロナ禍を経て売上、利益ともに右肩上がりで回復している。今回の調査では、鉄軌道事業に頼らない経営で業績好調な民鉄がある一方で、多角化に取り組みながらも利用者減少や重い固定費に苦しむ民鉄の二極化が浮き彫りになった。
 鉄軌道事業は、軌条(レール)を始めとする線路設備や信号設備、駅構内の設備などの固定費負担が重く、中小規模では収益化が難しい構造的な問題がのしかかっている。人口減少が深刻化する地域を中心に、採算性を基準に考えた鉄路存続を巡る議論も活発化しているが、採算だけで測れない民鉄の存在意義がいま、危機的な状況に直面している。民鉄の使命の一つでもある地域の「足」をどう守り、継続するか。自治体や住民、利用者の対応が注目される。
 
※本調査の中小民鉄とは、新幹線、在来幹線、都市鉄道に該当する路線以外の鉄軌道路線を有する地域鉄道事業者のうち、第三セクター48社を除く50社が該当する。今回は、2021年3月期から2025年3月期までの決算を公表している41社を対象とした。
※鉄道事業(普通鉄道業、軌道業)だけではなく他事業を行っている場合は、それら他事業の売上・利益を含む。
※調査は今回が初めて。      


売上高・利益合計は増収増益

 民鉄41社の業績は、2021年3月期から4期連続で増収増益をたどっている。2025年3月期の売上合計は2,258億700万円(前期比7.4%増)、利益合計は155億8,200万円(同8.8%増)だった。

 インバウンド需要に加え、国内旅行が回復したほか、運賃改定や本業の鉄軌道事業以外の売上増も寄与したとみられる。利益は、2023年3月期まで赤字だったが、2024年3月期以降は黒字転換を果たした。利益率も2024年3月期6.8%、2025年3月期6.9%と安定して推移し全体では堅調な回復ぶりがみられる。 


中小民鉄の業績 年度推移

「増収減益」民鉄が2倍増

 民鉄41社の2025年3月期決算は、「増収増益」が19社(構成比46.3%)と最も多く、次いで「増収減益」(17社、構成比41.4%)、「減収増益」(3社、同7.3%)、「減収減益」(2社、同4.8%)の順。41社中、増収が36社(構成比87.8%)で、約9割を占めた。

 一方、減益は19社(構成比46.3%)で、前期の12社から1.5倍に増えた。特に、「増収減益」が9→17社と、約2倍に増えた。売上高・利益の合算数値では増収増益だったが、個別業績では利益の伸び悩みが露呈している。コスト増を増収分で吸収できず、一部の中小民鉄は利益を生み出しにくい状況に陥っており、二極化の進展もうかがえる。 


中小民鉄 対前年収益別

【売上高】トップは遠州鉄道、多角化で業績好調

 売上高トップは、遠州鉄道(株)で2025年3月期は売上高409億3,500万円(前期比7.3%増)だった。遠州鉄道は、新浜松駅から西鹿島駅を結ぶ西鹿島線を持つ。鉄道事業に依存しない多角的な経営で知られる。不動産事業や介護事業を含むウェルネス事業が前期に比べて好調だった。

 次いで、広島電鉄(株)の218億2,800万円(同6.3%増)。以下、静岡鉄道(株)193億3,500万円(同19.0%増)、アルピコ交通(株)143億7,600万円(同8.0%増)と続く。
 売上上位3位に静岡県の中小民鉄が2社入った。上位20社中、神戸電鉄(株)(同4.7%減)と能勢電鉄(株)(同3.5%減)を除く18社が増収だった。

売上ランキング(上位20位)

【利益】遠州鉄道がトップ、注目の富山地方鉄道は路線存続へ

 利益額もトップは遠州鉄道で、27億2,100万円(前期比105.6%増)と大幅増益だった。以下、静岡鉄道(株)18億5,300万円(同53.1%増)、(株)小田急箱根16億6,800万円(同18.1%減)と続く。利益トップ10には、富山地方鉄道(株)を除いて売上トップ10と同じ顔ぶれが並んだ。ただ、利益トップ20社のうち、減益は8社(構成比40.0%)に及び、利益の伸び悩みが浮き彫りとなった。

 売上高10位の富山地方鉄道の利益は1億5,700万円(同15.5%減)で、利益ランキングは20位に沈んだ。鉄軌道業に加え、バス事業や不動産事業など多角経営を行っているが、本業面での赤字が重しになっている。同社は赤字路線の存続を巡って注目を集めていたが、2025年12月、立山線と不二越・上滝線を独自のみなし上下分離方式で維持することが決定した。独自のみなし分離方式は、自治体側が鉄道施設のメンテナンス費を負担することに加え、公共サービスとして鉄路の維持を要請する。また、廃線の可能性があった本線(滑川-新魚津間)は、協議の結果、2026年度中の廃線は免れた。県と沿線の自治体が約4億円の支援を行うことで合意し、中長期的な経営改善や採算性の向上が今後の課題となっている。

キング(上位20位)



 鉄軌道事業は固定費の割合が大きく、収益化が難しい。そのため、鉄軌道事業に頼らない多角化経営が全体の業績を大きく左右する。売上高・利益とも民鉄トップの遠州鉄道は、巧みな多角化経営が持ち味になっている。

 一方で、他事業でカバーしきれないほど重い固定費に苦しむ民鉄は、固定費削減に躍起になっている。固定費は、線路や車両、駅設備などのメンテナンス費や人件費を中心に、利用者数に関わらず必ず発生する。都市圏への集中や人口減少により、運賃収入の増収が望めない地域では固定費削減に重点が置かれる。人員配置の調整のほか、外部に委託していた沿線の草刈り作業を社員で行うなど、安全を脅かさない範囲での企業努力が続いている。
 しかし、企業努力も限界を迎え、国や自治体の支援がなければ廃線の危機に陥る民鉄もでてきた。人口減少とのジレンマを抱えるなか、国や自治体の支援が半永久的に続くことは考えられず、地域鉄道の維持のあり方が問われている。
 民鉄は、民間企業としての利益追求と、公共交通機関としての社会的使命を求められているが、国や行政の支援のあり方も検証される時期を迎えている。地域の「足」を維持するため、営業努力や他社乗り入れ、観光資源との共存など、利害の壁を乗り越えた社会的インフラ維持への舵取りが急務になっている。

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