• TSRデータインサイト

「モームリ」代表が逮捕、変わる「退職代行」への視線

 2月3日、退職代行サービス「モームリ」を運営する(株)アルバトロス(TSRコード:694377686、横浜市)の代表らが弁護士法違反の疑いで警視庁に逮捕された。報道によると、報酬目的で退職代行に関する業務を弁護士に紹介した疑いがある。
 東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースには「退職代行」を事業目的に掲げる企業は少なくとも50社登録されているが、業界は大きな転機を迎えた。
 TSRはアルバトロスに取材を申し込んでいるが、3日17時現在、回答は得られていない。

 退職代行サービスは2016年頃に登場した。業界最大手といわれるアルバトロスは2022年2月の創業で、2025年1月期には売上高約3億3000万円をあげた。
 マスコミやSNSを通じて知名度を高めたほか、新宿や渋谷など若者が集まる街で、“モームリ”のアドトラックを活用した広告も展開した。

 退職代行の広がりを受け、TSRは2025年6月に「退職代行に関するアンケート調査」を企業向けに実施した。それによると、「退職代行」業者から連絡を受けた企業は7.2%あり、大企業では15.7%にのぼった。退職代行を利用した年代は、「20代」が60.8%、「30代」が26.9%で、ネットやSNSが身近なZ世代やミレニアル世代が中心だった。ただ、50代で6.4%、60代以上でも2.8%が利用し、幅広い年代に広がっていることが浮き彫りになった。
 TSRの企業データーベースでは、弁護士法人以外で営業品目に「退職代行」を掲げる企業は50社ある。50社すべてが設立10年以下で、最も古い業者でも設立は2016年だった。最多は2025年の27社で、半数以上を占めた。

 市場が広がっていた退職代行サービスだが、以前から非弁行為が含まれる危険性を指摘されていた。東京弁護士会は2024年11月、「退職代行サービスと弁護士法違反」と題した注意喚起を行い、「退職代行サービスの利用を考える際には、退職だけでなく、退職に関係して発生する法律的な問題にも目を向ける必要がある」と呼び掛けた。
 弁護士資格がなければ、企業に退職の意思を伝えることしかできない。残業代請求や有給休暇の取得などの交渉は法律事務のため、弁護士以外の人物が行った場合は弁護士法72条に抵触する恐れがある。退職代行サービスは、こうした法律上のグレーゾーンの中で事業を行ってきた。弁護士監修を謳う退職代行業者が多いのは、こうしたグレーゾーン対策であることは一目瞭然だ。
 また、退職代行業者は、法令を遵守すると、労働者に代わって企業に意思を伝える役割にとどまり、有給消化や残業代請求などの交渉はできない。退職代行サービスを使用することで、労働者自身が退職を願い出た場合より、不利益すら生じる可能性がある。
 今回の逮捕で、退職代行サービスへ向けられる企業や利用者、世間の目は厳しくなった。事件を契機に退職代行サービスを活用することによる、メリット・デメリットが周知されると、選別の波が業界を襲う可能性もある。


モームリの広告(2025年6月撮影)
モームリの広告(20256月撮影)

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

塗装工事業の倒産が急増、ナフサ供給の陰で ~ 1-4月の倒産、1989年以降で過去4番目 ~

塗装工事業の倒産は、2026年1-4月累計で48件(前年同期比26.3%増、前年同期38件)に達した。1989年以降、2002年の49件に次ぐ4番目の高水準だ。

2

  • TSRデータインサイト

居酒屋の倒産が過去最多ペース、1-4月は5割増 ~ 宴会・飲み放題の価格上昇、客離れ誘発も ~

2026年1-4月の「居酒屋」倒産は88件(前年同期比54.3%増)と急増した。1989年以降、同期間の倒産は2024年の59件を大きく上回り、最多を更新した。東京商工リサーチの企業データベースから1-4月の「居酒屋」倒産(負債1千万円以上)を抽出し、分析した。

3

  • TSRデータインサイト

2026年4月の「税金滞納」倒産40件 中堅以上の企業で増加、破産が9割超

2026年4月の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、40件(前年同月比100.0%増)で、1-4月の累計は70件(前年同期比12.9%増)となった。コロナ禍で、納税猶予などの措置があった2021年1-4月の8件の8.7倍と大幅に増加した。

4

  • TSRデータインサイト

あいちFGと三十三FGが統合に向け基本合意 メインバンク取引企業数が国内16位の金融Gに

金融グループの統合が加速してきた。あいちFG(あいち銀行、1万1,302社)と三十三FG(三十三銀行、7,544社)が経営統合に基本合意したと発表した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年4月「人手不足」倒産 33件発生 春闘の季節で唯一、「人件費高騰」が増加

2026年4月の「人手不足」倒産は33件(前年同月比8.3%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。 4月の減少は2022年以来、4年ぶり。

TOPへ