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上場企業も暗号資産で一攫千金?投資事業への参入相次ぐ

 ビットコインなど暗号資産への投資を表明する上場会社が相次いでいる。
 2025年にプレスリリースなどで暗号資産の投資事業の開始や、暗号資産の購入を表明した上場企業は40社にのぼった。サービス業や製造業、小売業など、本業とは一見関わりがない業種からの参入が目立つ。老舗企業が参入したケースもある。
 40社の直近決算は赤字(連結、最終損益)が75.0%に達し、4社に3社が赤字だった。価格上昇に乗り、暗号資産への投資を新たな収益源にしたい思惑も透けて見えるが、暗号資産は値動きが激しい。諸刃の剣の暗号資産が不振脱却の救世主となるか注目される。

1ビットコインあたりの価格推移


老舗の和装卸、社名に「ビットコイン」

 2年前の2024年1月、600万円前後で推移していたビットコイン(円換算、1BTCあたり)は、乱高下を繰り返しながら高騰し、2025年10月には一時1,800万円超の値を付けた。
 価格上昇の波に乗れば、短期間で株式以上の高い売買差益を獲得できるのが暗号資産投資の魅力だ。
 幕末の1861年。呉服商として創業した和装品販売の老舗、堀田丸正(株)(TSRコード:291028470、東証スタンダード)は2025年11月に社名をBitcoin Japan(株)に変更した。同年8月、それまでの親会社だったRIZAPグループ(株)(TSRコード:295695790、札証アンビシャス)が堀田丸正の株式を米国企業に譲渡し、資本提携を解消した。
 これを機に堀田丸正は経営陣が一新し、社名を変更。同時に、従来の事業に加えてAI関連分野とビットコイン投資を打ち出した。
 堀田丸正時代、2025年3月期まで7期連続で連結営業・経常損失を計上、「継続企業の前提に関する重要事象」を記載し、不振続きだった。打開策を模索するなか、暗号資産の売買、管理などを手掛ける米国企業が実質的な親会社となったことが契機になったようだ。

赤字、GC注記・重要事象の記載目立つ

 業態転換に踏み切ったBitcoin Japanを始め、2025年は暗号資産投資事業への参入表明が相次いだ。
 40社の業種別内訳では情報通信業が16社(構成比40.0%)で最も多かった。次いで、サービス業の7社、製造業の6社、小売業の5社など満遍なく、多岐にわたる。
 新興のカタカナ企業や横文字企業が多いが、繊維・アパレル関連では旧:堀田丸正のほかにも紡績業の(株)北紡(TSRコード: 580006476、旧商号:北日本紡績(株)、東証スタンダード)、靴卸の東邦レマック(株)(TSRコード: 291109438、東証スタンダード)、カジュアルウェア販売の(株)ANAPホールディングス(TSRコード: 293892377、東証スタンダード)など、一定の業歴を持つ老舗銘柄もある。
 また、衛生陶器メーカー、アサヒ衛陶(株)(TSRコード:698337638、大阪市)を傘下に持つASAHI EITOホールディングス(株)(TSRコード: 570002575、東証スタンダード)も、専門業者との業務提携を通じた暗号資産の取得運用事業を表明した。
 こうした40社の多くに共通するのは、中堅~小規模、かつ近年は業績が芳しくない点だ。
 売上高(直近の連結本決算)のボリュームゾーンは、年間売上高「10億円以上50億円未満」が21社と半数を占める。「10億円未満」も7社あり、「100億円以上」は5社にとどまる。
 企業規模は中堅・中小クラスでも、れっきとした上場企業だ。市場別では、東証プライムは2社だけで、東証スタンダードが24社と6割を占め、新興企業が多い東証グロースも14社ある。
 40社のうち、30社の直近決算が赤字に終わっている。また、半数以上の25社の決算には、経営不振を示す「継続企業の前提に関する疑義(GC注記)」や「重要事象」を記載している。

売上高別(連結決算)



 株価や暗号資産の価格が、瞬間的に暴落する現象を「フラッシュクラッシュ」と呼ぶ。暗号資産はこのフラッシュクラッシュが頻繁に発生し、株式市場のような「ストップ安」もない。過去には数分間で価格が9割下落したこともある。
 大きい価格変動リスクを背負いこむため、「(暗号資産投資事業への参入が)信用上昇に繋がることはない」と、企業の審査担当者は話す。また、2025年には一部マスコミが、「東証が暗号資産トレジャリー企業の規制強化を検討している」と報道して話題となった。同日、東証は「現時点で具体的に決まっている方針はない」と報道を否定したが、それだけ上場企業の暗号資産投資が注目されている証拠ともいえる。
 株式や金投資、FX取引などと同様、ますます手軽になる暗号資産投資だが、高い見返りには大きなリスクがつきもの。とはいえ、暗号資産価格の上昇次第では、2026年もこのブームが続く可能性もある。
 上場企業は投資家への説明責任が伴う。果たして、暗号資産への投資の透明性や安全性の確保をどのように説明できるのか。上場企業の暗号資産投資は、これまで以上に議論を呼ぶことになりそうだ。

暗号資産への投資を表明した上場企業(一部抜粋)


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年1月21日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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