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2015年「チャイナリスク」関連倒産調査

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公開日付:2016.01.13

 2015年の「チャイナリスク」関連倒産は76件だった。前年(2014年)の46件から1.6倍増となった。負債総額は2,346億2,800万円で、4月に江守グループホールディングス(株)(TSR企業コード:600000702、福井県、民事再生、売掛金等回収難)が711億円、9月に第一中央汽船(株)(TSR企業コード:291084648、東京都、民事再生、中国景気減速)が1,196億700万円の負債を抱えて倒産した影響により、前年の203億200万円から11.5倍と大幅に膨らんだ。
 12月の倒産件数は8件で前年同月の1件から8倍となった。負債総額も80億8,400万円(前年同月3億8,000万円)へ拡大した。
 また、倒産に集計されないが事業停止や破産準備中など「実質破綻」した企業は、2015年(1-12月)に9件(前年1件)発生した。倒産と「実質破綻」を合計したチャイナリスク関連破綻は85件に達し、前年の47件から大幅に増加(前年比80.8%増)した。


  • 「チャイナリスク」関連の集計基準
    「チャイナリスク」関連の経営破綻は、破綻の原因が次の6項目のどれかに該当するものを集計している。
    1. コスト高(人件費、製造コストの上昇、為替変動など)
    2. 品質問題(不良品、歩留まりが悪い、模倣品、中国生産に対する不信など)
    3. 労使問題(ストライキ、工場閉鎖、設備毀損・破棄など)
    4. 売掛金回収難(サイト延長含む)
    5. 中国景気減速(株価低迷、中国国内の消費鈍化、インバウンドの落ち込みなど)
    6. 反日問題(不買、取引の縮小、暴動など)
    ※ 「チャイナリスク]関連の経営破綻は、下記の「倒産の定義」のいずれかに該当するケースを「倒産」として集計。「事業停止」や「破産申請の準備中」などは、倒産とは区別し「実質破綻」としている。
  • 倒産の定義(対象:負債額1,000万円以上の法人および個人企業)
    A. 会社更生法、民事再生法、破産、特別清算を裁判所に申請した企業(法的倒産)
    B. 手形決済などで6カ月間に2回の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けた企業(私的倒産)
    C. 企業が経営破綻により事業継続を断念したが、法的手続きを採らず弁護士などに事後を一任して私的整理(内整理)を明らかにした企業(私的倒産)
    ※「チャイナリスク」関連倒産の集計開始は2014年1月。

チャイナリスク関連倒産月次推移

要因別 「コスト高」が最多、「中国景気減速」は前年比2.5倍増

 倒産要因の最多は、中国国内の人件費高騰に伴う製造単価の上昇や為替変動による輸入費用増大などの「コスト高」で55件(構成比72.3%)発生した。次いで、不良品の発生や中国生産品に対する不信による受注悪化などの「品質問題」が10件(同13.1%)だった。
 日中関係の悪化による不買や現地従業員ストライキなどの「反日問題」は、前年7件発生したが2015年の発生はなかった。「中国景気減速」に伴う受注不振による倒産は、前年の2件から5件と2.5倍に増加した。

事例

コスト高

 (株)T&T(TSR企業コード:576139750、大阪府、婦人服卸)
 婦人服の卸売業者。2012年4月期は約23億円の売上高を計上したが、規模拡大に伴う在庫負担の増加から資金繰りが悪化していたところに、製品の大半を中国輸入に頼っていたため、中国での人件費高騰や急速な円安で利益水準が悪化。同業者との競争も激しくなり、2015年4月期の売上高は10億円弱にまで低下。資金繰りに行き詰まり、2015年12月に大阪地裁へ破産を申請した。負債総額は約7億円。

品質問題

 エルイーエル(株)(TSR企業コード:292926464、練馬区、特殊照明機器開発・販売)
 特殊照明機器で多くの特許を持ち、技術力や製造ノウハウへの評価は高くテレビ局などに実績を築いていた。中国の協力会社に製造を外注し、2003年5月期は2億1,500万円を売上げていた。しかし、放送業界の設備投資が一巡し受注が伸び悩んでいたところに、2014年5月期は中国の外注工場に発注した製品トラブルで納期遅延が発生。こうしたことが要因となり資金繰りに余裕を欠き、2015年7月に再度の資金ショートを起こした。負債総額は1億500万円。

売掛金回収難

 江守グループホールディングス(株)(TSR企業コード:600000702、福井市、持株会社)
 2014年4月に江守グループホールディングス(株)へ改称し持株会社へ移行。グループの戦略的機能を担い傘下に国内外24社(うち中国5社)の事業会社を持っていた。中国向けは順調に売上を伸ばしたが、中国の金融引き締めなどの影響から売掛金回収難が発生。大幅な債務超過に陥り、2015年4月に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。負債総額は711億円。

中国景気減速

 (株)マルヒロ(TSR企業コード:882105205、北九州市、鉄・非鉄金属などの加工処理)
 スクラップ相場や景気動向に左右され、2012年9月期の売上高はピーク時から半減し9億円を割り込んでいた。一部エンドユーザーが中国にあったが、中国の景気減速の影響を受けて輸出向けスクラップ販売が急減。先行きの見通しも立たずに2015年9月に事業を停止し、破産準備に入った(実質破綻)。負債総額は約3億円が見込まれる。

第一中央汽船(株)(TSR企業コード:291084648、中央区、海運業)
 リーマン・ショック以降、海運市況の悪化で船腹過剰に陥り需給不均衡から業績が悪化。原油価格の高騰もあり2009年3月期以降、2011年3月期を除き赤字決算が続いていた。さらに中国の景気減速に伴うばら積み貨物の需要減少で運賃と傭船料の逆ザヤが拡大し、2015年9月に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。負債総額は1,196億700万円。

産業・業種別、卸売業が前年比3.2倍

 産業別では、卸売業が45件(前年14件)と前年より3.2倍増となった。次いで、製造業22件(同24件)、小売業5件(同ゼロ)と続く。一方で、農・林・漁・鉱業、建設業、金融・保険業、不動産業、情報通信業は2年連続で発生がなく、これら産業は比較的チャイナリスクの影響を受けにくいようだ。
 業種別では、「繊維・衣服等卸売業」が23件、「なめし革・同製品・毛皮製造業」が4件、「繊維工業」3件、「織物・衣服・身の回り品小売業」が2件だった。これらアパレル関連は合計32件で、全体の4割(42.1%)を超えた。チャイナリスクは、人件費など安価な製造コストを見込んで中国に進出したり、製品を輸入しているアパレル関連業種を中心に、機械、食品業界を直撃した格好となった。

チャイナリスク業種分類別倒産状況

地区別、近畿が大幅に増加

 地区別で最も多かったのは、関東の31件(前年比34.7%増)。次いで、中部の16件(同33.3%増)、近畿の14件(同600.0%増)、中国の5件(同150.0%増)の順となった。
 近畿は、前年2件の発生にとどまっていたが、2015年は7倍の水準へ急増した。大阪府は繊維問屋などアパレル関連業種が多く、大阪府内のアパレル関連6社がチャイナリスクの「コスト高」で倒産した。いずれも経営規模が比較的小さいことが共通しており、経営努力だけでコストアップを吸収することが難しかった。
 今後の中国経済の動向次第だが、チャイナリスクはこれらの業種以外にも幅広く影響を及ぼすことが懸念されるだけに、政府や関係省庁の支援が必要になる可能性もある。

負債総額別、10億円以上の大型倒産が前年比3.2倍

 負債総額1億円以上5億円未満が33件(構成比43.4%)で最多。10億円以上の大型倒産が16件(同21.0%)、1千万円以上5千万円未満が10件(同13.1%)、5千万円以上1億円未満が9件(同11.8%)と続いた。

従業員別、20人以上の倒産が3.5倍

 従業員4人未満が32件(構成比42.1%)で最も多く。次いで、5人以上10人未満が17件(同22.3%)、10人以上20人未満が13件(同17.1%)だった。20人以上のレンジは、2014年が4件の発生にとどまったのに対して、2015年は3.5倍の14件発生した。

まとめ:2016年は前年以上に倒産が発生する恐れ

 2015年のチャイナリスク関連倒産は76件だった。アパレル関連が最も多く、地区では近畿が大幅に増加していることがわかった。東証1部に上場していた江守グループホールディングス(株)や第一中央汽船(株)の経営破綻に象徴されるように、負債総額の大型化が顕著でチャイナリスクは小規模から中堅規模以上の企業へ影響が波及している。
 2016年の中国経済は、上海株式市場(上海総合指数)の大幅な下落で幕を開けた。証券当局は、上場企業の大株主に持株売却の禁止措置の継続を打ち出し、中国株の流動性リスクが顕在化している。また、2015年12月の米連邦準備理事会(FRB)の利上げに伴う人民元安の為替環境に対応するために、中国人民銀行は元買い介入を行っているとされる。元買い介入は、中国国内に流通する資金量を増やしにくく、量的緩和による景気刺激策を取りづらい状況にある。
 これまでチャイナリスク関連倒産は、中国製品の調達価格が人件費の高騰や為替変動により上昇する「コスト高」を要因としたものが多かった。しかし、中国の景気減速を懸念する動きに歯止めがかからないことから、今後は対中輸出で業績を維持している製造業の受注悪化、さらには中国国内の過剰在庫が安い価格で国内に流入する事態も想定することが必要かもしれない。また、訪日外国人による「爆買い」などのインバウンド需要で支えられている観光業や小売業への影響も注視すべきだろう。中国人観光客の訪日数の伸びが鈍化や減少に転じた場合、流通業への影響も無視できなくなる。
 日本企業は、中国市場を「世界の工場」と「世界有数の消費地」の両面で捉え、進出戦略を練ってきた。製造面では人件費の高騰や為替変動が収益を直撃し、消費面では中国の景気減速が影響し始めている。こうしたことから、2016年のチャイナリスク関連倒産は、前年以上のペースで発生する可能性が高まっている。

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