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2025年の株主優待「導入」上場企業は175社 個人株主の取り込みが課題、優待廃止は68社に

~ 2025年全上場企業「株主優待」導入・廃止動向調査 ~


 2025年に株主優待の導入(再導入を含む)を発表した上場企業は175社だった。一方で、廃止を発表した上場企業は68社だったことがわかった。
  2022年4月に東証の市場区分が見直され、上場企業は株主優待が世界の投資家の呼び込みに障壁になると判断し、廃止に動いた。なかには、日本たばこ産業(株)(プライム)、オリックス(株)(プライム)など優待が魅力的とされていた企業でも廃止され、多くの個人投資家に衝撃が走った。
 2025年に株主優待を廃止した企業は、株式公開買付け(TOB)、経営陣による買収(MBO)などによる上場廃止が38社を数え、優待廃止全体の55.8%を占めた。上場継続の企業に限ると、優待導入が175社、優待廃止が30社で、導入企業は廃止より約6倍多かった。
 
 東京証券取引所(以下、東証)は2023年3月、プライム市場などの上場企業約3,300社を対象に、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請した。東証は取り組み状況を一覧表で公表し、働きかけを継続している。
 近年はPBR(株価純資産倍率)が1を下回る企業に対し、アクティビスト投資家が一定割合の株式を保有し、企業価値向上に向けて影響力を発揮するケースも目立つ。こうしたなか、アクティビストなどの標的になる前に個人投資家を呼び込む手段の1つとして、株主優待を導入する企業も多い。また、資本効率向上のため株式の持ち合い解消を進める企業も多く、持ち合い先に代わる安定株主として個人投資家をターゲットに、株主優待を導入する企業もある。
 東証は引き続き、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の変更、グロース市場の上場維持基準の見直しなど、上場各社に企業価値向上への取り組みを促している。この動きを背景に、個人投資家の呼び込みに株主優待を導入する企業は、しばらく増える可能性が高い。

※ 本調査は、自社開示、金融庁・東証などの公表資料に基づき、2025年内に株主優待の導入・廃止を開示した企業を集計した。
※ TOKYO PRO Marketだけの上場企業、不動産投資法人(REIT)は除外した。
※ 本調査は、今回が初めての実施。過去のデータも今回の調査の一環で収集した。発表時点で上場している企業が対象。


上場する機関投資家で株主優待導入の動きも

 機関投資家でも株主優待導入の動きがある。グループ会社で投資運用や投資助言・代理を手掛けるスパークス・グループ(株)(プライム)は、2025年に株主優待(プレミアム優待俱楽部)の導入を発表した。同社は「対話型アクティビスト」として、企業と協働して価値を向上させるため割安と判断した中小型株に投資している。
 同社担当者は、東京商工リサーチの取材に「株主優待の導入で流動性が高まり、株価上昇が期待できる。株主優待を好意的に捉える機関投資家は増えていると感じる」とコメントした。

株主優待新規導入(再導入含む)発表社数、廃止発表社数の推移

優待内容は5種類に分類

 株主優待を5種類に大別した。電子マネーのチャージなどが可能なデジタルギフト、QUOカードなど、現金などの代わりに決済で使用できる「商品券類」、自社商品・サービスの提供や、購入に使用できる割引券などの「自社商品・サービスなど」、株主優待専用サービスで、付与されるポイントからカタログギフトのように好きな商品を選べる「プレミアム優待俱楽部」、特定金額分の暗号資産を提供する「暗号資産」、および「その他」とした。
 なお、1社で複数種類の優待を導入した場合は、株数や保有期間の観点から優待獲得条件がより容易な種類に分類した。 

導入企業数 優待内容別 「商品券類」が90社で最多

 種類別では、最多は「商品券類」の90社(構成比51.4%)で半数を超えた。「商品券類」では、これまでQUOカードが目立ったが、最近は電子マネーやスマホ決済へのチャージなどに使用できるデジタルギフトの企業も目立つ。投資家に選ばれる利便性を優先する企業が増えているとみられる。
 また、新しい優待では「暗号資産」も9社あった。暗号資産取引所を運営する企業や、暗号資産をポートフォリオに組み込む会社での導入が目立つ。
 「その他」では、自社がスポンサードするチームの観戦チケット、事業所所在地の特産品の提供などがあった。事業所所在地の特産品を取り入れた企業は、地方銀行に多いのが特徴だ。

導入企業数 優待内容別(2025年)

導入企業数 市場別 「スタンダード」「グロース」が多い

 市場別では、「スタンダード」「グロース」が各63社(構成比各36.0%)で最多。次いで「プライム」が46社(同26.2%)だった。グロース、スタンダードの各市場では半数以上が「商品券類」だった。 
 可能な限り事務コストを抑え、かつ個人投資家を集めて時価総額の底上げや株主数の増加などで上場基準の維持を目指す意図が垣間見える。
 一方、グロース市場は商品券類に次いで「自社商品・サービスなど」が多く、63社中21社(構成比33.3%)だった。新興企業が多いグロース市場では、上場企業でも知名度が低い企業が多い。そのため、企業にとってコアとなる商品やサービスを株主優待に取り込み、自社の社名や商材を投資家にアピールしたい意図がうかがえる。

導入企業数 市場別

導入企業数 業種別 「サービス業」「情報通信業」「製造業」が多い

 業種別では、「サービス業」が50社(構成比28.5%)で最多。次いで「情報通信業」が45社(同25.7%)、「製造業」が34社(同19.4%)だった。業種別の優待の種類における傾向は、無形商材を扱う企業が多い「サービス業」「情報通信業」では「商品券類」とする企業が目立った。消費者向け事業を展開する企業では、自社サービスの割引券といった「自社商品・サービスなど」とする企業もあった。
 一方、有形商材を扱う「製造業」は「自社商品・サービスなど」の導入社数が小売業に次ぐ多さだった。製造業のなかでも、金属製品や電気機器など、サプライチェーンの川上側の企業では「商品券類」とする企業が目立った。

導入企業数 業種別

優待の導入や廃止をめぐってガバナンス上の問題に発展するケースも

 株主優待の導入や廃止が活発ななか、導入や廃止をめぐってガバナンス上の問題になるケースも出てきている。(株)REVOLUTION(スタンダード)は2024年10月、優待としては高額なQUOカードPayの導入を発表していたが、初回の権利確定日から4カ月以上経過した後に実施することなく優待廃止を発表した。本件をめぐっては第三者委員会が設立され、会社側の想定外の事柄の発生により実施が不可能になったとし、投資家を騙す意図はなかったと認定されたが、利益剰余金がマイナスにもかかわらず配当に近い性質の優待の実施を発表したことの法的リスクや、法的リスクの議論が優待内容の決定にあたり社内で不十分だったことが報告書で指摘された。
 くら寿司(株)(プライム)では優待廃止の発表以降株価が下落を続けるなか、同社取締役副社長が自身の資産管理会社へくら寿司株を譲渡、その後約3カ月後に「株主の要望」として優待の再導入を発表したことで物議をかもした。
 上場企業は、株主優待のみならず、投資家に疑念を抱かせる可能性がある施策は控え、株主を含むステークホルダーに寄り添い、中長期目線での企業価値向上に資する施策を実施すべきだ。


単なる個人投資家への贈呈品にとどまらない株主優待

 株主優待は、導入する企業にとって単なる個人投資家への贈呈品にとどまるものではない。「プレミアム優待俱楽部」の導入を2025年に発表したある企業は東京商工リサーチの取材に対し「プレミアム優待俱楽部への会員登録を通じて得られる株主データベースを活用し、株主層を分析して対話の充実を図ることができる」と導入理由を語った。このように、よりIR活動を充実させるための手段として期待されるケースもある。
 また、地方銀行を中心に地域の特産品を優待とすることで、地域の活性化に貢献できる側面もある。2025年に優待の導入を発表した企業では、地方銀行のほか北海道を本社とする企業、和歌山県や高知県に工場を構える企業などで見られた。
 東証による資本市場の改革も進められるなか、株主優待に関するシステムやサービスを手がける企業など、IRに関するサービスを提供する企業も自社サービスに磨きをかけている。「株主平等の原則」などに関する議論は残るものの、個人投資家の獲得の1つの手段として、また投資家層を分析してより質の高いIR活動を行うための手段として、今後も存在感が高まっていくだろう。

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