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介護事業の倒産 最多から一転、支援策や報酬改定の効果で3割減 【2021年 老人福祉・介護事業の倒産状況】

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公開日付:2022.01.14

 2021年(1-12月)の「老人福祉・介護事業」倒産は81件で、過去最多だった2020年(118件)に比べ31.3%減と大幅に減少した。前年を下回ったのは、3年ぶり。
 新型コロナ感染拡大の影響が長引き、2021年の「新型コロナ」に起因した関連倒産は11件(前年7件)と約6割(57.1%増)増加した。だが、コロナ関連の資金繰り支援策に加え、介護報酬のプラス改定なども下支えし倒産は抑制された。
 また、大手事業者との競合で倒産が増勢をたどっていたデイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」は17件(前年比55.2%減)と半減した。訪問介護事業は47件(同16.0%減)と減少したが、ヘルパー不足や利用控えなどから他業態に比べて減少率は小さかった。
 倒産は減少したが、小規模事業者の動向には注意が必要だ。「老人福祉・介護事業」の倒産のうち、負債1億円未満は70件(構成比86.4%)、従業員10名未満も73件(構成比90.1%)と、小・零細事業者はそれぞれ9割を超えた。構成比も負債1億円未満が前年比6.8ポイント、従業員10名未満が4.6ポイント、それぞれ上昇した。資金面に余裕のない小規模事業者は、競合や人手不足に伴うコストアップを吸収できず、経営悪化に歯止めがかからないまま新型コロナが追い打ちをかけている。
 2021年に介護報酬が0.7%増に改定され、課題の介護職員の賃上げなど処遇改善も進んできた。だが、2021年11月の全国有効求人倍率(季節調整値)は1.15倍に対し、介護サービスは3.70倍と依然として人手不足を解消できず、経済活動が再開すると人材流出の恐れも出ている。
 オミクロン株の感染が広がると、濃厚接触などで介護職員が不足する事態も懸念される。コロナ支援策の息切れも散見され、2022年は再び倒産増へ転じる可能性も高まっている。

  • 本調査対象の「老人福祉・介護事業」は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む。

倒産件数は2020年の最多から一転、大幅減

 2021年「老人福祉・介護事業」倒産は81件(前年比31.3%減)で、過去最多だった2020年の118件から大幅に減少。年間100件を下回るのは、2015年の76件以来、6年ぶり。
 負債総額は128億8,100万円(同8.0%減)と2年連続で減少した。前年ゼロだった負債50億円以上の大型倒産が発生したが、負債1億円未満が70件と約9割(構成比86.4%)を占め、小・零細事業者の比率が高まり、負債も抑えられた。

新型コロナウイルス関連倒産は11件と急増

 2021年の「老人福祉・介護事業」で、新型コロナ関連倒産は11件判明。介護事業者全体の倒産はコロナ関連の資金繰り支援効果などで抑制されているが、コロナ禍による利用控えや感染防止による収入減、これまでの人手不足、競争激化などが続き、支援効果も薄れ始めた。

老人福祉・介護

業種別、デイサービスやショートステイの「通所・短期入所介護事業」が急減

 業種別では、「訪問介護事業」が47件(前年比16.0%減、構成比58.0%)と減少した。ヘルパーの人手不足や高齢化など課題も多く、介護事業者の倒産の約6割を占めた。コロナ関連倒産は3件だ(前年1件)だった。
 次いで、デイサービスやショートステイの「通所・短期入所介護事業」は17件(同55.2%減、同20.9%)と急減した。一部地域では、大手企業の進出で過当競争が続いているが、感染を恐れた利用控えが徐々に解消し、各種支援策も奏功した。コロナ関連倒産は、3件(前年6件)。
 有料老人ホームは4件(前年比60.0%減、構成比4.9%)で、コロナ関連倒産が2件(前年ゼロ)。特別養護老人ホームや認知症グループホームなどを含む「その他」は13件(前年比7.1%減、構成比16.0%)で、コロナ関連倒産が3件(同ゼロ)とコロナの影響が広がっている。

老人福祉・介護

原因別、放漫経営が急減

 原因別では、最多が「販売不振」(売上不振)の54件(前年比26.0%減、構成比66.6%)で、全体の約7割を占めた。次いで、「事業上の失敗」(同55.5%減、同9.8%)と赤字累積の「既往のシワ寄せ」(前年同数、同9.8%)が各8件、過小資本の「運転資金の欠乏」2件(前年比81.8%減、同2.4%)と続く。コロナ関連の資金繰り支援効果で、「販売不振」「運転資金の欠乏」だけでなく、放漫経営型の「事業上の失敗」も大幅に減少。ただ、「既往のシワ寄せ」は前年と同数で、赤字が継続し、改善の見通しが立たず、息切れする事業者も目立ち始めた。

形態別、破産が9割超

 形態別では、破産が78件(前年比29.0%減、構成比96.2%)と全体の9割を占め、残りは民事再生法の3件(同50.0%増、同3.7%)にとどまり、依然として再生型を選択する事業者は少ない。

地区別、関東地区が最多の24件

 地区別では、最多は関東の24件(前年比33.3%減、構成比29.6%)。次いで、近畿23件(同20.6%減、同28.3%)、九州11件(同8.3%減、同13.5%)、中部8件(同55.5%減、同9.8%)、東北(同33.3%減、同4.9%)と四国(前年同数、同4.9%)が各4件、北海道(前年比40.0%減、同3.7%)と中国(同57.1%減、同3.7%)が各3件、北陸1件(前年同数、同1.2%)の順。

負債額別ほか、負債1億円未満が約9割

 負債額別では、最多は1千万円以上5千万円未満の56件(前年比30.0%減、構成比69.1%)。次いで、5千万円以上1億円未満14件(前年同数、同17.2%)、1億円以上5億円未満6件(前年比70.0%減、同7.4%)、5億円以上10億円未満が3件(同200.0%増、同3.7%)、10億円以上が2件(同33.3%減、同2.4%)。
 従業員数別では、5人未満が57件(前年比27.8%減、構成比70.3%)、5人以上10人未満16件(同27.2%減、同19.7%)と続く。


 2020年まで5年連続して「老人福祉・介護事業」の倒産が100件を上回っていた。2020年はこれまでの競争激化や人手不足に加え、コロナの影響が重なり、過去最多を更新していた。2021年も倒産増が懸念されていたが、介護報酬のプラス改定やコロナ関連の資金繰り支援策、利用控えの解消、感染防止対策の浸透などで倒産件数は大幅に減少した。
 課題の人手不足も、コロナ禍で他の産業から流入したほか、介護職員の処遇改善も徐々に進んでいることは明るい材料だ。しかし、長引くコロナ禍で外国人実習生や留学生などの人材が減少しているほか、飲食業や建設業などへの人材流出の可能性もある。また、ヘルパーなどで濃厚接触者が増えれば介護サービスの低下の恐れもあり、介護人材の確保は予断を許さない状況が続く。
 高齢化社会に向け、さらなる人材確保と生産性の向上が必要だ。ただ、小規模事業者が多い業界なだけに自力での課題克服は限界があり、きめ細かな支援が求められている。経営体力が低下し、支援で支えられている事業者も多い。今後の改定や、これまでのコロナ関連の支援が縮小されれば、経営意欲が低下し、廃業や倒産などが急増する恐れがある。

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