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第11回 地ビールメーカー動向調査

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公開日付:2020.10.06

 全国の主要地ビールメーカー70社の2020年1-8月の総出荷量は6,666.2kℓ(前年同期比25.1%減)だった。調査を開始した2010年以降、1-8月の出荷量が前年同期を割り込むのは初めて。
 2019年1-8月は出荷量が前年同期比4.0%の増加だったが、2020年は2月から新型コロナウイルス感染拡大に見舞われ、地ビールメーカー各社の出荷量が大きく落ち込んだ。
 一方、ビール大手4社の2020年1月~6月のビール系(ビール、発泡酒、新ジャンル)飲料の販売数量は、新型コロナ感染拡大で飲食店の休業や営業時間短縮が影響し、前年同期比10%減となった模様だ。8月は10月からの増税前の駆け込み需要で新ジャンル系の「第3のビール」が盛り返したが、反動減も懸念されている。ビール大手各社は消費者の嗜好の多様化やビール系飲料の小売価格の上昇などで厳しい状況が続いている。
 ビール大手各社が苦戦する中、2019年まで地ビールメーカーはイベント等での販売を軸に、スーパーやコンビニに加え、ビアパブの新規開拓など地道な営業展開で出荷量を伸ばしてきた。だが、2月からの新型コロナ感染拡大で様相は一変した。全国主要地ビールメーカー70社の総出荷量(2020年1-8月)は、前年同期を大きく下回り、まだ回復の道筋は見えてこない。
 地ビール、クラフトビールブームは根強く続いているが、地ビールメーカー各社は生き残りをかけて、コロナ禍の環境への適用を求められている。

  • 本調査は、2020年9月1日~25日に全国の主な地ビールメーカー217社を対象にアンケート調査を実施、分析した。出荷量は2020年1-8月の出荷量が判明した70社(有効回答率32.3%)を有効回答とした。その他の項目は、回答が得られた72社(有効回答率33.1%)を有効回答とした。本調査は2010年9月に開始し、今回で11回目。

2020年1-8月の主要70社の総出荷量 前年同期比25.1%減

 出荷量が判明した70社の2020年1-8月の総出荷量は、6,666.2kℓ(前年同期比25.1%減)だった。2020年2月の出荷量は853㎘(前年同月比7.4%増)と順調なスタートを切ったが、3月以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、3月(同30.4%減)、4月(同51.0%減)と出荷量が減少。全国的に緊急事態宣言の影響を受けた5月(同58.0%減)は過去最大の下げ幅を記録した。
 出荷増加が期待された8月(同14.0%減)も感染者数が増加をたどったことから、外出自粛や飲食店の営業時短などの煽りで、前年を割り込んだ。この結果、3月以降、一度も前年を上回る月はなかった。

地ビール1

出荷量 増加は2社にとどまる

 2020年1月-8月の出荷量が判明した70社のうち、「増加」は2社(構成比2.9%)にとどまった。「減少」は68社(同97.1%)と大半を占めた。
 出荷量減少の要因は、「飲食店、レストラン向けが不調」が21社(構成比30.4%)と最も多かった。「観光需要の喪失」は19社(同27.5%)、「イベントの開催中止、延期」は13社(同18.8%)だった。「その他」では、「ふるさと納税返礼品の対象から外れた」や「輸出がストップしたため」など。

地ビール2

地区別出荷量 減少率ワーストは北陸

 70社の実質本社を地区で分けると、出荷量は9地区中、すべてで減少した。出荷量の最多は、関東の3,776.6kℓ(前年同期比25.9%減)だった。
 減少率ワーストは、北陸の47.3%減(64.6kℓ減)。出荷規模の小さいメーカーが多く、全体の出荷量も減少した。
 地ビール、クラフトビールのブームは全国に広がり、大消費地に近い関東のメーカーが出荷量が多い。一方、販路基盤が弱く固定客が少なく、変動する観光客などに依存した地域では、コロナ禍の影響が大きかった。

地ビール3

インターネット販売に活路

 売上比率の一番大きい販売先(有効回答72社)は、最多は「自社販売(イベント販売含む)」が23社(構成比31.9%)だった。
 2020年の商流に変化について(有効回答64社)、最多は「インターネット通販の売上が伸びた」の19社(構成比29.7%)。次いで、「インターネット通販の販路を拡大した」の13社(同20.3%)と5割がインターネットでの販売に力を入れていた。「飲食店、レストラン向けの販路を縮小した」は13社(同20.3%)で、コロナ禍の影響に苦慮している様子が窺える。

地ビール4

今後の事業展開 地元中心に東京進出も視野、独自の味を追求

 今後の事業展開(有効回答72社)では、「自社地元」の販売に力を入れるが44社(構成比61.1%)と6割を超えた。次いで、出荷量の増加が期待できる「東京都市部」への進出に意欲をみせるメーカーも15社(同20.8%)あった。都市部を中心に続くビアパブ人気にあやかり、東京都市圏で知名度を上げたい地ビールメーカーは多く、自社単独でアンテナショップを出店するメーカーも増えている。だが、その一方で、地元にこだわるメーカーも少なくない。
 大手5大メーカーが地ビール、クラフトビールの製造販売に乗り出す動きも本格化している。そのため、中小の地ビールメーカーは、「独自の味」に注力するが34社(構成比47.2%)、「大手を意識せず従来通りの営業を進める」と泰然自若の回答も27社(同37.5%)あった。
 「独自の味」「大手を意識せず従来通りの営業を続ける」など全体の84.7%が大手メーカーの市場参入を市場拡大につながると前向きに受けとめ、地ビールメーカーは独自路線に意欲をみせている。大手メーカーの参入が市場を拡大し、共存共栄を図ろうとする中小メーカーは多い。

地ビール5

飲食店の来店客減少、イベント再開時期の不透明感が不安材料

 新型コロナの影響について(有効回答72社)は、「悪い影響」との回答が69社(構成比95.8%)にのぼった。
 新型コロナ感染拡大による今後の懸念(複数回答あり)は、「三密回避などによる飲食店の来店客の減少」が55社(構成比28.9%)、「イベントの再開時期の不透明感による来年以降の出荷環境」が53社(同27.9%)、「レジャー需要減退による観光地(インバウンドや道の駅なども含む)での消費の減少」が49社(同25.8%)だった。巣ごもり傾向に伴う「アルコール飲料の消費の減少」や「ネット、通販、小売販売の競争激化」を不安要因にあげるメーカーもあった。

地ビール6

出荷量 9年連続でエチゴビール(新潟県)がトップ

 2020年1-8月の出荷量ランキングは、地ビール醸造では全国第一号のエチゴビール(株)(新潟県)が9年連続でトップを守った。出荷量は1,712kℓ(前年同期比15.8%減)と2位以下を大きく引き離した。エチゴビールの阿部誠代表取締役は、「輸出が減少した。今後は国内小売業への配荷拡大を進める」と、国内での販売強化に意欲を示した。
 2位は「常陸野ネストビール」の木内酒造(資)(茨城県)で、出荷量は907kℓ(同35.9%減)。3位は「べアレン・クラッシック」の(株)ベアレン醸造所(岩手県)の461kℓ(同17.9%増)。以下、4位は「伊勢角屋麦酒」の(有)二軒茶屋餅角屋本店(三重県)の374kℓ(同2.6%減)、5位は「サンクトガーレン」のサンクトガーレン(有)(神奈川県)の285kℓ(同10.7%減)と続く。
 1-8月の出荷量が100kℓを超えた地ビールメーカーは前年の23社から9社減の14社だった。

地ビール7


 今回のアンケートでは、今後の地ビールメーカーが力を入れる取り組みとして、「ECモールへの出店など通販部門の強化」や「オンライン商法・セミナーの積極活用とそのための環境整備、人材育成に取り組む」、「ITによる省人化→スマホによるセルフオーダーシステム、ビンビール販路拡大の継続」、「品質向上による賞味期限延長の模索、地元限定販売商品で地元および観光客への需要喚起」など、積極的な意見をあげるメーカーも多かった。また、一部のメーカーでは「通販やOEM受注が好調で生産設備を拡張した」との声もあった。
 半面、「業務需要の大幅かつ長期にわたる減少により、赤字圧縮のための人件費削減を余儀なくされている。その影響で、設備の運転に最低限必要な数の技術者を雇えず、製造に支障が生じている。会社が潰れなくても醸造が廃業に追いかまれかねない事態である。経営の本気度が試される」との意見も寄せられた。
 今後の地ビール業界動向について、「まだしばらくこの厳しい状況は続く。地道な営業を続け、お客様第一で回復に努めていく」、「今後もネット環境を使用した取り組みが不可欠。世界的な状況を鑑みても、輸出も含めかなり厳しい状況がしばらく続く」、「今後は品質の良いビールだけが生き残る。技術の確認と情報収集が重要」と業界の先行きに厳しい見通しを示すメーカーもあった。
 本来、2019年秋のラグビーW杯に続き、2020年は東京オリンピック・パラリンピック開催など、国際的なイベントが続き、地ビールの需要拡大が期待されていた。だが、新型コロナウイルスの感染拡大で、東京オリンピック・パラリンピックは1年延期され、期待されたインバウンド需要も一気に消失し、大規模なイベント中止など、地ビール業界も逆風に晒されている。
 2016年12月の税制改正大綱で麦芽比率などで異なるビール類の酒税は、2020年10月、2023年10月、2026年10月の3段階で、350mℓ缶あたり最終的に54.25円に一本化される。ビール酒税は現在の77円から減税される一方、第3のビールや発泡酒、ビール系飲料は増税され、地ビール業界にとっては有利な材料も残っている。
 今後、酒税改正にどう向き合い、需要を取り戻し、市場の活性化を実現できるか。インバウンドに依存しない販路の確保も、経営安定には欠かせない。これから地ビールメーカーの経営戦略の立案と実行力が問われている。

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