• TSRデータインサイト

2025年度に「価格転嫁」できた中小企業は57.1% 取適法をきっかけに価格交渉に臨む企業は3割未満

~2026年2月「価格転嫁」に関するアンケート調査~


 2026年1月1日、取引の適正化と中小事業者の利益保護を図るため、従来の「下請法」を強化した「中小受託取引適正化法(取適法)」が施行された。
 東京商工リサーチ(TSR)は、中小企業を対象にアンケートを行い、2025年度の価格協議(価格転嫁)の進行状況を聞いた。これによると、取引先との価格協議が実現し、「一部、または十分に転嫁できた」と回答した企業は、約6割(構成比57.1%)にとどまっていることがわかった。
 
 価格上昇分の一部、または十分に価格転嫁できたと回答した企業が多い業種は、「輸送用機械器具製造業」(構成比87.6%)などの製造業、「道路貨物運送業」(同85.8%)などで、8割の企業が価格転嫁できたと回答した。
 一方、学校教育、保険業、医療業などを中心に、「協議したが、全く転嫁できなかった」が4.6%、「協議を申し入れたが協議自体が実現せず」が2.3%あり、施行前だが、取適法の趣旨に反し、価格転嫁を望んでいても全く進捗がなかったとの回答が合計7.0%だった。
 取適法の施行を受けた2026年度の価格協議への方針では、「ここ数年と変わらない形で交渉」が42.4%で最多だった。「取適法をきっかけに原価や労務費高騰分の価格交渉に臨む」との回答は26.6%と3割に満たず、「取適法を把握していない」との回答も4.1%(215社)あった。
 2025年度の価格協議では、「協議し、十分に転嫁できた」と回答した企業は7.9%と1割未満で、中小企業が取引先に価格転嫁を求める余地は大きいことがわかった。中小企業の価格転嫁が定着し、賃上げに波及するためにも、取適法の一層の浸透と実効性の確保が求められる。
※本調査は、2026年1月30日~2月6日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,152社を集計・分析した。
※「中小企業基本法」に基づく中小企業のみを集計対象とした。


Q.今年度(2025年度)、主要販売先に対し、賃上げを念頭にした価格協議(価格転嫁)はできましたか?(単一回答)

■「一部、または十分に転嫁できた」企業は約6割
 中小企業5,127社へ、2025年度賃上げを念頭にした価格協議ができたかを聞くと、「協議し、一部転嫁できた」が49.2%(2,527社)で最大だった。「協議し、十分に転嫁できた」7.9%(405社)と合算した、協議の上価格転嫁が進んだ企業は57.1%(2,932社)と約6割を占めた。特に、運輸業77.5%(227社中、176社)、製造業69.5%(1,345社中、936社)で高かった。
 一方、「協議したが、全く転嫁できなかった」4.6%(240社)、「協議も申し入れたが協議自体が実現せず」2.3%(120社)と、建設業などを中心に価格転嫁を希望したが全く転嫁できなかった企業も7.0%(360社)あった。

Q.今年度(2025年度)、主要販売先に対し、賃上げを念頭にした価格協議(価格転嫁)はできましたか?

産業別 回答状況抜粋

業種別 転嫁できた「輸送用機械器具製造業」「道路貨物運送業」が上位

 業種(中分類・分母10以上)で、「協議し、一部または十分に転嫁できた」と回答した企業をみると、構成比トップは「輸送用機械器具製造業」で、87.6%(65社中、57社)だった。円安環境を背景に、自動車メーカーなどで業績が伸び、中小企業の価格改定の交渉も進んでいる。
 2位は、「道路貨物運送業」が85.8%(141社中、121社)で続く。燃料費高騰や人手不足といった構造的なコスト増に直面するなか、政府の取り組みや荷主側への是正指導の強化が後押しとなり、一定の転嫁が進んだ可能性がある。
 上位は機械や食料品などの製造業が多かった。
 一方、「協議したが、全く転嫁できなかった」、「協議も申し入れたが協議自体が実現しなかった」企業は、トップが「学校教育」18.1%(11社中、2社)。次いで、「保険業」15.7%(19社中、3社)、「非鉄金属製造業」15.3%(26社中、4社)が続く。
 公定価格や制度で価格が規制されている業種や、機械以外の製造業が上位に多く並ぶ。

左:「協議し、十分に転嫁できた」「協議し、一部転嫁できた」業種別(上位) 右:「協議したが、全く転嫁できなかった」「協議も申し入れたが協議自体が実現しなかった」業種別(上位)

Q.今年1月1日、中小受託取引適正化法(取適法)が施行されました。価格転嫁の定着を念頭とした法律です。これを受け、来年度の価格協議はどのように臨む方針ですか?(単一回答)

 取適法施行による来年度の価格協議の方針を聞くと、「ここ数年と変わらない形で交渉」が42.4%(5,152社中、2,187社)で最大だった。
 取適法をきっかけに価格交渉に臨むとの回答は、26.6%(1,373社)見られ、内訳は、「原価高騰分を交渉」9.6%(497社)、「原価高騰分に加えて労務費も交渉」が17.0%(876社)だった。
 一方、「交渉する予定はない」も18.4%(951社)見られ、金融・保険業(構成比31.5%)、不動産業(同29.5%)などで構成比が高かった。

Q.今年1月1日、中小受託取引適正化法(取適法)が施行されました。価格転嫁の定着を念頭とした法律です。これを受け、来年度の価格協議はどのように臨む方針ですか?

産業別 回答状況抜粋


人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

破産の秀和グループ、9億円の債務超過

6月17日に東京地裁から破産開始決定を受けた(株)秀和グループ(TSRコード:027747050、江東区)の財務内容が一部判明した。

2

  • TSRデータインサイト

止まらない建設業の倒産、職別工事が総合工事を抜く ~ 施工力が「希少資源」、動き始めた内製化 ~

2025年の建設業の倒産は、2,014件(前年比4.6%増)で、4年連続で前年を上回り、2013年(2,421件)以来、12年ぶりに2,000件を超えた。 コロナ禍の2021年に1,065件と2000年以降では最少を記録。その後は増勢に転じ、わずか4年で約2倍に増加した。

3

  • TSRデータインサイト

倒産データからみる「倒産が多い住所」 ~ 一等地のイメージと与信リスク ~

「倒産が多発する住所」は、現代のビジネスモデルの結果だ。ネット全盛期のいま、企業の実体が見えにくいのは普通なのかも知れない。だが、そんな風潮のなか、登記上住所の一等地に惑わされず経営実体をいかに見極めるか。ここでもまた、外形に惑わされない“目利き力”が問われている

4

  • TSRデータインサイト

【2026年3月期決算】役員報酬額1億円以上の開示 過去最多の934人に 社数も387社で最多を更新 上位5人中、外国人4人

2026年3月期決算の上場企業2,198社のうち6月26日12時までに有価証券報告書の提出を確認できたのは9割(90.7%)の1,995社だった。例年と異なり株主総会前に有価証券報告書を提出する上場企業が増えた。報酬額1億円以上の役員を開示した企業は387社、人数は934人で前年の364社・887人を上回った

5

  • TSRデータインサイト

環境経営総合研究所の「粉飾の手口」

(株)環境経営総合研究所(TSRコード: 294046615、渋谷区、以下ERI)が3月26日、東京地裁から破産開始決定を受けた。東京商工リサーチ(TSR)が独自入手した資料や関係者が「実際の売上は100分の1程度」と語る粉飾の実態がみえてきた。

TOPへ