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「マイナス金利に関するアンケート」調査

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公開日付:2016.04.26

 2月16日、日本銀行はマイナス金利政策を導入した。マイナス金利で一般銀行が日銀に預け入れている日銀当座預金のうち、一定金額を超えた分は日銀に0.1%の手数料を払うことになる。銀行の貸し出しを促し、企業の投資意欲の底上げを狙ったが、景気の先行き不透明感もあって企業側の規模拡大に向けた資金需要は低迷しており、新たな貸出先を見出すのは容易でない。
 東京商工リサーチは、マイナス金利導入で金融機関の企業向け貸出姿勢や企業の投資動向がどう変わったか、緊急アンケート調査を実施した。
 マイナス金利導入前から金利競争は過熱しており、現在の借入金利より低利の打診を受けても「新規資金として調達する」と回答した企業は21.6%と、全体の4分の1にとどまった。金利引き下げだけでは投資促進に繋がらず、資金需要の拡大は難しい実態が浮き彫りになった。


  • 2016年3月17日~3月29日にインターネットによるアンケートを実施し、有効回答を得た6,870社の回答を集計、分析した。

Q1.マイナス金利の導入による貴社への影響を全て選択してください(複数回答)

 最も多かったのは、「影響は受けていない」の4,294社(全6,870回答、構成比62.5%)だった。影響を受けた場合では、「借入金利の引き下げ実施」が1,559社(同22.7%)、「預金金利の下落」が891社(同13.0%)など、金利低下に関する項目が目立った。
 「TIBOR(東京銀行間取引金利)ベースの借入金の金利が下がった」、「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)は金利引き上げ予定」などの声があった。

Q2.金融機関から現在の利率より低利で融資の打診を受けたら、新規資金として調達しますか?

 「調達しない」が3,222社(構成比46.9%)で半数近くを占めトップだった。ただし、「検討中」が2,164社(同31.5%)あり、まだ具体的な対応を決めかねている企業も少なくない。
 資本金別では、資本金1億円以上で「調達する」 が14.0%(全1,503社中211社)だったのに対し、同1億円未満では23.7%(全5,367社中1,273社)だった。小額資本の企業ほど、資金調達時に低い金利を望んでいると見受けられる。

マイナス金利 Q2

Q3.(Q2で「調達する」と回答した企業)調達する理由を全て選択してください(複数回答)

 「運転資金」が1,123社(全1,484社、構成比75.7%)だった。以下、「設備投資」の686社(同46.2%)、「従業員の増員」の218社(同14.7%)と続く。
 「従業員の増員」は、資本金1億円以上では5.7%(全211社中12社)であるのに対し、1億円未満では16.2%(全1,273社中206社)だった。小額資本の企業ほど人材確保に積極的で、マイナス金利を利払い負担の軽減として受け止めている結果となった。

マイナス金利 Q3

Q4.(Q2で「調達しない」と回答した企業)調達しない理由を一つ選択してください

 「資金需要がない」が1,713社(全3,222社、構成比53.2%)で半数を占めトップ。「借入を増やしたくない」の824社(同25.6%)、「既に低利で調達」の344社(同10.7%)と続いた。
 資本金別では、1億円以上、1億円未満ともに「資金需要がない」が53%前後で大きな違いはなかった。ただし、「借入を増やしたくない」は、1億円以上は19.3%(全805社中155社)だったのに対し、1億円未満は27.7%(全2,417社中669社)となり、小額資本の企業ほど有利子負債の増加に敏感であることがわかった。

マイナス金利 Q4

Q5.金融機関から現在の利率よりも低利で融資の打診を受けたら、借り換えますか?

 「借り換える」が2,540社(全6,870社、構成比37.0%)でトップだった。しかし、「借り換えない」が2,161社(同31.5%)、「検討中」が2,061社(同30.0%)とそれぞれ30%台で拮抗し、金利引き下げが決定的なインセンティブを持たないことを示している。
 資本金別では、「借り換える」が1億円以上で23.8%(全1,503社中358社)だったのに対し、1億円未満では40.7%(全5,367社中2,182社)と約2倍に達し、小額資本の企業ほど借入金利の低下への関心が高いことがわかった。

Q6.(Q5に関して)借り換えない理由を一つ選択してください

 「資金需要がない」が1,104社(全2,161社、構成比51.1%)で半数を占めた。ただ、「既に低利で調達」649社(同30.0%)も3割を占め、低金利競争が一巡していることがわかった。
 資本金別では、「既に低利で調達」が1億円以上では136社(全580社、同23.4%)だったのに対して、1億円未満は513社(全1,581社、同32.4%)となり、資本金の大小で差のつく結果となった。

Q7.マイナス金利の導入で、資産の運用方法を見直しますか?もしくは既に見直しましたか?(複数回答)

 トップは、「見直す予定はない」の5,042社(全6,870社、構成比73.4%)で7割を上回った。
 「事業設備へ投資する」は資本金の規模で回答が二分した。資本金1億円以上では、108社(全1,503社、同7.2%)にとどまったのに対し、同1億円未満では637社(全5,367社、同11.9%で、大手企業の投資意欲の低迷ぶりを示している。
 この他、株式や外貨建て預金、国内外の債券など、余剰資金を有価証券で運用しようとする企業もあるが、それぞれ少数にとどまり、資金運用に大きなインパクトはないようだ。

マイナス金利 Q7

Q8.マイナス金利の導入で懸念することを全て選択してください(複数回答)

 最多は「預金金利の低下」の2,549社(全6,870社、構成比37.1%)で3割を占めた。「円安進行」の1,829社(同26.6%)、「金融機関の融資姿勢の硬化」の1,645社(同23.9%)、「債権の運用利回りの低下」の1,149社(同16.7%)と続く。
 「金融機関の融資姿勢の硬化」は、資本金1億円以上は284社(全1,503社、同18.9%)なのに対して、同1億円未満では1,361社(全5,367社、同25.4%)で、中小企業は金融機関の貸出姿勢の変化を懸念しているようだ。

マイナス金利 Q8

Q9.(マイナス金利とは切り離して)金融機関に望むことを全て選択してください(複数回答)

 トップは「借入利率の引き下げ」の2,889社(全6,870社、構成比42.1%)。次いで、「ビジネスマッチングなどの営業支援」の2,681社(同39.0%)、「タイムリーな融資」の2,076社(同30.2%)、「事業に対する理解向上」の1,866社(同27.2%)など。
 一方、「事業承継への助言」773社(同11.3%)や、「返済猶予」198社(同2.9%)など、現状の深刻な課題への支援要望も少なくなかった。

マイナス金利 Q9


  3月30日に日銀が公表した「貸出約定平均金利の推移」によると、2月の国内銀行の新規約定金利は1月の0.806%から0.013ポイント下落し、0.793%となった。地方銀行、第二地方銀行、信用金庫の金利は1月より低下したが、都市銀行が1月の0.448%から0.494%へ0.046ポイント引き上げたため、全体の引き下げは小幅にとどまった。
 今回のアンケート調査で、資本金1億円未満の企業は、低利での借り換えニーズが比較的高いことがわかった(Q5)。新規の資金調達には、資本金1億円以上の企業より前向き(Q2)で、調達資金は従業員の増加に振り向けたいとする回答が多かった。同時に、金融機関に対する要望では「タイムリーな融資」や「自社事業への理解向上」も多かった。これは数年ごとの担当者交替で、自社の将来的な展望への支援を仰げない経営者の切実な声でもある(Q9)。
 資本金1億円以上の企業でも、「TIBORベースの借入金の金利が下がった」(Q1)など、マイナス金利を歓迎している。しかし、「グループでCMSを導入し、個社では調達決定権がない」(Q4)との声もあり、多様化する資金管理の中で日銀の狙い通りに新規マネーが供給され、投資に向かうとは限らない構図も見え隠れしている。
 また、金融機関に望むことで、「タイムリーな融資」が資本金1億円以上は21.0%にとどまった一方、同1億円未満は32.8%だった(Q9)。これは業績改善が遅れ、財務内容が脆弱な企業ほど機動的な資金調達に不安を抱えていることを示している。
 金融機関に望むことの2番目は、「ビジネスマッチングなどの営業支援」だった(Q9)。金融機関は企業への新たな営業支援で本質的な資金需要を創出し、金利競争に依らない貸出増加が求められている。
 マイナス金利導入後、貸出金利の低下に加え、長期国債の利回り低下などで金融機関の収益環境は厳しさを増している。今回のアンケートで、企業が金融機関に期待する内容は、これまで通り、企業の本質を理解し、ニーズに即応したサービスを求めていることがわかった。そのためには渉外担当者の目利き力を早期に育成し、企業の事業を客観的に判断できる体制を構築することが必要だ。
 マイナス金利の導入後も、企業の資金需要を喚起する施策を打ち出せない金融機関は多い。すでに本業の貸出による金利収益で経営できる時代ではない。いかに顧客が求めるサービスで市場拡大を図れるか、金融機関は競争の時代に突入している。マイナス金利は生き残り競争を鮮明にするきっかけになったのに過ぎないのかも知れない。

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