• TSRデータインサイト

2025年上半期の「ゼロゼロ融資」利用倒産は210件 累計は2,002件、物価高で飲食店が最多

2025年上半期(1-6月)「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況


 2025年上半期(1-6月)に「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」を利用後の倒産は、210件(前年同期比35.9%減)だった。上半期で前年同期を下回ったのは初めて。
 ゼロゼロ融資を利用後の倒産は、2020年7月に最初の倒産が発生以降、累計2,002件に達する。だが、 2024年6月から13カ月連続で前年同月を下回っており、ピークアウトの兆しも見えている。
 ただ、昨年6月まで延長されたコロナ借換保証の据置期間は2年以内が約8割を占めている。今後、返済が本格化するに伴い、リスケで実質先送りされた倒産が増勢に転じる懸念も残されている。

 産業別では、最多はサービス業他が61件(前年同期比38.3%減)で、全体の約3割(29.0%)を占めた。次いで、建設業が52件(同14.7%減)、小売業27件(同20.5%減)と続く。
 業種別(中分類)では、最多は「飲食店」の23件だった。コロナ禍の時短・休業に伴う給付金や補償金などの支援が終了・縮小したことに加え、最近の米価や食材、水道・光熱費などの高騰、人手不足などが直撃している。

 コロナ禍の支援策で劇的な効果をみせたゼロゼロ融資は、2024年4月に返済開始が最後のピークを迎えた。だが、資金繰り悪化が懸念されたため、政府は元本返済を先送りする「コロナ借換保証」を2023年1月に実施した。約8割が借換保証の据置期間を2年以内に設定しており、今夏以降に返済が始まる企業の動向を注視する必要がある。
 コロナ禍が落ち着くと同時に、円安に伴う物価高や人手不足が深刻さを増しているが、さらに金利上昇やトランプ関税など、企業を取り巻く環境は懸念材料が山積している。ゼロゼロ融資を利用した企業の倒産は一服するが、今後、猶予されたゼロゼロ融資の返済が本番を迎えると、資金繰りに窮する企業の倒産が再び増勢に向かう可能性も出ている。

※ 本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」の利用が判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。

ゼロゼロ融資利用後倒産 月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ