• TSRデータインサイト

2023年度「赤字法人率」 過去最小の64.7% 最小は佐賀県が60.9%、四国はワースト5位に3県入る

2025年公表の都道府県別「赤字法人率」調査


 国税庁が4月に公表した「国税庁統計法人税表」によると、2023年度の赤字法人(欠損法人)は193万650社だった。普通法人(298万2,191社)の赤字法人率は64.73%で、年度集計に変更された2007年度以降では、2022年度の64.84%を下回り、最小を更新した。
 産業別では、ワーストは小売業の70.91%で、最小は不動産業の57.71%だった。都道府県別では、徳島県が70.92%で17年連続ワーストを更新し、四国はワースト5位までに高知県を除く3県が入った。

 赤字法人率は、リーマン・ショック後の2010年度に75.78%を記録した。その後は、緩やかに改善をたどり、2023年度はコロナ関連支援もあって64.73%まで下げた。ただ、地域的に濃淡が大きく、徳島県は70.92%(前年度70.45%)と17年連続ワーストだった。さらに、ワースト5位に四国は3県が入るなど、他地区に比べ悪化が目立つ。
 一方、最小は佐賀県の60.9%(同61.0%)で、3年連続で赤字法人率が最小だった。
 産業別では、ワーストが小売業の70.91%、最小が不動産業の57.71%など、コロナ禍の影響の大きさを反映した結果となった。昨年より悪化した産業は、サービス業他(前年度比0.55ポイント増)、情報通信業(同0.41ポイント増)、金融・保険業(同0.24ポイント増)の3産業だった。
 今後、コロナ関連支援の縮小や終了と同時に、物価高や人件費上昇、金利引き上げの影響も広がっており、赤字法人率が悪化する可能性も出ている。

※本調査の赤字法人率は、国税庁公表の「国税庁統計法人税表」のデータを元に、普通法人を対象に「赤字(欠損)法人数÷普通申告法人数」×100で算出した。
※普通法人は会社等(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、協業組合、特定目的会社、相互会社)、企業組合、医療法人などを含む。


全国の赤字法人率64.73%

 2023年度の全国の普通法人298万2,191社を対象にした赤字法人は、193万650社(年2回の複数納税を含む)だった。
 赤字法人率は64.73%で、前年度を0.11ポイント下回り、2007年度以降の最小を更新した。一方、普通法人の増加(2022年度292万2,972社)に伴い、赤字法人数は前年度から1.85%増加(同189万5,402社)し、4年連続で増加した。
 赤字法人率は、リーマン・ショック後の2010年度に75.78%まで上昇し、その後は2019年度まで9年連続で低下が続いた。  
2020年度はコロナ禍の影響が深刻で、10年ぶりに赤字法人率が上昇した。ただ、持続化給付金や雇用調整助成金などの支援が奏功し、2021年度以降は赤字法人率が低下している。

赤字法人率推移

都道府県別 22都道府県で赤字法人率が改善

 都道府県別では、22都道府県で赤字法人率が前年度より改善、25県で悪化した。改善幅の最大は沖縄県(65.48→64.81%)で、前年度から0.67ポイント改善した。
赤字法人率の最小は、佐賀県の60.93%(前年度61.04%)で、全国平均(64.73%)を3.8ポイント下回り、3年連続トップ。次いで、福井県61.75%(同61.71%)、滋賀県62.07%(同62.31%)、青森県62.30%(同61.74%)、長崎県62.40%(同62.58%)の順となった。
 赤字法人率のワーストは、徳島県の70.92%(同70.45%)で17年連続ワーストとなった。以下、香川県69.17%(同69.41%)、福島県68.42%(同67.45%)、栃木県67.33%(同67.63%)、愛媛県67.32%(同67.36%)が続いた。徳島県では、木工関連などの地場産業の低迷に加え、少子高齢化や人口減少による地域経済の停滞などで、赤字法人率の改善が遅れている可能性もある。また、鳥取県65.15%(同63.51%)や高知県64.75%(同63.21%)などでも悪化が目立った。全国平均の赤字法人率は64.73%で、前年度から0.11ポイント改善したが、依然として6割を超える水準が続いている。

都道府県別 赤字法人率ランキング 上:降順 下:昇順

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ