• TSRデータインサイト

2025年1-6月の「マッサージ業」倒産55件 20年間で最多、熾烈な競争で値上げも限界

 街なかで静かに「マッサージ業」戦争が巻き起こっている。ストレスの溜まる時代だけに、接骨院や鍼灸院、リラクゼーション店などは人気を博すが、それぞれの業態を交えて壮絶な顧客の奪い合いが繰り広げられている。そこに人手不足に加え、家賃や電気料金などのコスト上昇が重なる。集客を考慮すると、値上げも限定的にとどまらざるを得ず、価格競争から脱落した「マッサージ業」の倒産が過去20年間で最多の55件に達した。
 第3次の倒産増時代に突入した「マッサージ業」を分析した。

 「療術業(マッサージ業)」は、「鍼灸院」「接骨院」「マッサージ店」など多くのサービスに分類される。2025年上半期(1-6月)の倒産(負債1,000万円以上)は55件(前年同期比17.0%増)で、過去最多を更新した。これまでの最多は、2024年の47件だった。
 2025年上半期に倒産した55件のうち、8割超(83.6%)で売上不振が原因だった。続々と新しい接骨院や鍼灸院、マッサージ店が誕生し、顧客獲得を巡り熾烈な競争が続く。新規来店は破格値での施術や前払い回数券で実質割引に手を付けるなど、あの手この手の集客方法も右肩上がりの物価高を前になすすべがなく、差別化が難しい時代に脱落するマッサージ業者は多い。
 倒産した44件は、すべて負債1億円未満で、従業員数も10名未満が54件(構成比98.1%)と小・零細規模が大半を占めた。地区別では、近畿(19→27件)の増加が目立つ。大阪府(8→10件)、兵庫県(6→6件)、京都府(3→3件)、滋賀県(1→3件)、奈良県(1→3件)、和歌山県(0→2件)だった。
 「マッサージ業」の倒産は、過去に3度の大きな波があった。第1次は2010年から2012年。リーマン・ショックや東日本大震災で先行きが見通せない時期に、足つぼマッサージやタイ古式マッサージなどの斬新なマッサージ店が台頭した。第2次は2018年から2019年。リーマン・ショックの傷もようやく癒えた頃で、大手チェーンが駅前などを中心に店舗数を急拡大し、人手不足に拍車がかかった時期だった。そして、現在が第3次だ。コロナ関連支援が終了・縮小するなか、深刻な競争とコストアップで採算が悪化し、2025年上半期は過去20年間で最多を更新した。物価高、人件費上昇でコスト削減は限界に達しており、第3次倒産増時代はこれから本番を迎えそうだ。
※ 本調査は、日本産業分類(小分類)の「療術業」を抽出し、2006年上半期から2025年上半期までの倒産を集計、分析した。

マッサージ業の倒産が過去最多に

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ