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第12回「地ビールメーカー動向」調査 「巣ごもり需要」追い風、出荷量7.7%増

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公開日付:2021.10.05

 主な地ビールメーカー75社の2021年1-8月の総出荷量は6,601.6kℓで、前年同期比を7.7%上回った。前回(2020年)調査では、調査を開始以来、初めて1-8月の出荷量が前年同期を下回ったが、コロナ禍に伴う巣ごもり需要を取り込むためネット販売に力を注いだ企業が多く、出荷量は2年ぶりに増加した。
 一方、ビール大手4社が発表した2021年1-6月のビール系飲料(ビール、発泡酒、第三のビール)の販売数量は前年同期比で6.0%減少し、9年連続で前年同期を下回った。コロナ禍による緊急事態宣言などの営業自粛で、業務用・飲食店向けが同3割減と大きく落ち込んだ。
 7月のビール系飲料の販売は、東京五輪・パラリンピック開催で家庭内での飲酒機会が増え、ビール出荷量が増えた。しかし、8月の合計販売数量は業務用が落ち込み、天候不順で家庭向け缶商品の販売も振るわなかった。消費者の嗜好が多様化し、ビール大手各社はノンアルコールビールテイスト飲料の増産で対応しているが、厳しい状況が続いている。
 地ビールメーカーはイベントなどでの販売を軸に、スーパーやコンビニに加え、ビアパブの新規開拓など、地道な営業で出荷量を伸ばしてきた。だが、2020年は新型コロナ感染拡大で様相が一変した。コロナ禍の2020年1-8月の総出荷量は、前年同期比25.1%減と大きく下回った。ただ、地ビールメーカー各社はこぞって香り、泡、炭酸、風味など、美味しいビール作りに力を注ぎ、消費者の巣ごもり需要を取り込んできた。今回の地ビールブームは広がると同時に、根強いと言われる。このブームを終焉させまいと、地ビールメーカー各社はコロナ禍での生き残りをかけた力量を問われている。

  • 本調査は、2021年9月1日~25日に全国の主な地ビールメーカー217社を対象にアンケート調査を実施、分析した。出荷量は2021年1-8月の出荷量が判明した75社(有効回答率34.6%)を有効回答とした。その他の項目は、回答が得られた76社(有効回答率35.0%)を有効回答とした。本調査は2010年9月に開始し、今回で12回目。

2021年1-8月の主要75社の総出荷量 前年同期比7.7%増

 出荷量が判明した75社の2021年1-8月の総出荷量は、6,601.6kℓ(前年同期比7.7%増)だった。コロナ禍で新年会の機会が喪失した2021年1月の出荷量は754㎘(前年同月比27.4%減)と大幅に落ち込んだ。ただ、3月以降は、2020年がコロナ禍の影響で出荷量が大幅に落ち込んだ反動で3月(同28.2%増)、4月(同61.4%増)、5月(同47.6%増)と急激に回復している。
 だが、出荷増が期待された8月(同5.1%減)は、緊急事態宣言延長による外出自粛や飲食店の営業時短の影響、酒類提供の禁止、天候不順などが重なり、前年同月を割り込んだ。

地ビール

出荷量 増加は30社

 2021年1月-8月の出荷量が判明した75社のうち、「増加」は30社(構成比40.0%)、「減少」および「横ばい」は45社(同60.0%)だった。
 出荷量増加の要因(複数回答)は、「巣ごもり需要が伸びた」が21社で、増加した7割以上が巣ごもり効果を要因に挙げた。「スーパー、コンビニ、酒店向けが好調」が14社だった。
 一方、減少の要因(複数回答)は、「イベントの開催中止、延期」が38社と最も多く、「飲食店、レストラン向けが不調」が36社、「観光需要の喪失」は33社と、約8割がこの3つを減少要因に挙げた。長雨などの気候要因を挙げたのは11社だった。

地ビール

地区別出荷量 減少率ワーストは九州

 75社の実質本社の地区別では、出荷量は9地区中、5地区が増加、4地区が減少した。出荷量の最多は、関東の3,160.4kℓ(前年同期比13.8%増)だった。
 減少率ワーストは、九州の247.4kℓ(同9.6%減)。出荷規模の小さいメーカーが多く、全体の出荷量も減少した。
 地ビール、クラフトビールのブームは全国に広がり、大消費地に近い関東のメーカーが出荷量を伸ばしている。一方、固定客が少なく、観光客などに依存した地域は、コロナ禍の影響が直撃した格好となった。

地ビール

インターネット販売に活路

 売上比率の一番大きい販売先(有効回答76社)は、最多は「スーパー、コンビニ、酒店」が33社(構成比43.4%)、自社販売(イベント販売含む)が22社(同28.9%)だった。
 2021年の商流の変化について(有効回答74社、複数回答)は、最多は「インターネット通販の売上が伸びた」が36社。3番目にも、「インターネット通販の販路を拡大した」が21社で、5割近くの企業がインターネット販売に力を注いでいた。一方、「飲食店、レストラン向けの販路を縮小した」も15社あり、コロナ禍の影響に苦慮している様子が窺える。

地ビール

今後の事業展開 地元中心に東京進出も視野、独自の味を追求

 今後の事業展開(有効回答75社)では、「自社地元」の販売に力を入れるが56社(構成比74.7%)と7割を超えた。次いで、出荷量の増加が期待できる「東京都市部」への進出に意欲をみせるメーカーも11社(同14.7%)あった。都市部を中心に根強いビアパブ人気にあやかり、東京都市圏で知名度を上げたい地ビールメーカーは多く、自社単独でアンテナショップを出店するメーカーも増えている。だが、その一方で、地元にこだわるメーカーも少なくない。
 大手4大メーカーが地ビール、クラフトビールの製造販売に乗り出す動きも本格化している。中小の地ビールメーカーは、製品差別化のため、「独自の味」に注力するが47社と、6割以上のメーカーが独自の味にこだわりをみせ、「大手を意識せず従来通りの営業を進める」との回答も31社あった。
 「独自の味」「大手を意識せず従来通りの営業を続ける」など大手メーカーの市場参入を市場拡大につながると前向きに受けとめ、独自路線に意欲をみせる地ビールメーカーは多い。
 大手メーカーの参入が市場拡大の契機になることを期待し、市場の健全な共存共栄を図ろうとする中小メーカーは増えている。

地ビール

レジャー需要の激減で消費が減少、飲食店の来店客減少が不安材料

 新型コロナの影響について(有効回答76社)は、「悪い影響」との回答が68社(構成比89.5%)にのぼった。
 新型コロナ感染拡大による今後の懸念(有効回答72社、複数回答)は、「レジャー需要減退による観光地(インバウンドや道の駅なども含む)での消費の減少」が61社、「三密回避などによる飲食店の来店客の減少」が57社と、約8割がこの二つの要因を不安材料として挙げた。また、「イベントの再開時期の不透明感による来年以降の出荷環境」が54社で、巣ごもり傾向に伴う「アルコール飲料の消費の減少」や「ネット、通販、小売販売の競争激化」を不安要因に挙げるメーカーもあった。

地ビール

出荷量 10年連続でエチゴビール(新潟県)がトップ

 2021年1-8月の出荷量ランキングは、トップは地ビール醸造では全国第一号のエチゴビール(株)(新潟県)が10年連続で圧倒的な強みを見せた。出荷量は2,112kℓ(前年同期比27.8%増)と2位以下を大きく引き離した。エチゴビールの阿部誠・代表取締役は、「巣ごもり需要が伸び、リニューアル効果もあった」と、国内での販売強化が功を奏したとの認識を示した。
 2位は「べアレン・クラッシック」の(株)ベアレン醸造所(岩手県)の498kℓ(同8.0%増)。以下、3位は「網走ビール」の網走ビール(株)(北海道)で356kℓ(同47.2%増)、4位はオラホビールの(株)信州東御市振興公社で301.5kℓ(同31.3%増)、5位は「伊勢角屋麦酒」の(有)二軒茶屋餅角屋本店(三重県)の256kℓ(同31.6%減)と続く。
 1-8月の出荷量が100kℓを超えた地ビールメーカーは前年と同数の15社だった。

地ビール


 今回のアンケートで、今後の地ビールメーカーの注力点を尋ねた。
 「新型コロナのおかげで事業再構築補助金という大型補助金を得ることができ、設備投資のチャンスと捉えている」と積極的な設備投資でコロナ禍を乗り切ろうとするメーカー、「海外が復調し輸出に力を入れている。BtoBで法人利用が増えている」と海外への輸出や法人向けの売上増を目指すメーカーがある。
 その一方で「地ビール製造・販売を休止した。免許を取り消す予定」との回答もあり、需要減少で先行きが見通せずに解散や廃業に追い込まれるメーカーも出始めた。
 今後の地ビール業界について、「クラフトビール業界の良さは、他事業者とのコラボや交流が深いことがあるが、コロナ禍で交流も減っている。この数年盛り上がっていたブームが去り、クラフト文化が停滞するのでは」と、ブームの沈滞を懸念する声もある。また、「ゼロコロナを望む空気が支配的だが、社会経済への悪影響はこの冬以降も続くとみている。今後、新たな感染症の発生や、コロナがぶり返すたびに同じ状況が繰り返される気がする。現状をもとに次の手を考えていきたい」と、業界の先行きだけでなく、コロナ禍の収束に厳しい見通しを示すメーカーもあった。
 2021年は1年開催が延期された東京五輪・パラリンピックなど、国際的なイベントで地ビールの需要拡大が期待されていた。だが、コロナ禍で東京五輪・パラリンピックは無観客開催となり、期待されたインバウンド需要が消失した。さらに、大規模イベントの中止・延期などで、地ビール業界を取り巻く消費環境は厳しいままだ。
 2016年12月の税制改正大綱で麦芽比率などで異なるビール類の酒税は、2020年10月、2023年10月、2026年10月の3段階で、350mℓ缶あたり最終的に54.25円に一本化される。ビール酒税は現在の77円から減税され、第3のビールや発泡酒、ビール系飲料は増税される。地ビール業界にとっては有利な材料も残っている。
 ただ、酒税改正で地ビール業界に新規参入するメーカーも増え、第一次地ビールブームのように品質の良くないメーカーが増えることを懸念する声も出ている。コロナ禍にどう向き合い、需要を生み出し、市場の活性化を実現できるか。インバウンドに依存しない戦略も、経営安定には欠かせない。これから地ビールメーカーの戦略立案と実行力が問われている。

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