• TSRデータインサイト

25年3月期 不良債権比率が2年ぶりに低下 倒産増でも貸倒引当金は減少、事業再生が課題に

国内104銀行 2025年3月期「金融再生法開示債権」調査


 2024年度の企業倒産は1万144件と、11年ぶりに1万件を超えたが、銀行は健全化に向かっている。国内銀行104行の2025年3月期(単体)の「金融再生開示債権(以下、開示債権)」、いわゆる不良債権は8兆3,077億円(前年比12.1%減)と、2年ぶりに減少した。
  「開示債権比率」(債権合計に対する開示債権の割合)は1.14%(中央値1.71%)で、前年の1.33%から0.19ポイント低下した。3月期では、2020年(1.14%)以来の低水準にとどまった。

 倒産などで生じる債権回収不能に備えた「貸倒引当金」は、4兆312億円(前年比7.8%減)と2年ぶりに前年を下回った。104行のうち、61行(構成比58.6%)で貸倒引当金が減少しており、3年連続で減少行が増加行を上回った。コロナ禍前から業績が厳しい企業への手当を終えており、与信コストが増加するケースは少ない。ただ、その一方で、フォワードルッキングで保守的に貸倒引当金を積み増す銀行も増えているようだ。

 国内104行のうち、開示債権が前年を上回ったのは44行(構成比42.3%)で、大手行2行(前年7行)、地方銀行26行(同26行)、第二地銀16行(同23行)だった。増加率の最大は、宮崎太陽銀行の前年比39.5%増で、以下、琉球銀行の同28.7%増、SBI新生銀行の同23.3%増と続く。
 貸倒引当金の積み増しは、大手行は2行(前年6行)、第二地銀は10行(同17行)と減少したが、地方銀行は31行(同29行)に増えた。増加率の最大は、SBI新生銀行の前年比37.4%増。
 過剰債務を抱えた中小企業は多いが、銀行はリスクを取りながら企業への資金供給だけでなく、事業再生への取り組みでも存在意義を問われている。

※本調査は、国内104銀行の2025年3月期決算(単体)で、「金融再生法開示債権」(破産更生債権及びこれらに準ずる債権、危険債権、要管理債権)、および各銀行の「貸倒引当金」を集計し、分析した。
※銀行法の改正により2022年3月期から貸出金のほか、外国為替、未収利息、仮払金、支払承諾見返などを対象に、リスク管理債権が金融再生法開示債権に一本化された。
※1.大手行は埼玉りそなを含む7行、2.地方銀行は全国地銀協加盟行61行、3.第二地銀は第二地銀協加盟行36行。


2年ぶりに開示債権と開示債権比率が前年を下回る

 国内銀行104行の2025年3月期の「開示債権」は合計8兆3,077億円(前年比12.1%減)で、3月期では2年ぶりに減少し、2年ぶりに9兆円を下回った。
 業態別の「開示債権」は、大手行が2兆8,869億円(同25.6%減)、地方銀行が4兆2,293億円(同2.1%減)、第二地銀が1兆1,914億円(同4.7%減)で、すべての業態で前年を下回った。
 開示債権の減少は、大手行5行(前年ゼロ)、地方銀行35行(同36行)、第二地銀20行(同14行)の合計60行(同50行)だった。
 104行の「開示債権比率(金融再生法開示債権/債権合計)」は1.14%(前年1.33%)で、大手行が0.72%(同0.99%)、地方銀行が1.55%(同1.65%)、第二地銀が2.05%(同2.20%)とすべての業態で低下した。
 3月期では、大手行が2017年から1%を下回り、地方銀行は2011年以降の15年間で最低の水準。第二地銀は、2022年から2%台で推移している。
 大手企業を中心に好業績が続く一方で、コロナ禍からの業績回復の遅れに加え、物価高や人手不足、人件費の増加、金利上昇などで収益悪化に苦しむ中小企業は少なくない。そうした取引先が多い銀行ほど、開示債権比率が高くなる傾向がある。
 開示債権比率の最大は、スルガ銀行の8.56%(同9.88%)で、3月期では2021年の14.02%をピークに、4年連続で低下した。
 次いで、長野銀行6.42%(同5.56%)、きらやか銀行5.82%(同6.58%)、豊和銀行5.45%(同5.31%)、南日本銀行5.03%(同5.05%)の順で、上位5行が5%を超えた。2位の長野銀行から12位の福邦銀行(2.90%)まで、第二地銀が並んだ。
 最低はSBI新生銀行の0.27%(前年0.27%)で、1%未満は9行(同4行)と2倍に増加した。

金融再生開示債権・同比率推移(全体)

貸出金 過去最大の676兆6,935億円

 2025年3月期の「貸出金」合計は、過去最大の676兆6,935億円(前年比3.2%増)に達した。
 大手行が352兆2,247億円(同3.1%増)、地方銀行が267兆2,201億円(同3.5%増)、第二地銀が57兆2,486億円(同2.3%増)で、全業態で伸ばした。また、大手行7行のうち4行(前年7行)、地方銀行61行のうち55行(同53行)、第二地銀36行のうち29行(同28行)の合計88行(同88行)で、貸出金残高が増加した。
 経済活動の本格的な再開で資金需要を押し上げているが、企業の実態に合わせた適切な資金支援が重要なステージになっている。

貸出金・増減行数推移

貸倒引当金は2年ぶりに減少、減少行が7年ぶりに60行以上

 2025年3月期の「貸倒引当金」合計は4兆312億円(前年比7.8%減)で、前年の急増から一転、2年ぶりに前年を下回った。大手行が7行のうち5行、第二地銀が36行のうち26行と、半数以上の銀行で前年を下回った。地方銀行は61行のうち、減少は30行で、積み増しと減少がほぼ拮抗した。
 なお、フォワードルッキングで、保守的に貸倒引当金を積み増す銀行も多い。

貸倒引当金・増減行数推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

3

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

4

  • TSRデータインサイト

銭湯の利益6割減、値上げは諸刃の剣 独自文化の維持へ模索続く

木枯らし吹きすさぶなか、背中を丸めながら洗面器を抱えて銭湯に…。寒くなると銭湯が恋しくなるのは、いつの時代も変わらない。サウナブームで光明が差すように見える銭湯だが、実際はそうではない。

5

  • TSRデータインサイト

「退職代行」による退職、大企業の15.7%が経験 利用年代は20代が約6割、50代以上も約1割

「退職代行」業者から退職手続きの連絡を受けた企業は7.2%で、大企業は15.7%にのぼることがわかった。退職代行はメディアやSNSなどで取り上げられ、代行利用や退職のハードルが下がり、利用者も増えている。

TOPへ