拡大するキャンピングカー市場 ~ 「高嶺の花」から普及期、立ちはだかる壁 ~
キャンピングカーブームが続いている。一般社団法人日本RV協会(TSRコード: 332336492、神奈川県)によると、国内キャンピングカーの保有台数は毎年増え続け、2016年に10万台を超え、2024年は過去最高の16万5,000台に達した。
新しいレジャーの様式や災害時の住居、テレワークが出来るオフィスなど、利用価値は多岐にわたる。キャンピングカーを取り上げたYouTube動画の再生数も好調で、ショッピングモールに展示されるケースも見かけるようになり、ブームが広がっている。
2024年の売上高増加、利益は減少
東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約440万社)で、「キャンピングカー」を事業内容に含む企業は全国で152社が登録されている。このうち、2023年(1-12月)と2024年(同)の2期連続で業績が比較可能な企業は60社ある。
60社の2023年の売上高合計は390億5,569万円、2024年は411億7,771万円(前年比5.4%増)で、成長が続いている。
だが、部材コストや人件費の上昇、快適装備の拡充に伴う開発費負担など、目に見えない負担も多い。さらに、ベース車両価格の高騰や自動車メーカーの不正による供給不足などもあって、最終利益は2023年が10億2,880万円、2024年は9億2,033万円と減益を強いられている。業界としても需要増には生産体制の強化が必要だが、コスト高と設備投資負担が収益にのしかかっている。
様々な活用方法と課題
キャンピングカーの販売を手掛ける企業の担当者は、TSRの取材に「旅行用の他にリモートワーク用や、災害時のエマージェンシー用途での購入が増えている」と熱く語る。
購入者の年齢層も幅広く、販売店は軽自動車ベースから大型な車両まで様々にラインアップしている。だが、需要が増えるなかで、安全性の法規対応のため車両出荷が停滞することもあり、供給力に課題を抱えるという。細かい部材はオーダーメイドで職人の手作業に頼る部分も大きく、納車までの期間は延びる傾向にある。
人手不足の克服は避けて通れない課題だ。
生活や趣味の多様化を背景に、キャンピングカーブームは今後も続くと見られる。その一方で、供給制約や品質、信頼性の維持、そして利益確保という課題が業界には重荷になっている。
キャンピングカーが欧米のように手軽な乗り物になる環境づくりも急務だ。
とはいえ、価格が一般車より高額で駐車や利用スペースの確保が難しい日本では、まだ庶民には“高嶺の花”の意識は拭えない。
コンビニ大手の(株)ローソン(TSRコード: 570552710、東京都)は2025年7月から千葉県6店舗の駐車場で車中泊施設の実証実験を開始した。宿泊施設の高騰やペットとの旅行需要を見込んだ試みという。
さらなる市場拡大に向けて中古車供給の安定化やインフラ整備が成長の鍵になりそうだ。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年7月31日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)