2025年1-7月「酪農業」の倒産が過去最多 飼料価格、人件費の高騰で収益追い付かず
~2025年1-7月「酪農業」倒産状況~
2025年1-7月の「酪農業」の倒産が10件(前年同期比233.3%増)に急増し、集計を開始した2006年以降、最多を更新したことがわかった。すでに年間最多だった2024年を抜いている。
負債総額は76億400万円(同3469.9%増)と大幅に増加し、1-7月の過去最高を更新した。
2025年7月、農林水産省が発表した「畜産・酪農をめぐる情勢」によると、2024年度の生乳1kg当たり総合乳価は122.3円で、生産資材の価格高騰などを受けて上昇傾向が続く。だが、生産コストに見合う収益の確保は容易でなく、牧場経営の担い手の高齢化や後継者不足に加え、業務効率化に向けた課題も山積している。
さらに、地球温暖化による気温上昇への対策も急務だ。暑さに弱い乳牛は、暑熱ストレスで飼料摂取量の低下、乳量低下、繁殖機能の低下など、様々な問題を引き起こす。そのため、牛舎内の送風施設や換気、飲み水補給など、牛舎環境の維持への投資も不可欠で、営農コストが天井知らずの中で酪農家の苦悩が続く。
2025年1-7月の酪農業倒産を原因別にみると、他社倒産の余波が6件(構成比60.0%)を占めた。次いで、販売不振が2件(同20.0%)、運転資金の欠乏、既往のしわ寄せがそれぞれ1件(同10.0%)だった。
負債額別では、1億円以上5億円未満が6件(前年同期比500.0%増、前年同期1件)、10億円以上が4件(前年同期ゼロ)で、大型化の傾向がうかがえる。
地区別では、東北(前年同期ゼロ)、中国(同1件)、九州(同2件)が各3件で最多だった。次いで、中部が1件(同ゼロ)で、北海道(同ゼロ)、関東(同ゼロ)、北陸(同ゼロ)、近畿(同ゼロ)、四国(同ゼロ)は倒産がなかった。
形態別は、グループ11社が同時に破綻したファーマーズホールディングス(株)の影響で、民事再生法が7件(前年同期ゼロ)で70.0%を占めた。破産は3件(前年同期比50.0%増)だった。
従業員数別は、20人以上50人未満が4件(前年同期ゼロ)だった。10人以上20人未満(同ゼロ)、5人以上10人未満(同1件)、5人未満(同2件)が各2件だった。
農林水産省が今年7月に発表した「最近の牛乳乳製品をめぐる情勢について」では、2023年度の牛乳等の1人当たり消費量は24.8リットル(前年度比1.7%減)と2年連続で減少した。牛乳の消費量は、近年横ばいが続くが、牛乳が値上げされると食卓への影響は大きい。生活必需品といえるだけに、持続可能な価格と品質を探る展開が続きそうだ。
※ 本調査は、日本産業分類(細分類)の「酪農業」を抽出し、2006年から2025年7月までの倒産を集計、分析した。