市場拡大が続く「ドローン業界」、約3割が赤字 投資や研究開発の負担重く、生き残りに課題も
2024年「ドローン業界」業績動向・倒産休廃業調査
政府はドローン(小型無人航空機)の利活用の促進に向け、環境整備を進めている。国内ドローン市場は年々拡大しているが、主要企業は先行投資で収益確保に苦慮していることがわかった。
東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約440万社)から、ドローン機体メーカーや関連サービス業など、ドローン業界の主な431社を抽出し、分析した。
主要431社の2024年の売上高は2,700億円(前年比7.2%増)と伸びているが、利益(最終利益)は先行投資や研究開発費の負担から、13億円の赤字だった。新興市場だけに研究開発や投資が先行し、赤字企業は年々増えて3割(30.3%)という厳しい現実を浮き彫りにしている。
主要431社の売上高は、2022年が2,336億円、2023年が2,517億円(前年比7.7%増)、2024年が2,700億円(同7.2%増)と、順調に拡大している。だが、利益は2022年が▲6億円、2023年が▲17億円、2024年が▲13億円と業界全体では赤字が続いている。2024年は黒字企業が69.6%、赤字企業が30.3%の構成比で、一部大手が投資や研究開発費などで多額の赤字を計上し、これに引きずられた格好となった。
ドローン業界は、新たに設立された法人は2021年から毎年200件台で推移し、事業譲渡やM&A(合併・買収)などの動きも出ている。大手商社などが出資していた(株)ナイルワークスは5月27日、農業用ドローン事業の開発リソースを(株)NTT e-Drone Technologyに譲渡することを明らかにした。ナイルワークスは2025年9月以降、解散・清算手続きを行う。一方、大手は積極的なM&A戦略を掲げる企業もあり、ドローン市場はシェア競争が激化している。
※ 東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、ドローン業界(機体メーカー、関連サービス等)を対象に、2024年の業績(2024年1月~2024年12月期)を最新期とし、3期連続で業績が判明した431社を抽出、分析した。
ドローン業界の主要431社 売上高は3年連続で増加
ドローン業界の主要431社の売上高は、2022年が2,336億8,100万円、2023年が2,517億3,700万円(前年比7.7%増)、2024年が2,700億100万円(同7.2%増)と、伸長している。
一方、利益は2024年は13億5,200万円の赤字だった。赤字企業は、2022年は108社(構成比25.0%)、2023年は116社(同26.9%)、2024年は131社(同30.3%)と年々増えている。
先行投資や研究開発などの負担が重く、一部企業の赤字が全体を押し下げたことも影響している。ただ、新興企業は売上に直結しないコスト先行もあり、新しい市場への参入に苦戦している企業も少なくない。
売上高別 1億円未満が181社
売上高別では、1億円未満が181社(構成比42.0%)で最多だった。次いで、1億以上5億円未満が157社(同36.4%)、10億円以上50億円未満が46社(同10.6%)、5億円以上10億円未満が40社(同9.2%)と続く。
売上高最大は(株)ドローンネットの446億1,800万円。
休廃業・解散、倒産は2023年がピーク
2024年のドローン関連事業の休廃業・解散は16件(前年比57.8%減)、倒産は4件(同20.0%減)で合計20件(同53.4%減)が市場から撤退した。
休廃業・解散は、直近10年間で2023年の38件、2022年の25件に次いで3番目、倒産は2023年の5件に次いで2番目の高い水準となった。
一方、2024年の新設法人数は229社(前年比13.5%減)となった。しかし、2021年から4年連続で200社台で推移している。
東京オリンピックや大阪万博など大規模なセレモニーで、ドローンによる夜間ショーが話題になった。ドローンは、狭所作業やインフラ設備の点検から農業の作物管理、過疎地の高齢者支援など、様々なシーンでの活用が想定されている。だが、その一方で、経済安全保障やセキュリティへの配慮は避けて通れない。
業界大手はドローンを「空飛ぶクルマ」として活用する計画を打ち出し、2022年12月から無人航空機の新制度が始まり、有人地帯(第三者上空)での補助者なし、目視外飛行(レベル4)も可能になった。
ドローンの有益性と市場性に着目し、ドローン市場は今後も拡大が見込まれるが、市場に新規参入しても、先行投資や開発費の負担から赤字が続く現実がある。
このため、ドローン市場は当面、成長企業と淘汰企業、そしてM&Aや合従連衡などが混在する時期が続くと思われる。