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長渕剛さんの個人事務所、イベント会社に破産申立

2億円超が未払い

 歌手の長渕剛さんが代表を務める(株)オフィスレン(TSRコード:295731311、渋谷区)が、イベント運営を委託していた会社を相手取り、東京地裁に破産を申し立てたことが東京商工リサーチ(TSR)の取材で判明した。
 関係者によると、イベント会社はオフィスレンへの債務2億円超が未払いになっているという。
 申立代理人の一人である加藤博太郎弁護士(加藤・轟木法律事務所)はTSRの取材に対して、「債務者(イベント会社)は、ツアー代金の大半とファンクラブの売上を自己のものとして支払わない。債権者(長渕氏)としては、債務者が横領に及んだものと考えており、断固たる法的措置を講じていく」と語った。

長渕剛さん(本人提供)

長渕剛さん(本人提供)


イベント代金やファンクラブ会費が未払い

 破産を申し立てられたのは、ダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都港区、以下ダイヤモンドG)だ。ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売、芸能人のブログ・ファンクラブの運営などを手がけている。
 2024年6月から2025年10月に開催されるツアーイベントの企画運営やグッズ製作、プロモーションなどの契約について、オフィスレンとダイヤモンドGは2023年5月に締結している。

 ツアーイベントは「TSUYOSHI NAGABUCHI ARENA TOUR 2024 “BLOOD”」として予定通り開催された。しかし、契約に基づくツアー分配金の約2億円とファンクラブ会費の約2,500万円など合計約2億6,000万円が未払いになっているという。
 これまでも強制執行手続きなどで支払いを求めたが、ダイヤモンドGから支払われることはなかったため、「支払不能の状態にあることは明らかである」(関係資料より)として、破産申し立てに至った。

 8月5日正午前、ダイヤモンドGの事務所を訪問すると、入居フロアでは退去に向けた作業中だった。従業員はTSRの取材に、「今後テレワークに移行する」と明かした。
 複数回に渡ってダイヤモンドGの代表に今回の騒動について取材を申し込んだが、期日までに回答はなかった。
 今後、東京地裁はダイヤモンドGに破産の原因があるかを調査し、破産開始決定を出すか判断する。

ダイヤモンドグループのロゴ

ダイヤモンドグループのロゴ


TSRの取材に、長渕さんは以下のコメントを寄せた。

 私は47年Live一途に生きてきたと言えよう。
 たくさんの先輩方にお世話になりここまできた。
 現在興行は細分化され『興行師』から『イベンター』へと名称が変わった。
 本来はアーティストとイベンターが一枚岩になり全国に伝えるべきそのアーティストの作品や思想が主眼である事が道理だ。
 しかし、共闘し日本に音楽をしっかり届けて行こう!と言う考え方から大きく本質がズレてしまったと私は強く思う。
 私はそれでもLiveを続行している。
 その中でも絶対に許してはならないイベンターが今回存在した。
 ダイヤモンドグループという会社だ。
 制作会社と名乗り実態は惨憺たるものだった。

 チケット売り上げを懐に入れ違う目的の為にそれを無断で使用しさらに約束の期日過ぎても嘘を並べたて返さない会社。
 聖なる音楽の領域の中に一つも音楽の事、アーティストの事を理解もせず、偽物が存在する!ってことをきちんと表明しなければ。
 次の犠牲者が必ず出る。
 そう強く私は感じた。
 会社と代表者個人の債権者破産手続を取ることにした。
 音楽は力を持っている。
 アーティストが苦しみ楽曲を書き、人々の耳からはいり心に届く。
 間に関与する不純な輩にまんまとやられるわけにはいかないのだ。
 だからここに表明する。

コメントを寄せた長渕さん(本人提供)
コメントを寄せた長渕さん(本人提供)



 加藤弁護士は、「債務者の未払い額、使途不明金が2億円を超え、多額に及ぶ。本件の債権者破産によって、債務者のカネの流れを追及していきたい」と破産手続きでの解明に期待をかける。今後は、刑事告訴も視野に入れているという。
 今回の破産申し立ては、芸能界の闇にメスを入れる契機になるかも知れない。



(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年8月7日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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