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「市場退出率」は10年連続で情報通信業がワースト 産業全体の市場退出率は過去10年間で1.6倍に増加

~2024年「退出法人(倒産+休廃業・解散)」動向調査~


 2024年に「倒産」、「休廃業・解散」で市場から退出した普通法人(以下、退出法人)は、6万1,613社(前年比27.1%増)で、2015年以降の10年間では最多を更新した。
 退出率(普通法人全体に占める退出法人の割合)は2.06%で、前年の1.65%から0.41ポイント上昇し、過去最大の増加率となった。普通法人数は298万2,191社(前年比2.0%増)に増えたが、倒産が8,579件(同14.5%増)、休廃業・解散が5万3,034件(同29.4%増)と大幅に増え、退出率を押し上げた。
 産業別の退出率トップは、情報通信業の4.52%。次いで、金融・保険業2.97%、卸売業2.93%の順。

 「2024年版中小企業白書」(中小企業庁)によると、2023年度全業種の「廃業率」は3.9%で、前年の3.3%から上昇した。これは「雇用保険事業年報」を基に事業所単位で集計しているが、本調査は「倒産」と「休廃業・解散」を企業単位で集計しており算出基準が異なる。
 2015年の退出法人数を基準(指数=100)にした2024年の退出法人指数は165.1で、前年(129.8)から35.3ポイント上昇した。産業別で最大の退出指数は、退出率トップの情報通信業で218.8。次いで、サービス業他の202.1、金融・保険業の196.3が続いた。
 2024年は退出率、退出指数ともに過去10年で最高を更新した。原材料価格や光熱費、人件費などの上昇に加え、代表者の高齢化や人手不足などの経営課題が複合的に絡み合い、退出企業数を押し上げた。今後も、借入金利の上昇やトランプ関税などの影響が顕在化し、退出企業数の高止まりが続く可能性は高い。


※本調査は、東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベースから、「倒産(再建型を除く)」、「休廃業・解散」が判明した普通法人を抽出し、普通法人企業の「退出件数(倒産+休廃業・解散件数)」を集計・分析した。
※普通法人数は、国税庁「税務統計」から年度数値を抽出し、各対象年の退出率の分母とした。
※休廃業・解散件数は、2024年に取材方法を一部改定し、公告情報をトリガーとした解散判定の精緻を高めた。


2024年の退出法人数は6万1,613社 退出率は2.06% 

 2024年の普通法人の退出法人数(倒産+休廃業・解散件数)は、6万1,613社(前年比27.1%増)と3年連続で増加し、2015年以降の最多を更新した。
 内訳は、倒産が8,579件(同14.5%増)、休廃業・解散が5万3,034件(同29.4%増)だった。特に、休廃業・解散は2年ぶりに減少した前年から一転し、約3割増と大幅に増えた。解散判定の精緻が高まった集計上の側面もあるが、コロナ禍の手厚い支援が終了し、事業継続の再考が促されたことや、代表者の高齢化などが背景にある。また、倒産も2021年の5,082件を底に3年連続で増加し、退出法人数を押し上げた。
 2024年の退出率は2.06%で前年から0.41ポイント上昇した。集計を開始した2013年以降で初めて2%台に乗せ、最高を更新した。


退出法人数と退出率の推移

産業別退出率 情報通信業が4%超で突出

 2024年の産業別の退出率(普通法人全体に占める退出法人の割合)は、最高が情報通信業の4.52%(前年3.46%)で、集計可能な2013年以降で初めて4%を超えた。情報通信業は、小資本でも創業可能なソフトウェア開発などを中心に、新規参入が多く競合相手は多い。さらに、下請けも多い産業構造から価格転嫁が進まない小・零細企業も多数見られる。コロナ禍以降、DX化の推進で市場は拡大しているが、市場ニーズや技術の変遷に対応できず、クライアント獲得に敗れた企業の淘汰が進んだ。
 次いで、小規模の保険代理業者などの退出が続く金融・保険業が2.97%(同2.61%)、仕入れコストの上昇などで収益を圧迫されている卸売業が2.93%(同2.09%)と続いた。
 前年からの上昇幅は、退出率が最大の情報通信業が1.06ポイント増で最大だった。次いで、卸売業が0.84ポイント増、製造業が0.63ポイント増で続き、全体上昇幅の0.41ポイント増を超えたのは3産業だった。


産業別 法人退出率

産業別退出指数 2024年は情報通信業が218.8で最高

 2015年を基準年(指数=100)とし、退出法人数の推移を指数化した。
 全産業の2024年の退出指数は165.1で、前年から35.3ポイント上昇した。過去10年では、2023年の129.8を上回り、2015年以降で最高になった。
 産業別の最大の退出指数は、情報通信業の218.8で、前年から57.7ポイント上昇した。
 次いで、普通法人数と退出法人数が突出し、入れ替わりが激しいサービス業他が202.1、NISAなどで活発化する金融商品取引業、小規模の保険代理業などで新規参入、退出数が多い金融・保険業が196.3で続く。上位3産業の顔ぶれは3年連続で変わらなかった。
 一方、退出指数が最も低かったのは建設業の129.6だった。建設業は、退出法人数がサービス業他に次いで多いが、震災復興需要や低金利政策による民間建設投資の活発化などで、他産業に比べ退出法人数の増加が抑制された。ただ、深刻化する人手不足、材料費や人件費の高騰などで、足元の退出法人数は大きく増加しており、退出指数は今後伸びが加速する可能性もある。
 前年と比較した指数の上昇幅では、最も大きく伸びたのは退出指数が最大の情報通信業で57.7ポイント増。次いで、不動産業が46.4ポイント増、卸売業が43.1ポイント増、サービス業他が40.8ポイント増で続く。


産業別 法人企業退出指数




 2025年上半期(1-6月)の倒産(負債1千万円以上)は4,990件(前年同期比1.1%増)で、伸び率は鈍化したものの2021年を底に4年連続で前年同期を上回った。特に、上半期の「人手不足」倒産は、調査を開始した2013年以降で最多の172件(前年同期比17.8%増)に達し、深刻化が際立つ。経済活動再開の本格化で人材獲得競争が激化した結果、大手企業と中小企業の賃金格差が拡大し、中小・零細企業で人材確保が困難になっている。
 また、トランプ関税の影響も今後顕在化していく見込みだ。製造業を中心に先行きの見通しが立たない企業も見られ、今後退出企業がさらに増加し、退出率の上昇が続く恐れもある。

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