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「訪日観光客4000万人の目標にこだわるな!」星野リゾート・星野佳路代表 独占インタビュー(前編)

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公開日付:2020.02.27

 2019年の訪日外国人客数は3188万2100人(前年比2.2%増、日本政府観光局調べ)で、2年連続で3000万人の大台に乗せた。政府が掲げる「2020年に4000万人」の目標を前に、19年下期以降は日韓関係や米イランの外交問題、中国・湖北省を発生源とする新型コロナウイルスの影響などが重なり、先行きには暗雲も垂れ込めている。
 だが、今年は56年ぶりの東京オリンピック(五輪)・パラリンピックを控え、外国人旅行者の歓迎ムードは高まっている。
 東京商工リサーチは、斬新なアイデアを次々に打ち出し、日本のリゾート観光を牽引する「星野リゾート」の星野佳路代表に、国内市場の動向や五輪後の展望を聞いた。


年明け以降、新型コロナウイルスが猛威を振るっている

 新型ウイルスは、一部の施設をのぞいて全般的にホテルの稼働にはまだ影響は出ていない。当社の多くの施設は、個人客をターゲットにした50~100室程度で、大規模グループを受け入れるような大型施設が少ない。なので、中国からの予約比率は小さく、当社全体の(予約)ペースは変わらず推移している。宿泊客の日本人比率が高く、海外からのお客様の国籍を分散させていることも影響が少ない要因だろう。もちろん、グループ内でキャンセルが発生した施設はあったが、全体での比率は非常に小さかった。
 また、欧米からの比率が他の競合に比べて高い。今後も(星野リゾート)グループにはあまり大きな影響は出ないとみている。

昨年からの日韓情勢による影響は?

 韓国からの集客は星野リゾート全体の中で10%弱程度だが、動向を注視していることの一つだ。グループ内では、青森の施設が一番韓国から来客がある。一時期は、来客数を落としたものの、2019年10月、11月ごろには元の水準に戻した。韓国はリピーターがとても多く、そのお客様たちに根強く支えてもらっていることが大きい。

海外からの集客を分散させる理由は?

 インバウンドで集客するメリットは、リゾート型にはいくつかあり、一つはリスク分散だ。一つの国に頼ることは、大きなリスクがある。安定して集客するためには、欧米集中型が良い。欧米の比率を高めると自然にアジアも高まってくる。アジアの人たちは、行くべき旅行情報を欧米の発信源から得ているからだ。欧米からの集客環境を整えることで、アジア各地にも同様の情報が行き渡り、アジアの人たちにとっても、その地域や施設が魅力的に映る。

ほかには

 各国の「休みのズレ」を集客に利用できることだ。例えば、トマム(北海道東部)だと12月はクリスマス休暇で来るお客様で賑わう。年末年始は日本人観光客。日本の休みが終わるとオーストラリアが夏休みに入る。オーストラリアのお客様が帰る頃に、中国の旧正月がやって来る。タイは4月に大型連休があり、4月の稼働を埋めてくれる大事なマーケットだ。
 現在、トマムの場合は800室あるが、12月の中旬から2月末までほとんど100%フル稼働となっている。それができている理由は、トマムが人気のある場所ということだけではなく、様々な国から分散して集客をしているからだ。当社が(カントリーリスクを)分散する理由は、政治的関係が悪化したり、今回のコロナウイルスのように、突発的に観光客が来られなくなったケースもあるなかで、(宿泊客の)休みの平準化が自ずとできるためだ。それによりホテルの稼働も平準化できる利点がある。(観光客を)呼びやすいからと言って、お客様の対象をどこかの国に限定、集中させることは危険だ。これは、日本の観光全体でも同じことが言える。

具体的には

 過去に、地方空港でいきなり上海に直行便を出して、お客様を呼び込もうという流れがあった。これは大変リスクのあることで、本来やるべきことではない。
 そもそも、とりあえず(訪日観光客を)年間4000万人呼ぶという目標だけ出して、「(集客は)どこからでもいいんだ」というやり方は、危ない政策だと言える。
 日本の観光が目標とすべき政策は、人数だけではなく、お客様一人当たりの消費金額や、満足度も見るべきで、リピート率も重要。現状の「とにかく何千万人」という段階から、「欧米からは何人」「東南アジアからは何人」「中国はこのくらい」というように国別のマーケティング戦略を本来描く必要がある。

国の戦略が「甘い」ということか

 甘いというより、“何を目指しているのか”明確にできていないことに問題がある。短期的な訪日観光客の数を増やすことは、短期的には国内経済にプラスになる。“デフレ脱却”のために、目先の経済を良くしたいという場合には、観光客数さえ増えればいいのかもしれない。だが、ここで必要なのは“中長期的に持続可能な”観光の成長だ。

取材に応じる星野代表(TSR撮影)

取材に応じる星野代表(TSR撮影)

短期的な訪日観光客の増加リスクとは

 お客様の満足度やリピート率を考慮しない観光施策をとると、急速に(観光客数が)増えても、いずれ飽きられて一過性のブームで終わってしまう。長期的に持続可能な観光のあり方を考えたとき、集客地域は安定化させた方がプラスになるし、そのためには当然、集客における地域の分散が必要だ。
 観光産業はサービス業だから、サービス業の生産性という意味では、“年間平準化”が欠かせない。繁忙・閑散期を平準化するためにも、様々な国を戦略的に呼び込む機運を高めるべきだ。

短期的な訪日観光客の増加リスクとは

 お客様の満足度やリピート率を考慮しない観光施策をとると、急速に(観光客数が)増えても、いずれ飽きられて一過性のブームで終わってしまう。長期的に持続可能な観光のあり方を考えたとき、集客地域は安定化させた方がプラスになるし、そのためには当然、集客における地域の分散が必要だ。
 観光産業はサービス業だから、サービス業の生産性という意味では、“年間平準化”が欠かせない。繁忙・閑散期を平準化するためにも、様々な国を戦略的に呼び込む機運を高めるべきだ。

国の政策もいつかシフトチェンジしないとならない

 現在のインバウンド政策で、とりあえず成果は出ている。いま、3000万人が日本を訪れるまでになった。だが、(シフトチェンジの時は)必ずくるだろう。人数ではもう成功だ。ここから先は、目標のあり方を変えるべきだと思っている。今まで悪くはなかったが、このままの成長のペースを続けると、どこかで破綻すると考えている。それは、ブームが終わるとか、日本観光の満足度が落ちるとか、昨今話題の観光客による住民への迷惑行為の問題もあるだろう。
 これからは“数だけをみる時代”から、“消費額をみる”時代とすべきだ。そもそも4000万人という目標自体が高すぎる。もし、これが到達しないからといって、目標未達というのは違うと思う。“この数で十分だ”。また、“何千万人来てくれた”ではなく、“何泊してくれた”という、滞在期間の尺度も必要だ。リピート率もいずれ問題になる。

五輪後の国内の景況感をどう予測するか

 私は1991年のバブル崩壊とともに、(自社の)リゾートの運営に携わった。当時に比べたらはるかに良い状態だ。海外からの観光客が増えているだけでなく、国内を旅行してくれる人が増えていて国内需要も高い。景況感的に問題があるとは感じていない。ただ、東京五輪までのインバウンドや観光の成長が話題になっていたので、(ホテルの)供給量も増えている。このため、需要減少の心配よりも、一部の市場で供給過剰となる問題がある。それは東京、大阪などの大都市で顕著だ。(ホテルの部屋の)需要も伸びているが、それ以上に供給が増えている。

どのようなホテルの供給過多を危惧しているのか

 “リミテッドサービス”と呼ばれるサービスを限定しているような施設、また、部屋だけを貸すような、ビジネスホテルのような形態の施設だろう。良いレストランを伴った複雑なサービスを提供するホテルは運営が難しく、簡単に供給を増やせない。宴会サービス、レストランを含めた“滞在を演出する”ホテルは、運営自体の難易度が高いので、「需要が増えているぞ。今が出店だ!」といっても簡単には造れない。一方で、フロントと部屋と朝食を食べるスペースしかないというホテルは“造りやすい”。造りやすいために、一気に供給過多になる。その結果、パフォーマンスが悪くなるホテルは出てくる。

2020年にはそういう流れがくるか

 すでにそういう流れは大都市圏で昨年から始まっている。ただ、供給過多になることで一時的にあらゆる問題が顕在化するものの、それは、都市にとっては悪いことではない。ホテル産業が成長する都市というのは、供給過多と需要過多を繰り返して成長する。供給過多というのは、古いものを淘汰する“良いチャンス”でもある。
 古いサービスがなくなって、新しいもの、良いものがでてくる。すると供給過多になる、古いものがなくなると、また、需要が追い付いてくる。こういうことが繰り返される。供給過多と需要過多が繰り返すという都市はポテンシャルがある。ポテンシャルがない都市では供給過多にもならなければ、需要過多にもならないところが多い。需要が増え、供給が増えるということは、それは“良いところ”だと投資家たちが認識している。
 一時的に供給過多になって、思ったほどパフォーマンスが上がらなくなるかもしれないが、上がらなくなるとみんな頑張って新しい魅力を作ったり、コンテンツを作ったり、工夫を凝らすようになる。するとまた需要が追い付いてくる。タイムラグはあるが、東京と大阪は強い都市で、一時的な供給過多を乗り越えていく文化・コンテンツ・パワーがあると思っている。アジアの中でも圧倒的に強い。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年2月26日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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