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『生成AI』 活用は企業の25%にとどまる  「業務効率化」が9割超、専門人材不足がネック

~2025年「生成AIに関するアンケート」調査~

 幅広いビジネスシーンで注目される生成AIだが、その活用を推進している企業は25.2%(6,645社中、1,679社)にとどまることがわかった。一方、半数の50.9%(同3,388社)は、生成AIに対する方針を決めていない。AI活用の推進は、大企業43.3%(597社中、259社)、中小企業23.4%(6,048社中、1,420社)で、積極的に活用に取り組む大企業と、導入に逡巡する中小企業の違いも浮き彫りになった。
 産業別では、生成AIの活用を推進している割合が最も高かったのは、情報通信業の56.7%(444社中、252社)、最も低かったのは農・林・漁・鉱業の13.7%(51社中、7社)で、43.0ポイントの差が開いた。企業規模、産業ごとに生成AIの導入への姿勢に差が出た格好だ。

 東京商工リサーチ(TSR)は、「生成AI」に関する企業向けアンケート調査を実施した。生成AIツールの活用推進の理由は、業務効率の向上が93.9%(1,670社中、1,569社)で9割を超えた。
 生成AIの活用を推進しない理由は、「推進するための専門人材がいない」が55.1%(4,358社中、2,403社)で最も多かった。次いで、「活用する利点、欠点を評価できない」が43.8%(同1,912社)と続く。専門人材の不足や効果測定の難しさから、導入に足踏みしている企業も多い。
 生成AIは、業務効率化や事務作業の自動化、データ分析の高度化、人為ミスの削減など、幅広い効果を期待できる。だが、業務での活用には情報漏えい、著作権侵害などの危険性もはらんでいる。AI活用は、明確な方向性と社会的なルール作りが求められる段階にきている。
※ 本調査は、2025年7月30日~8月6日、企業を対象にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答6,645社を集計、分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。


Q1.貴社では、生成AIツールの業務活用を推進していますか?(択一回答)

 「方針は決めていない」が50.9%で最多 
 生成AIツールの業務活用を推進しているか聞いた。6,645社から回答を得た。最多は「方針は決めていない」の50.9%(6,645社中、3,388社)だった。次いで、「個人で活用していることもある」の22.3%(同1,482社)、「部門によっては活用を推進している」の11.4%(同760社)と続く。
 規模別では、大企業は「会社として活用を推進している」が25.2%(597社中、151社)、中小企業が12.7%(6,048社中、768社)で、大企業が中小企業を12.5ポイント上回った。一方、「方針は決めていない」は中小企業が52.4%(同3,170社)、大企業が36.5%(同218社)で、中小企業が大企業を15.9ポイント上回り、企業規模で生成AIの活用への積極性に差が出た。


Q2. 活用を推進する理由は何ですか?(複数回答)

「業務効率の向上」が9割超
 Q1で「会社として活用を推進している」、「部門によっては活用を推進している」と回答した企業のうち、1,670社から回答を得た。
 推進理由の最多は、「業務効率の向上」の93.9%(1,670社中、1,569社)だった。
 次いで、「データ分析の高度化」が50.0%(同835社)、「人手不足への対応」が46.1%(同771社)と続いた。
 規模別では、最も差が顕著だったのは、「データ分析の高度化」で大企業が58.3%(259社中、151社)、中小企業が48.4%(1,411社中、684社)で9.9ポイントの差がついた。



Q3. 会社として生成AIの活用を推進していない理由は何ですか?(複数回答)

 「推進する専門人材がいない」が5割超す
 生成AIの活用を推進していない理由を聞いた。
 最多は、「推進するための専門人材がいない」で55.1%(4,358社中、2,403社)と半数を超えた。次いで、「活用する利点、欠点を評価できない」が43.8%(同1,912社)、「コストがかかる」が23.2%(同1,012社)。
 一方、「同業他社が活用していない」は7.1%(同311社)で最も少なかった。
 規模別では、大企業では「情報漏えいの危険性が拭えない」が32.6%(297社中、97社)、中小企業が21.4%(4,061社中、873社)で11.2ポイントの差がついた。

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