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未払い賃金立替制度、支給者が10年ぶりに3万人超え

 物価高や人手不足が深刻さを増すなか、企業倒産が11年ぶりに1万件を上回った。これに比例するように、勤務先の倒産などで全ての賃金を受け取れないまま退職に追い込まれた労働者の未払い賃金を立替える「未払賃金立替制度」の支給者数が、2024年度は10年ぶりに3万人を超えた。
 2024年度に制度が適用された企業は全国で2,623件だった。東京商工リサーチが集計した同年度の倒産企業数(1万144件)と比較すると、4社に1社(25.8%)を占める。支払われた金額は110億4,600万円だった。

倒産件数と立替制度の年度推移

制度利用には規定も

 「未払賃金立替払制度」は、独立行政法人労働者健康安全機構が所管している。立替払いの要件は、労災保険の適用事業者で1年以上事業を継続し、倒産(事実上含む)で賃金が支払われない場合だ。

 「倒産」は、破産や特別清算、民事再生、会社更生で、破産管財人などが立替払請求を申請する。「事実上の倒産」は、中小企業が対象で事業活動が停止し、再開見込みがなく、賃金の支払い能力もない企業を指す。
 立替払いを受けることができるのは、倒産(事実上含む)の認定日の6カ月前までに退職した労働者が対象だ。そのため、退職しても立替払制度の認定が遅れると対象外のケースがあり、注意が必要だ。

 関係者は「当該法人で1年以上の事業実態がなくても、新設分割などをしている場合は、分割前の法人の事業歴を合算できることもある。また、従業員数などで外形的に中小企業の定義を満たしていなくても資本金額などで認定できるケースがある」と適用範囲に注意を呼びかける。
 機構がまとめた実施状況によると、2024年度の「未払賃金立替払事業」の支給数は10年ぶりに3万人を超える3万591人に達した。企業数も2,623社と過去10年で最多を更新し、立替払額は110億4,600万円で前年度から28.1%増えた。支給者数は、2014年度の3万546人をピークに年々減少をたどり、コロナ禍の2021年度は各種支援策などで倒産が急減したため、支給者数は9,560人と1万人を割り込んだ。その後、支援策の縮減や物価高、人手不足などで倒産が増勢に向かうと支給者数も増加している。



 万が一のセーフティネットで、働く人にとって重要な役割を担う「未払賃金立替制度」。 
 倒産は、しばらく中堅企業を巻き込みながら増勢が見込まれる。資金繰りに行き詰まった企業がなりふり構わず事業継続に進むと、賃金を受け取れない労働者が増える可能性もある。企業の引き際も問われている。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年8月6日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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