堀正工業(株)(TSR企業コード:291038832、法人番号:9010401027715、品川区西五反田1-23-9、登記上:港区西新橋1-10-7、設立1948(昭和23)年9月、資本金2000万円)は再度の資金ショートを起こし6月23日、行き詰まりを表面化した。
6月5日までに債務整理を大野了一弁護士(虎ノ門南法律事務所、港区虎ノ門1-15-12)に一任している。
負債総額は350億円。
1933年創業の老舗ベアリング専門商社。大手ベアリングメーカーNTN(株)(TSR企業コード:570384370、法人番号:3120001048981、大阪市西区)の代理店として同社製品を中心に取り扱い、国内メーカーなどに営業基盤を築いていた。都内の製品センターや関西、相模原、北関東に営業所を構えるほか、中国や香港に現地法人を開設するなど意欲的に事業拡大を進め、2012年9月期に約48億円だった売上高は2021年9月期には63億1100万円を計上。また、この間の最終利益は毎期3億円前後を計上し、好調な業績を公表していた。2022年9月期もコロナ禍の影響も少なく、売上高は過去最高を更新する68億600万円に達し、原価高騰分には価格転嫁を通じて対応したとされ、最終利益は約4億7700万円を計上していた。
ところが、2023年4月以降、借入金の金額や相手先などをめぐって決算を大幅に粉飾していたことが発覚。金融機関ごとに異なる複数の決算書の存在などが明らかになったことで、信用が一気に低下した。数行取引のはずが、実際は約50行から約325億円の融資を得ていた可能性が高まり、6月に入って各取引金融機関が当社に対して状況説明を求めるなどしていたなか、決済が不調に終わり今回の事態となった。
(株)TMD(旧:宝田無線電機(株)、TSR企業コード:291075258、法人番号:8010001022051、千代田区外神田1-14-7、登記上:千代田区丸の内1-7-12、設立1961(昭和36)年6月、資本金6000万円)は6月5日、東京地裁より特別清算開始決定を受けた。
負債総額は73億9100万円。
東京家庭電器(株)の商号で設立。1969年10月、宝田無線電機(株)へ変更した。外国人観光客向けの家電販売や鉄くず・コークスの輸出、テナントビルの賃貸などを展開し、1980年代には30億円台の年間売上高をあげていたが、バブル崩壊後は減収基調で推移し、1998年5月期以降は年間売上高が20億円を割り込んでいた。
こうしたなか、2015年5月期には中国人訪日客向けに金加工品の免税販売を開始したことで業績が急伸し、同期の売上高は37億644万円に回復。2017年5月期には売上高が1092億7448万円まで拡大した。しかし、2017年8月に東京国税局より、仕入先との間で金加工品を循環取引し、訪日外国人客に対する販売の実態がないにもかかわらず約70億円の消費税を不正に還付申告したとして、重加算税を含めて約100億円の追徴課税を受けた。
以降は対外信用が失墜し、本社不動産も差押を受けるなど業況が急速に悪化。金加工品などの免税販売からも事実上の撤退を余儀なくされ、2018年5月期の売上高は7億1530万円まで急減した。その後も業容の縮小が続き、近年は不動産賃貸業にシフトしていた。
2023年2月27日には現商号に変更し同日、株主総会の決議により解散し、今回の措置となった。
(株)佐藤長(TSR企業コード:180059963、法人番号:2420001009145、弘前市桔梗野4-9-2、登記上:弘前市松森町93、設立1984(昭和59)年2月、資本金2000万円)は6月26日、青森地裁弘前支部に民事再生法の適用を申請し同日、監督命令を受けた。
申請代理人は齋藤拓生弁護士(つばさ法律事務所、宮城県仙台市青葉区片平1-1-11)ほか3名。
監督委員には三上雅通弁護士(三上雅通法律事務所、弘前市元長町25)が選任された。
負債総額は63億4700万円。
1897年9月に佐藤商店として豆腐製造販売を目的に創業。1978年頃にスーパーマーケット業態に転換して以降は、地域密着型の庶民派スーパーとして根強い固定ファンを獲得し、2019年8月期には売上高149億5267万円をあげた。自社店舗に加え、商業施設内のテナントとしても出店するほか、業務委託や買収も行い業容を拡大し、2022年8月期末時点では「スーパーさとちょう」28店舗、鮮魚店「魚三」12店舗を展開していた。
しかし、相次ぐ設備投資により金融債務が膨らみ、他人資本に依存した体質に陥っていたうえ、2022年11月4日に当時の代表であった齋藤春仁氏が突然退任。同年11月15日には無許可で労働者を受け入れていたとして、職業安定法違反の容疑で同氏が逮捕された。当事件を巡っては指定暴力団組員の関与も取り沙汰されたことから信用が失墜し、金融機関からの新規融資も厳しい状況となっていた。
立て直しを図るため、創業家一族の佐藤譲氏が代表に就任し、事実関係の調査ならびに再発防止、取引先への事情説明を行ったほか、第三者による特別調査委員会が組織的な関与の有無を調査し、2023年5月には反社会的勢力との関係はないとの結果が得られた。
その後はフードロス対策店舗「エコさとちょう」を出店するなど売上拡大に努め、金融機関との協議も進めてきたが、経営環境は厳しく資金繰りも限界に達し、自力での再建が困難なことから今回の措置となった。
(株)原武商店(TSR企業コード:870043412、法人番号:8290001049439、久留米市荒木町荒木字西の原928、設立1956(昭和31)年5月、資本金1000万円)は6月1日、福岡地裁に破産を申請した。
申請代理人は高松康祐弁護士(弁護士法人みらい法律事務所、福岡市中央区警固1-12-11)ほか1名。
負債総額は51億6800万円。
1921年5月に創業した老舗の酒類販売会社。九州地区を中心として酒類販売店に販路を築いていた。しかし、規制緩和や複合店の進出、酒類の低価格化、卸問屋の減少により業績は低迷。このため、2000年には酒小売店のFC化に着手し、以降はFC事業として「Re-Lax(リラックス)」の店名で多店舗展開を進め、2010年には113店まで増加していた。
この間、鷹正宗(株)(TSR企業コード:870017942、法人番号:1290001049123、久留米市)を買収し、グループとして酒造部門の創設と強化にも着手。また、大手コンビニチェーンのFCとしてコンビニ事業にも進出するなど事業を拡大し、2022年8月期には売上高約50億円を計上していた。
しかし、利益水準は低く、金融機関からの借入金に依存した資金繰りが続いていた。さらに、決算書に疑義が生じたため、2023年2月にはバンクミーティングが開催されるなど動向に注目が集まっていたなかで、今回の措置となった。
鷹正宗(株)(TSR企業コード:870017942、法人番号:1290001049123、久留米市小頭町8-12、設立1935(昭和10)年11月、資本金9000万円)は6月1日、福岡地裁に民事再生法の適用を申請した。
申請代理人は管納啓文弁護士(弁護士法人みらい法律事務所、福岡市中央区警固1-12-11)。
負債総額は36億8300万円。
天保年間創業の老舗酒蔵。「鷹正宗」のブランドで清酒の醸造を手掛け、高い知名度を有していた。清酒離れが進むなか、近年は低価格帯の焼酎製造にも注力。焼酎は麦焼酎を主体にパックの「めちゃうま」シリーズや、量り売りの「ごりょんさん」などを製造していた。
1988年8月には大手飲料メーカーが資本参加し、傘下入りしたが、2008年6月には(株)原武商店(TSR企業コード:870043412、法人番号:8290001049439、久留米市)が当社株式を取得して、代表取締役会長に原武商店社長の原武康弘氏が就任。以降は原武商店のグループ企業として新体制による業務を開始した。
酒類の小売・卸売を手掛ける原武商店との相乗効果により、グループ業績は拡大していたとされていたが、実際には業績不振に陥っていた模様で、2023年2月末には原武商店がバンクミーティングを開催。これを機に同社の粉飾決算が明るみとなり、動向が注目されていた。
こうしたなか、原武商店が2023年5月末までに事業を停止し、6月1日に福岡地裁へ破産を申請。これに連鎖する形で民事再生法を申請した。
(株)イタヤ(TSR企業コード:200012509、法人番号:2110001015372、南蒲原郡田上町田上丙416-3、登記上:同郡田上町田上丙910-1、設立1976(昭和51)年4月、資本金7350万円)は6月23日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し同日、監督命令を受けた。
申請代理人は福岡真之介弁護士ほか3名(西村あさひ法律事務所、東京都千代田区大手町1-1-20)。
監督委員には武田康弁護士(みずき総合法律事務所、東京都新宿区市谷八幡町13)が選任された。
負債は35億8500万円。
1946年4月に住宅資材販売を目的に創業。当初は木材販売のみだったが、自社工場でのプレカット加工も開始し、業容を拡大してきた。長岡支店や上越支店を開設するほか、2017年8月には群馬県前橋市に関東プレカット工場を開設し、関東地区への営業も強化。2017年12月期は81億2468万円の売上高を計上した。
しかし、積極的な設備投資により借入依存度が高まり、採算面も低調に推移していたうえ、市況低迷やコロナ禍の影響もあり、2020年12月期の売上高は72億4016万円に減少。2022年12月期は受注の回復や木材価格の高騰に伴う販売価格の引き上げ等で売上高が97億2959万円に伸長したが、特別損失として多額の投資有価証券運用評価損や過年度損益修正損を計上し、9億5343万円の赤字となった。これに伴い債務超過に陥り、自力での再建は困難との判断から、今回の措置となった。
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