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J・フロント・好本社長「アフターコロナは若い顧客、男性客をターゲットに」 J・フロントリテイリング・好本社長 単独インタビュー(前編)

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公開日付:2021.12.20

 新型コロナウイルス感染拡大で、営業自粛や時短営業を強いられた百貨店業界。テレワークの拡大、インバウンド需要の消失が直撃し、厳しい経営環境が続く。だが、ネット販売を柱にした「店舗でモノを売らない」ショールーム型の店舗開設など、アフターコロナを見据え、新たな「リアル×デジタル戦略」に取り組んでいる。  東京商工リサーチ(TSR)は、大丸松坂屋百貨店を傘下に持つJ・フロントリテイリング(株)(TSR企業コード:297152963、東証1部、以下Jフロント)の好本達也・代表執行役社長に単独インタビューし、アフターコロナの消費動向や今後の経営戦略を聞いた。

Jフロント好本社長前編

取材に応じる好本社長(12月、都内)

―10月の緊急事態宣言明けの消費動向は?

 間違いなく回復している。ただ、前年との比較だけでなく、前々年(2019年)、事業会社によっては前々々年(2018年)との比較をしなければならず、比較対象が難しい。前年はコロナ禍で年末にかけて厳しかったし、前々年は暖冬で冬物衣料が売れず、消費増税もあった。今は、そのリバウンド中だ。一方で、インバウンドが全てなくなっているが、その分の売上は当面戻らないと見ている。

―2018年は渋谷パルコの建て替えオープン前だ

 心斎橋の大丸も本館建て替え中だったので比較しにくい。目標とする数字に対してどうかという見方をしていくほかない。ただ、2019年をベースにすると、戻りきっているわけではない。

-コロナ禍がここまで長引くと考えていた?

 全く考えていなかった。ここまでくるとウィズコロナがどこまで続くのか、最悪のことを考えなければならない。旅行業のGo Toなど一時的な支援よりも、日本経済全体を回復基調に乗せるように、所得拡大や分配をしっかりやってもらいたい。

-コロナ禍では営業制限など百貨店が犠牲になる場面が多かった

 商業施設というと、デパートが最初に出てくる。(コロナ対策は)「やって当然」としてお金を使って安全対策をしてきた。ただ、残念ながら百貨店業界でもクラスターが発生した。業界での対策が評価されつつも、出てしまった。
 西日本の百貨店で感染者が出た時、各社に自治体や国が立入検査に来られたが、「(対策を)ここまでやっているのか」との評価をもらった。感染対策にやりすぎはない。当社としてもさらに徹底していく。

―何度も緊急事態宣言が発令された

 我々にとってみれば、緊急事態宣言と休業要請は全然違う。緊急事態宣言は4回出たが、休業要請は2回だった。休業要請が出ると日本の企業は応えざるを得ない。航空会社が(オミクロン株で)日本着の便を急遽止りやめたのと同様に、政府に言われたら止めざるを得ない。昨年は休むしかなかったが、今年は日用品は大丈夫ということで、食品や雑貨などは営業できた。ラグジュアリーブランドも一部店舗では予約販売という形で営業した。また、GINZA SIX(ギンザシックス) も営業できた。

-パルコがグループ入りし、10年が経つ

 大丸と松坂屋は百貨店なので、ターゲットや従業員、社風も似ている。企業のインテグレーションも片寄せする形でよかった。一方、パルコは業態も違えば、持っている強みも全然違う。片寄せするのではなく、パルコの強さを持ったまま、グループ全体にどういい効果をもたらしていくのかが大切だ。(大丸・松坂屋と)競合しているエリアも多いが、これは決してマイナスではない。心斎橋には大丸が2館あったが、そのうち1館をパルコにした。これは大変手応えがあった。ターゲットも違えばテナントも違う。そうした中に2つあってお互いに刺激しながらやることは、大丸・松坂屋・パルコにいい影響を及ぼし合っている。

―具体的な効果は

 パルコと大丸松坂屋の年齢層がはっきり違う。パルコは男性客が多い。これからは若い男性客が商業小売りにとって重要ターゲットとなる。若い人と男性に関しては、大丸松坂屋が単独でやるよりはるかにいい。心斎橋で2館とも百貨店だったら魅力に欠ける。
 パルコにはラグジュアリーも入れていて、渋谷パルコには高級ブランドのグッチやロエベなども入っている。ただ、百貨店に入っている店舗とは感じが違う。若い層を意識してファッション以外にポップアップ的なショップを中でやるようなイメージだ。

-若年層が高級品から離れているような見方もある

 百貨店の外商やカード顧客の年齢層は50~60歳代で、外商は70歳代の顧客が高額品を買うイメージがある。だが、時計やラグジュアリーブランドのトップブランド(ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネル)は20歳代を狙っている。そのためのデザイナー変更などを常にやっている。
 大丸では20~30歳代の富裕層を捕まえられなかったが、パルコでは、そうした顧客がメインだ。ギンザシックスは、20歳代が最も多い。ギンザシックスは、もともと30%がインバウンドの売上だった。コロナでインバウンド売上がなくなったが、若い顧客層の来店は継続している。食品や化粧品もあるが、ラグジュアリーモールなので、ラグジュアリー系商品がよく売れている。若い富裕層が日本にもたくさんいる。

―百貨店だと若い顧客は定着しにくい

 従来の外商の顧客をつかむのと同時に、若い顧客の呼び込みを考えないといけない。従来、ラグジュアリーや時計売り場は百貨店にあればよかったが、今は品揃えのいい店に行く傾向が強く、銀座や心斎橋、神戸のような大きな旗艦店・路面店の売上がいい。こうした路面店に来るのは若い顧客だ。若い顧客が来れば、外商や店舗の顧客もついてくる。
 実際、心斎橋の大丸の駐車場をみているとパルコのオープン以来、男性客の駐車が増えた。これからは若い顧客、男性客を掘り起こしていけば、インバウンドや洋服の売上回復が遅れて、コロナ前の形には戻らないにしても2019年以前に近い姿まで戻せる。

―苦戦が続く地方店舗での施策は

 大丸下関店はコロナ前に計画を立てて、100%子会社だったのを大丸松坂屋に取り込み 、販売系や外商の仕組みを一緒にした。下関店に商品がなくても本部の仕組みの中で売れるようにした。ただ、コロナになってしまった。厳しい状況だが、我々は同業他社よりいち早く採算の厳しい店舗や地方店、郊外店を閉店してきた。海外も早い時期に閉店した。なので、赤字店舗は2019年以前ではほぼなかった。コロナで売上が減ったので、苦しい状況の店舗が出てきているので、今後は仮説を立てて考えていかなければならない。

―今後は

 パルコのビジネスモデルは「都会型」。以前からの不採算店があるので、これまでいくつかのパルコを閉店した。2024年までに津田沼店と新所沢店を閉鎖すればパルコも一段落する。一定規模の都市になると、まちの中心に店舗があると強さが出てくる。大阪の心斎橋や名古屋の栄は車で行くのに便利だし、東京も銀座や表参道はブランドショップが並んでいて人を呼ぶことができる。

―中計で非商業用不動産事業の拡大を打ち出している

 元々、パルコを100%子会社化する前から非商業用不動産事業の拡大を計画していた。百貨店は、カテゴリー的には直接売りというよりはテナントに売ってもらう、売上仕入や消化仕入という形が主流。なので、半ば不動産業に近かった。ならば不動産業に近い仮説を持ってしっかりやるべきということで取り組んだのが、2017年のギンザシックスだった。森ビル、住友商事、ルイ・ヴィトンとのジョイントだ。

―百貨店とは全く違う業態だ

 4社で話し合ったのは、日本に本格的にはないラグジュアリーモールを作ることだった。売り場は定期賃貸借契約(定借)で、オペレーションには人数をあまりかけていない。外商の顧客も送客しない。
 また、心斎橋の大丸は、売り場面積で言えば3分の1が売上仕入で、3分の2が定借。心斎橋ではパートナーがいないので、外商のお客さんから見ると、見え方もシームレス。買ったときのポイントや付加サービスもシームレスで、初めてトライした店舗。日本中でここしかない。これは確かな手応えがあった。ただ、2019年9月にオープンして2020年1月にコロナになった。ギンザシックスも(大丸)心斎橋店もコロナ前は想定したよりもいい数字だった。
 新たな百貨店像を築くには定借(テナント)の手法が有効だと認識していたのでパルコやギンザシックスのノウハウを生かし、心斎橋はハイブリッドとした。
 次に名古屋もハイブリッド化する予定だったが、コロナもあり、少しずらすことにした。
 (続く)

 ※1 2020年3月に(株)大丸松坂屋百貨店が大丸下関店を運営する(株)下関大丸を吸収合併した
 ※2  開業当初。ルイ・ヴィトンは系列不動産投資会社が共同運営。森ビルは2020年2月末で共同運営業務を終了。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年12月20日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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