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「取適法」が1月に施行、20年ぶり下請法が改正 2割が法改正を「知らない」、中小企業に対応遅れも

「中小受託取引適正化法(取適法)」に関するアンケート調査


 約20年ぶりに下請法を改正し、2026年1月1日、「中小受託取引適正化法(取適法)」が新しく施行される。長引く物価高で、中小企業の価格転嫁を定着させることが念頭にある。
 だが、法改正について、「影響精査済み」は4割強にとどまり、「精査していない」、「(法改正を)知らなかった」が合計57.1%に達し、施行が迫るなか、企業側の対策の遅れが浮き彫りになった。特に、対応遅れは中小企業に目立ち、施行後に混乱が生じる可能性も残している。

 東京商工リサーチ(TSR)は12月1日~8日、取適法に関するアンケート調査を実施した。法改正への理解や対応では、大企業は「知っており、影響を精査済み」が約7割を占めたが、中小企業は4割強にとどまった。また、法改正を「知らなかった」は大企業が7.8%、中小企業は21.4%と規模による理解度の違いが大きかった。
 法改正に伴う利益(営業利益)への影響は、「影響しない」が8割と限定的にみる企業が多い。
 商慣習の変更など、政府の民間の商取引条件への介入には、「賛成」74.4%、「反対」25.6%と肯定的な意見が多かった。長年の商慣習の変更や受託側の弱さを補うには、法律が必要と認識しているようだ。ただ、「新たに追加された従業員基準への確認作業に追われている」との声もあり、施行後も企業の対応は続きそうだ。
 取適法の施行で、中小企業の「価格転嫁」問題が解決し、賃上げなど好循環が生まれるのか。取適法の施行が、企業間取引の商慣習の見直しにつながる契機になるか、注目される。
※ 本調査は、2025年12月1~8日にインターネットによるアンケート調査を実施し、6,339社から回答を得て、集計・分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。


Q1.下請法改正に伴い、2026年1月に中小受託取引適正化法(取適法)が施行されます。一方的な取引代金の決定が禁止されるほか、手形払いが禁止されます。法の対象となる取引が拡大し、従業員数によっても判定されるようになります。貴社は、こうした改正を知っていましたか?(一つ選択ください)(択一回答)

◇「知らなかった」が2割
 下請法の改正の認識を尋ねた。「知っており、影響を精査済み」は42.8%(6,339社中、2,717社)と4割にとどまった。「知っていたが、影響は精査していない」は36.8%(2,333社)、「知らなかった」は20.3%(1,289社)だった。
 規模別では、「知っており、影響を精査済み」は大企業が68.2%(507社中、346社)、中小企業は40.6%(5,832社中、2,371社)と、大きな差が出た。また、「知っていたが、影響は精査していない」は大企業でも23.8%(121社)、中小企業の21.4%が「知らなかった」と回答し、影響度合いや理解度などで対応が遅れている企業も一定数いる。

Q1.下請法改正を貴社は、知っていましたか?(一つ選択ください)(択一回答)

取適法の認識 産業別

◇「知っており、影響を精査済み」最高は製造業の53.5%
 産業別で、法改正の認識を分析した。「知っており、影響を精査済み」と回答した企業の構成比が最も高かったのは、製造業の53.5%(1,572社中、842社)だった。次いで、運輸業の49.7%(231社中、115社)、卸売業の48.6%(1,120社中、545社)が続く。
 一方で、「知らなかった」が最も高かったのは、農・林・漁・鉱業の35.1%(54社中、19社)で、不動産業の34.2%(251社中、86社)、サービス業他の31.8%(1,342社中、428社)、小売業の31.6%(338社中、107社)と、消費者に近い産業で認識が低い傾向が出た。

取適法「自社への影響精査済み」 ゴム製品製造業が72.2%
 「自社への影響を精査済み」と回答した企業の業種別(分母10社以上)で最も高かったは、「ゴム製品製造業」が72.2%(18社中、13社)だった。
 次いで、「プラスチック製品製造業」が64.6%(99社中、64社)、「鉄鋼業」が64.5%(48社中、31社)、「はん用機械器具製造業」が63.2%(87社中、55社)、「パルプ・紙・紙加工品製造業」が62.5%(64社中、40社)、「輸送用機械器具製造業」が61.7%(68社中、42社)と続いた。

 一方、「知らなかった」の回答が最も高かったのは、「社会保険・社会福祉・介護事業」の57.7%(97社中、56社)だった。
 「その他の教育,学習支援業」の54.5%(11社中、6社)、「医療業」の54.0%(50社中、27社)、「農業」と「その他の生活関連サービス業」各45.0%(40社中、18社)が続いた。

Q2.下請法の改正(取適法の施行)は貴社の業績にどう影響しますか?営業利益ベースでお答えください。(択一回答)

◇ 法改正 利益に影響なし予想 8割超
 法改正の営業利益への影響を調査すると、「利益に影響はしないだろう」が80.7%(5,867社中、4,739社)と8割の企業が利益に影響を考えていないと回答した。「利益が少し増えそうだ」は10.1%(596社)、「利益が大いに増えそうだ」が0.5%(33社)と利益増は10.7%だった。
 対する「利益が少し減りそうだ」は7.5%(444社)、「利益が大いに減りそうだ」が0.9%(55社)で利益減は8.5%だった。

Q2.下請法の改正(取適法の施行)は貴社の業績にどう影響しますか?営業利益ベースでお答えください。(択一回答) 

産業別 利益への影響

 産業別で、回答構成比が高かったのは、「利益が増えそうだ」が「製造業」の13.7%(1,485社中、204社)で、「利益が減りそう」では、「建設業」の11.8%(926社中、110社)だった。
 「利益が増えそうだ」回答の構成比が高かった業種別では、「ゴム製品製造業」が35.7%(14社中、5社)、「機械等修理業」の33.3%(24社中、8社)、「非鉄金属製造業」の20.8%(24社中、5社)。
 「利益が減りそう」では、「放送業」(10社中、2社)と「織物・衣服・身の回り品小売業」(15社中、3社)が各20.0%で最も高かった。

Q3. 今回の改正のように政府が民間企業の取引に介入することについて、賛否はいかがですか?(択一回答)

◇政府介入「賛成」74.4%
 政府による民間企業への取引介入の賛否について、「大いに賛成」が14.3%(5,574社中、798社)、「どちらかというと賛成」が60.0%(3,349社)で、「賛成」は74.4%だった。一方、「大いに反対」が3.3%(188社)、「どちらかというと反対」が22.2%(1,239社)で、「反対」は25.6%だった。
 規模別では、「賛成」は大企業が66.2%、中小企業は75.0%と8.8ポイント高く、強力な法律がなければ商慣習を変えることが難しい状況が浮かび上がった。

Q3. 今回の改正のように政府が民間企業の取引に介入することについて、賛否はいかがですか?(択一回答)

政府の取引介入「賛成」 電子部品・デバイス・電子回路製造業が91.4%
 政府の民間取引への介入に「賛成」と回答した企業の業種別(母数10社以上)で最も高かったのは、「電子部品・デバイス・電子回路製造業」が91.4%(47社中、43社)だった。
 次いで、「機械等修理業」が88.4%(26社中、23社)、「鉄鋼業」が87.8%(41社中、36社)、「金属製品製造業」が87.6%(219社中、192社)、「情報通信機械器具製造業」が87.5%(24社中、21社)などが続いた。

 一方、「反対」の回答が最も高かったのは、「学校教育」の61.5%(13社中、8社)だった。
 「金融商品取引業,商品先物取引業」の57.1%(14社中、8社)、「医療業」の44.4%(36社中、16社)、「織物・衣服・身の回り品小売業」が42.8%(14社中、6社)、「水運業」が41.6%(12社中、5社)が続いた。

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