• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

 交響楽団(オーケストラ)が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇している。寄附金や補助金による収入は頭打ちで、綱渡りの運営だ。
 芸術文化の発展に重要な役割を担ってきたが、コロナ禍を境に流れが変わった。一度離れた会員の呼び戻しや、企業などから協賛・寄附金を増やすと同時に、コスト管理を強める必要に迫られている。だが、自助努力にも限界がある。音楽文化を根付かせ、発展させるにはファンだけでなく、一人ひとりの応援の広がりも欠かせない。


2年連続の赤字

 交響楽団の多くは、公益性の認定を受けた「公益財団法人」だ。税制面での優遇を受ける一方、社会活動などの厳格な運営も求められている。また、純資産額が一定基準を下回ると解散しなければならない。
 東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。コロナ禍の影響が大きかった2022年度の売上高合計は177億7,453万円で、最終利益は5億2,515万円と採算ベースに乗せていた。
 ところが、2023年度の売上高は前年度比1.9%減の174億3,431万円に落ち込み、最終利益はマイナス4億5,301万円と赤字に転落した。2024年度は入場者数が緩やかに回復し、売上高は4.1%増の181億6,221万円と増収に転じた。だが、最終利益は3億4,643万円の赤字と2期連続で水面下に沈んだ。コロナ禍後も苦境が続いている。

交響楽団の業績 年度推移

交響楽団の取り組み

 日本を代表する交響楽団の1つである「日本フィルハーモニー交響楽団」は、2026年に70周年記念の特別演奏会や特別定期演奏会を企画している。2025年度の事業計画では、「企業や学校、ホール、自治体等に対する新規受託や協賛を推進し、演奏料収入の拡大を図る。また魅力あるプログラムを増やして来場者率のアップを図り、入場収入の増加」を掲げている。

 「九州交響楽団」は2025年10月、経営改革プランを公表。最終赤字が続き、財団法人の解散を避けるためにも早期黒字化に向け、収入源の多様化やファンのすそ野拡大などの方針を打ち出した。チケット価格の見直しや協賛金獲得に向けた活動強化などの取り組みを進めている。

 文化の根を未来につなぐためにも、音楽分野でも草の根の動きがより重要になっている。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年12月10日号掲載「取材の周辺」を再編集)

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

新型コロナ破たん、10月は125件発生

 10月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円未満含む)が125件判明し、2020年2月の第1号の発生から累計1万4,825件に達した。2026年は7月にことし最多を記録。その後、8月は一転減少し、以降は150件を下回る状況が続いており、一進一退を繰り返している。

2

  • TSRデータインサイト

AIの脅威が迫る「デザイン業」、上半期の倒産が過去最多 ~ 前年同期比1.9倍、住宅業界の変化も影響 ~

デザイナーの力量を問われる「デザイン業」で倒産(負債1千万円以上)が過去最多を記録した。2026年度上半期(4-9月)の倒産は前年度同期の1.9倍の41件に急増。 1989年以降、初めて40件を超えた。生成AIの活用などで、クライアントの内製化が進むと、さらに倒産の増加が懸念される。

3

  • TSRデータインサイト

改正保険業法のポイント、「実態に即した契約書の修正がカギ」~ 法律事務所あかつき・岡本大毅弁護士インタビュー ~

6月1日、改正保険業法が施行された。保険契約者の保護などが目的で、2016年以来、約10年ぶりの大型改正だ。法改正への対応や保険代理店が陥りやすいトラブルなど、確認が必要なことは今後も多い。保険業界に詳しい、法律事務所あかつき・岡本大毅代表弁護士に注意点などを聞いた。

4

  • TSRデータインサイト

「社長の住む街」 「赤坂」が14年連続で全国トップ 「港区」は住民の6人に1人、 「福岡市中央区」も人気

全国の「社長の住む街」トップは、14年連続で「港区赤坂」の4,709人だった。前年から113人増えた。2位は「新宿区西新宿」の4,038人で、初めて4,000人を突破した。3位は「港区六本木」の3,638人だった。

5

  • TSRデータインサイト

主な「地ビールメーカー」1-8月出荷量は2年連続で増加 ビールメーカーの6割弱が前年割れ、首位は「エチゴビール」

主な地ビールメーカー49社の2026年1-8月の総出荷量は9,093kℓ(前年同期比3.7%増)2年連続で前年を上回った。夏場の酷暑による外出控えや、物価高の影響で消費が抑制され地ビールの出荷量は2024年から2年連続で苦戦を強いられたが、地ビールブームは根強く2026年の出荷量は前年を上回った

TOPへ