国内造船業がV字回復、官民あげた取り組みに期待 ~ 中国・韓国との競争激しく、広い裾野に恩恵も ~
日本の造船業が復活の兆しを見せている。かつては世界を席巻していたが、中国や韓国メーカーの急成長で構造不況に陥り、業界再編の荒波に揉まれた。ただ、海運市況の回復と燃費性能などで受注を伸ばし、業績は急回復している。政府は総合経済対策で、「造船業再生ロードマップ」を年内に策定する。官民連携で1兆円規模の投資実現も目指す。
東京商工リサーチ(TSR)は、成長ロードをたどる造船業の業績を調査した。
業績が急回復、2期連続の増収増益
TSRが保有する440万社の企業データから船舶製造・修理業を主業とする企業を分析した。7期連続で売上高と利益(当期純利益)を比較できる222社を抽出した。
222社の業績は、市況後退から2019年度の売上高は1兆6,273億円(前年度比5.8%減)に落ち込み、866億190万円の赤字に転落した。その後、2022年度まで売上高は1兆5,000億円前後と伸び悩み、4期連続で赤字が続く“造船冬の時代”だった。
だが、円安が苦しい状況から抜け出す契機になった。価格競争力がアップし、輸出船の受注が増え、急速に業績が回復した。2023年度は売上高1兆8,1748億円(同15.8%増)と急伸し、利益は633億9,900万円の黒字に転換した。2024年度は売上高が2兆734億円(同14.0%増)と2兆円台に乗せ、利益は倍増の1,435億580万円(同126.3%増)と大幅増益を果たした。

官民連携で最大1兆円の投資
日本の造船業に明るさが戻ってきた。だが、それでも中国や韓国は受注量で上回っている。国土交通省によると、2024年世界の船舶受注量と国別シェア(契約年ベース)は、中国71%や韓国14%に対し、日本は8%にすぎない。
また、日本船主による発注(2024年)は、日本が63%を確保したが、中国32%、韓国5%と中国への発注比率は高いままだ。
中韓も技術力を高めており、日本造船業の優位は盤石ではない。こうした事情を背景に、政府は総合経済対策で造船業の再生・強化を目指す。造船能力の抜 本的向上を掲げ、総額3,500億円規模の10年間の基金を創設する。ゼロ・エミッション船の建造支援など、官民連携で1兆円の投資を念頭に置く。
造船業は建造期間が長く、携わる企業や人員も多い。それだけに、造船業の成長はサプライチェーンや地域経済に大きく寄与する。
造船業の景気は、数年サイクルで循環する。従来からのリスクヘッジ策に加えて、再編にも目配せが必要だ。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年12月18日号掲載「取材の周辺」を再編集)