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【取材の周辺】東京都・特別区の担当者に聞く、これからのコロナ制度融資

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公開日付:2021.06.03

 コロナ禍の資金繰り支援策として、多くの自治体で取り組みが強化された新型コロナ関連の制度融資。東京都23区ではほとんどの区が制度融資の申請期限を2020年度末に設定していた。だが、コロナ収束が見通せず、中小・零細企業の資金需要が続いていることから、世田谷区を除く23区中22区が2021年度も制度融資を継続している。
 東京都に発令された3度目の緊急事態宣言は6月20日まで再延長され、休業・時短要請の長期化で飲食店、娯楽業など多くの業種で深刻な状況に追い込まれている。引き続き資金需要が見込まれるなか、各区のコロナ融資担当者に現状や今後の方向性について取材した。


活発な資金需要、22区で制度融資を継続

 「緊急経営支援特別資金(新型コロナウイルス感染症対応)」で融資斡旋を行っている渋谷区は、年明け以降一時的に申請件数が落ち着きをみせていた。だが、年度末に申請が殺到。その後、4月は一旦減少したものの、GW明けから再び増加しているという。当初は3月末で終了予定だったが「上限2,000万円というまとまった金額で事業者を支援できる区の制度が他になく、終了すると資金繰りに困る事業者が出てくる恐れがある」(担当者)ことから、9月末までの継続が決定している。担当者は「面談希望者が増加しており、最近は予約枠の8割近くが埋まっていることも多い。創業の相談もあるが、多くはコロナ融資に関する問い合わせだ」と語る。土地柄、IT関連や飲食店、アパレルなどの小売業の利用が多いという。
 大田区は、製造業者などが多いこともあり、23区で最も高い5,000万円の融資限度額を設定している。担当者は「昨年秋から冬にかけては1日1桁台まで落ち着いていた申請が、GW明けから1日2桁台まで増加している」と語る。また、制度融資を利用する企業の業種にも変化が出てきたという。「以前は製造業者の利用が多かったが、4月頃から小売・卸売業者からの申請が増加している」(担当者)と変化を語る。

コロナ制度融資

‌制度融資のポスター(4月撮影)

前年度より拡充の区も

 荒川区では、2021年1月16日に「経済急変対応融資(新型コロナウイルス感染症対応)」を新規に創設した。従来の「新型コロナウイルス対策特別融資」は3月31日まで並行し、終了している。融資限度額を従来の制度の1,000万円から2,000万円に引き上げ、金利は0.6%から0.3%に下げた。製造業や関連業種を中心に、荒川区では年明け以降、運転資金需要が活発化しているといい、昨年4月から今年1月までの約10カ月間で776件だった斡旋件数は、年明け以降の約3カ月間で579件、新年度からの2カ月間でも約200件にのぼる。

コロナ長期化で事業者の状況厳しく

 同じく融資限度額を拡充した江東区の担当者は、「1月の緊急事態宣言以降、区内の事業者は厳しい状況が継続していると認識している」と話す。「多くの事業者で、前年度に開始した新型コロナウイルス感染症対策資金融資の1年間の据え置き期間が5~6月には終了する。一方で、売上が戻っておらず返済が難しい企業も多いため、借換を可能にし、事実上のリスケができるようにした」という。
 最初の緊急事態宣言が発令された昨年4~6月と比べ申請件数自体は減少したというが、一時的に申請の落ち着いていた7月以降に比べると高い水準で推移しているという。また、製造業からサービス業まで、幅広い業種から申請があると語る。
 飲食店を含むサービス業や小売業の多い中央区でも、融資限度額を1,000万円から2,000万円に引き上げた。当初の融資利用額と拡充後の融資限度額の差額分が、追加で融資申請できる。「昨年に比べると申請件数自体は減少しているが、緊急事態宣言の再発令も含めて新型コロナの影響は長期化しており、飲食店に限らず事業者の置かれた状況は悪化している」(担当者)ことが制度の拡充に繋がったという。

唯一終了の世田谷区担当者は…

 世田谷区は23区で唯一、2020年度末で新型コロナ制度融資を終了した。担当者によると、世田谷区では「年明け以降、申請件数が落ち着いてきていた」。さらに、「国や都の制度融資が充実し、区よりも貸付期間の長いものや、限度額の高いものの利用が増加してきた」という。このため、一度は期間を半年延長した制度融資の再延長を取りやめた。
 また、「(新型コロナ感染拡大当初の)2020年度上半期は、小売業や飲食業を含むサービス業が融資利用事業者の半数以上を占めていたが、補助金などが拡充されたこともあり、区の融資利用者の減少に繋がったのではないか」(担当者)と分析する。


 長引くコロナ禍で、引き続き運転資金需要を見込む区の担当者は少なくない。「まとまった額のキャッシュを支援するには、予算の兼ね合いもあって給付などでは難しく、事業者への支援は融資にならざるを得ない」との苦渋の声や、「運転資金の支援から業態転換などに向けた支援も検討課題」と新しい試みを模索する声も聞かれた。
 東京商工リサーチが4月に都内に所在する企業を対象に実施したアンケート(回答:2,025社)では、「債務に過剰感がある」と回答した中小企業の割合は36.3%だった。企業の過剰債務が問題となるなか、区の担当者も支援の方法に頭を悩ませている。
 コロナ禍で倒産は増加すると思われたが、2020年度の東京都の企業倒産は1,302件で、バブル期の1989年度(1,229件)に次ぐ低水準にとどまった。その要因の一つには、区の制度融資を含む各種資金繰り支援策があげられる。業績は悪化しても、資金が回り倒産を抑制したからだ。
 新型コロナの影響が長期化したこともあり、一部の区では借換融資制度を創設するなど、返済猶予期間後の資金繰り対策も進められている。
 だが、一時的に資金繰りが緩和しても、膨らんだ負債はいずれ返済しなければならない。3社に1社が過剰債務を感じている状況で、今後の支援のあり方が問われている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年6月4日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

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