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2024年「合同会社」の新設法人4万2,107社 簡易な手続きと運用を背景に前年比3.5%増

2024年「合同会社」の新設法人調査


 2024年に新たに設立された法人のうち、「合同会社」は4万2,107社(前年比3.5%増)で約3割を占めた。 2024年の新設法人数は全体で15万3,938社(同0.3%増)で、合同会社の増加率の高さが際立った格好だ。
 合同会社は設立時の定款が不要で、準備期間も短く、設立費用も安いメリットがある。さらに、株主総会や決算公告なども不要で、弾力的な経営が可能なことから外資系企業や個人オーナーを中心に、存在感が増している。

 2024年の全国の新設法人は15万3,938社だった。内訳は、株式会社が10万733社(構成比65.4%)で6割を超えたが、増加率は前年比0.6%減と頭打ちだった。合同会社は4万2,107社(同27.3%)で、同3.5%増と新設法人の伸びを牽引している。
 合同会社は2006年に有限会社に代わって誕生した。当初は、知名度の低さから設立数が伸び悩み、2011年も8,990社にとどまった。その後、知名度が浸透するにつれ、利便性の高さも広がり、2015年に2万社、2019年に3万社、2023年に4万社を超え、新設法人の4社に1社が合同会社となった。
 近年は、2024年10月にスタートしたインボイス制度を受け、個人事業主が法人化する際、設立コストの安い合同会社を選ぶケースが増え、増加率を後押しした。
 また、新設法人だけではなく、Apple Japan合同会社やアマゾンジャパン合同会社など外資系企業も合同会社を選択している。

 使い勝手の良い合同会社は、今後も新設法人を牽引するだろう。ただ、簡単に設立できる一方で、安易な開業や実態の乏しい企業の増加などが問題になっている。さらに、新設法人が事業拡大すると株式会社に移行する流れも定着している。徐々に合同会社の信用面の問題もクリアされるに伴い、新設法人は株式会社と合同会社がそれぞれの特徴を生かし、補完しながら増勢をたどるとみられる。
※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(対象約400万社)から、2024年(1-12月)に全国で新しく設立された全法人15万3,938社のうち、合同会社を抽出し、分析した。

合同会社 新設法人 年間推移


合同会社は堅調に増加

 合同会社の利便性などが認知され、合同会社は前年比で二ケタ増が2015年まで続いた。2016年は前年比6.1%増に鈍化したが、2017年は15.3%増と再び増勢が強まった。ただ、勢いは続かず、2019年には5.4%増と伸び悩んだ。
 コロナ禍では、創業支援とコロナ関連の資金繰り支援が重なり、起業意識も高まったことで2021年は10.9%増と高い伸びを示した。ただ、支援縮小と急増の反動が出た2022年は0.3%増にとどまった。
 2023年は9.6%増と再び急増したが、一部は2024年10月にスタートしたインボイス制度に向けた個人事業主からの法人化の動きで、設立コストの安い合同会社が増えたとみられる。
 2024年の伸びは3.5%増と鈍化したが、増勢を維持した。合同会社による起業メリットを享受できる飲食店などの小規模事業者から選ばれている。

産業別 5産業で増加

 合同会社の産業別は、10産業のうち5産業で前年を上回り、産業によって濃淡が出ている。増加率トップは、農・林・漁・鉱業661社(前年比11.6%増)だった。次いで、不動産業4,794社(同8.3%増)、小売業4,315社(同7.8%増)、金融・保険業1,606社(同6.2%増)の順。
 一方、減少率が最大だったのは建設業2,180社(同12.1%減)で、運輸業672社(同8.1%減)が続く。前年のインボイス登録に伴う駆け込み法人化の反動が出たようだ。

産業別 合同会社 新設法人

業種別 学術研究,専門・技術サービス業が最多

 産業別をさらに細分化した業種別では、最多は経営コンサルタントなど学術研究,専門・技術サービス業の6,590社(構成比16.2%、前年比1.3%増)だった。次いで、不動産業の4,794社(同11.7%、同8.3%増)、ソフトウェアの開発など情報サービス・制作業の4,663社(同11.4%、同3.8%減)、飲食業の3,072社(同7.5%、同8.6%増)が続いた。

都道府県別 増加率トップは富山県、減少率は青森県が最大

 都道府県別で合同会社の新設法人数の最多は、東京都の1万3,391社(構成比31.8%)だった。都内には多くの合同会社が活動している。次いで、大阪府3,499社(同8.3%)、神奈川県3,012社(同7.1%)と、都市部が続く。
 前年からの増加率は、トップが富山県の前年比40.9%増(217社)だった。2位は新潟県の同22.6%増(330社)、3位は佐賀県の同19.0%増(144社)で、地方の増加が目立ってきた。
 減少率の最大は、青森県の同19.5%減(165社)で2割近く減少した。次いで、鳥取県の同11.6%減(99社)、茨城県の同11.3%減(684社)だった。

都道府県別 合同会社 新設法人

法人格の構成比 合同会社は27.3%に上昇

 法人格別の構成比を分析した。5年前の2019年は、株式会社が67.7%(8万8,981社)と7割に迫るなか、合同会社は23.0%(3万230社)と差が大きかった。
 次第に合同会社のコスト面、設立のしやすさなどが認知され、2024年には株式会社65.4%(10万733社)に対し、合同会社は27.3%(4万2,107社)と、5年で構成比は4.3ポイント上昇した。
 2024年は株式会社と合同会社で92.7%に達する。まだ、社数は少ないが一般社団法人は4.0%(6,259社)と緩やかに構成比が上昇している。

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