• TSRデータインサイト

「結婚式場」は業績持ち直すも収益は悪化 黒字は約7割、挙式離れで値上げも限界に

~ 2024年「結婚式場業」業績動向調査 ~

 全国の結婚式場を運営する46社の2024年の業績は、売上高が2,757億円(前年比3.9%増)、最終利益は120億円(同17.6%減)で、増収減益だったことがわかった。
 コロナ禍の2021年は挙式キャンセルや延期で売上高が急激に落ち込んだが、その後はコロナ禍の収束で2022年から3期連続で増収を果たした。だが、原材料や人件費などのコストが上昇し、価格転嫁が落ち着かず、“利益なき繁忙“に陥っている。

 厚生労働省の「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)」によると、2024年の婚姻件数は48万5,063組(前年比2.1%増)で、2023年を1万322組上回った。だが、ピークの1972年(109万9,984組)からは大幅な減少が続いている。
 減収企業は、2024年は15社(構成比32.6%)で、2023年の5社(同10.8%)から3倍に増え、一部の好調企業が全体を牽引する二極化の構図が鮮明になった。また、倒産・休廃業の合計は19件(前年同数)で、6年連続で新設法人数を上回り、市場縮小が続いている。
 「結婚」への価値観が多様化し、フォトウェディングやカジュアルウェディングなど様式も様々だ。ブライダル産業を取り巻く環境が激変するなか、結婚式場は顧客ニーズを捉えたプランや戦略の工夫が試されている。
※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、日本産業分類(小分類)の「結婚式場業」を対象に、2024年の業績(2024年1月期~12月期決算)を最新期とし、5期連続で業績が判明した46社を抽出し、分析した。


売上高は微増も利益は減少

 主な結婚式場46社の2024年の売上高は2,757億5,300万円(前年比3.9%増)で、3年連続の増収だった。
 一方、最終利益は120億4,000万円(同17.6%減)で増収減益だった。
 結婚式場業は、コロナ禍で売上高が大きく落ち込んだが、コロナ禍を経て需要回復と一部の価格転嫁の効果で増収が続いている。
 だが、原材料や人件費の高騰にコスト削減が追い付かず減益に転じた。


「結婚式場業」倒産・休廃業 新設法人の設立数を6年連続で上回る

 「結婚式場業」の倒産・休廃業は2024年は19件で、6年連続で新設法人数を上回った。2018年までは新設法人数と倒産・休廃業数がほぼ同水準で推移していたが、2019年以降は新設法人数が減少している。
 2021年、2022年の倒産・休廃業はコロナ禍の支援策で抑制されたが、支援の縮小・終了に伴い2023年、2024年は19件に増加し、業界縮小が続いている。


人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

私立大学の経営、売上トップは(学)順天堂 赤字企業率5割に迫る、損益は地域格差が鮮明に

私立大学を経営する全国の543法人のうち、約半数の253法人が2024年決算で赤字だった。赤字企業率は46.5%にのぼり、前期(40.8%)から5.7ポイント上昇し、5割に迫った。

2

  • TSRデータインサイト

企業倒産、破産の割合が9割超で過去最大 ~ 背景に「手形減少」と「準則型私的整理」 ~

企業倒産のうち、破産の構成比が90.3%に達し、過去最大を記録した。民事再生法はわずか2.2%にとどまる。破産は、売上不振や財務内容が悪化し、再建が見通せない企業が選択する。なぜ今、破産の構成比が高まっているのか――。

3

  • TSRデータインサイト

2025年上半期 20床以上の病院倒産が急増 「病院・クリニック」倒産21件、5年連続で前年同期を上回る

病床20床以上の病院の経営が厳しさを増している。2025年上半期(1-6月)の病院・クリニックの倒産は21件(前年同期比16.6%増)だった。上半期では、コロナ禍の2020年を底に、2021年から5年連続で前年同期を上回り、1989年以降で最多の2009年同期の26件に次ぐ、2番目となった。

4

  • TSRデータインサイト

リフォーム・塗装工事の倒産が急増 ~ 点検商法などのトラブル多発 ~

リフォーム・塗装工事の倒産が急増している。2025年上半期(1-6月)の倒産は119件に達し、過去20年で最多だったリーマン・ショック後の2009年同期の111件を上回った。

5

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 止まらない客室単価の値上げ インバウンド需要で高稼働・高単価が続く

インバウンド(訪日旅行客)需要に支えられ、ホテル業界は好調が続いている。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2025年3月期の客室単価は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に前年同期を上回り、稼働率も前年同期並で高水準を維持している。

TOPへ