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定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?

 東京商工リサーチ(TSR)には、「取引先をどう評価したら良いか」、「与信限度額を決めたい」などの問い合わせが絶えない。
 2024年度の全国倒産が1万144件(前年度比12.0%増)と11年ぶりに1万件を超えたが、企業の倒産リスクはどの水準にあるのか。TSRが企業を評価する「評点」と「リスクスコア」のマトリクスからみてみた。



 評点は、成長性(売上高伸長性、利益伸長性など)、安定性(業歴、資産、自己資本など)、公開性を100点満点で付与した総合評価である。
 一方、リスクスコアは過去の倒産データの分析から算出し、すべての企業を日々更新している。リスクスコアは12カ月以内の倒産リスクを1~100でスコアリングし、低いほど倒産リスクが高いことを示す。
 リスクスコアには、属性情報(業種や地域、業歴など)、財務情報、その他の情報などを組み込んでいる。例えば、2025年1月に破産開始決定を受けた日興電子(株)(TSRコード:290230578、東京都)の2022年1月のリスクスコアは19だったが、倒産直前の2024年12月には3に急落していた。
 このように評点が低く、リスクスコアも低い企業ほど要注意となる。 
 評点とリスクスコアのマトリクスで、企業のポジショニングは一目瞭然となる。評点が高く(信用状況良)、リスクスコアも高い先(倒産リスク低)がAランク(非常に優良)で、スコアが下がるごとにBランク(優良)、Cランク(通常)、Dランク(やや注意)、Eランク(注意)、Fランク(要警戒先)と6区分されている。

マトリクス表

Fランク企業の倒産

 現在、評点とリスクスコアが付与された企業は約160万社を数える。これらの企業の倒産率は、2022年0.15%、2023年0.21%、2024年0.25%と年々、上昇している。
 一方、評点49以下、リスクスコア1-5の企業群であるFランクの倒産率は、2022年1.13%、2023年1.61%、2024年1.84%と、コロナ関連支援が継続していた時期にもかかわらず、全体の倒産率を大きく上回っている。
 特に建設業は、2024年のFランク倒産率が2.03%で、10産業のワーストだった。

Fランク企業の割合

 評点とリスクスコアのマトリクスからFランクの企業の倒産率は高位にあることがわかった。
 では、Fランクの割合はどのように推移しているのか。2022年~24年の3年間にかけて、評点とリスクスコアが付与された企業をAランクからFランクに区分した。Fランクの割合は、2022年は3.02%、2023年は2.75%、2024年は2.69%と低下している。ただ、建設業は10産業のうち、減少幅が最も 小さく、2022年3.73%、2023年3.59%、2024年3.72%と前年より0.01ポイントダウンにとどまった。
 一方、減少幅が最も大きかったのは卸売業(2022年4.50%→2023年3.83%→2024年3.50%)の1.00ポイントダウン。次いで、製造業(2022年5.94%→2023年5.11%→2024年4.96%)の0.98ポイントダウンが続く。

Fランクからの脱却

 A~Eランクから、評点、リスクスコアが下がりFランクに落ちた企業、一方でFランクから、評点、リスクスコアが上昇しA~Eランクに上昇した企業を分析した。
 3年連続でFランクの構成比が高かったのは運輸業の2.64%だった。なお、運輸業はFランクへの転落が2.79%と高かったが、A~Eランクに上昇した企業も3.03%と他産業より高かった。
 これは深刻な人手不足や燃料高によってFランクに落ちる企業があったとみられる。退職者の従業員を引き抜き、同業に転職するなど特有の雇用環境も影響する。ただ、荷主が価格転嫁に応じる状況も整い始め、価格転嫁を享受できた企業がFランクから抜け出したことも作用したとみられる。

評点とリスクスコアの活用

 評点とリスクスコアが低位なほど、倒産率が高いことを客観的なデータが示している。
 このことから、財務分析などの定量情報だけでなく、様々な定性情報の組み合わせが倒産リスクの判断には重要といえよう。
 特に、財務分析は年に1回から数回で済ましてしまうケースが多い。定性情報は日々変化する。この日々の動きがタイムリーに反映されるリスクスコアの有益性は大きく、マトリクスを活用し、企業の状況に応じた取引が求められる。

Fランク率と倒産率(産業別)


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年6月11日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)


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