市場縮小で老舗の淘汰が続く「呉服業界」 和装文化を現代に生かす価値創造が急務
2024年「呉服業」業績動向、倒産・休廃業調査
呉服業界は5社に1社が業歴100年超、約8割が業歴50年超の老舗集団だ。だが、生活様式の変化や少子高齢化で和服文化は先細りとなり、市場は停滞している。
全国の主な呉服販売411社の2024年の業績は、売上高が1,429億3,400万円(前年比4.5%減)、最終利益は14億7,100万円(同43.1%減)で減収減益となり、3年ぶりに厳しい決算となった。コロナ禍を凌ぎ、業績は回復したかにみえたが、再び縮小傾向に転じた。
呉服業界は、コロナ関連支援策に支えられ倒産も抑制されていたが、「着物離れ」の流れは止まる気配が見えない。
呉服業界の事業規模は、従業員5人未満が273社(構成比66.4%)、5~10人未満が65社(同15.8%)と小・零細事業者が大半を占めている。大手チェーン店を除く“街の呉服屋さん”は来店客や紹介客が中心で、売上高の伸長率5%未満が201社(同48.9%)と半数を占め、伝統産業の一つである呉服業界の厳しい現状を物語っている。
経済産業省は2025年3月に発表した「和装振興に向けて」で、和装産業の新たなビジネスモデルを紹介している。若い世代や和装未経験者に対する本格的な着物体験の機会提供や、日本文化の発信機会の提供、このほか加賀友禅をはじめ高級着物のサブスクリプションプランを提供するなど、次世代への文化継承に積極的な取り組みを示す企業もある。
着物は、季節やTPOに合わせた装いを求められる。独自のマナーやしきたりもあり、若い世代や和装未経験者が独学で着始めるのは容易ではない。このため、基本的な知識やマナーなど見えないハードルを乗り越えるきっかけづくりが重要になっている。過去と現代をうまく取り繋ぐ戦略が、業界復調に向けた一歩になりそうだ。
※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、「呉服業」(呉服卸売業・小売業)で、2024年の業績(2024年1月~2024年12月期)を最新期とし、5期連続で業績が判明した411社を抽出、分析した。
増減益別 減益企業が増加
利益面は、最新期は増益が105社(構成比25.5%)、減益は125社(同30.4%)、横ばいは181社(同44.0%)だった。前期は増益が133社(同32.3%)、減益が105社(同25.5%)、横ばいが173社(同42.0%)だった。
赤字企業は、最新期は103社(同25.0%)で、前期の98社(同23.8%)を上回った。
休廃業・解散、倒産ともに増勢へ
2024年の呉服業の休廃業・解散は151件(前年比0.6%増)、倒産は19件(同35.7%増)で合計170件(同3.6%増)に達した。休廃業・解散は、直近10年間で2019年の171件、2018年の153件に次いで3番目、倒産は2015年の24件に次いで2番目の高水準で、合計も2019年の187件に次ぐ2番目の高水準となった。
倒産の緩やかな増加に歩調を合わせ、休廃業・解散も増加をたどっている。これは経営体力の劣る中小・零細事業者の苦しい経営状況を示している。市場規模が縮小をたどる限り、苦境は事業規模に関係なく迫っており、小・零細事業者の淘汰の流れはさらに強まる可能性もある。