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山形の老舗百貨店「大沼」の再建が暗礁 再生ファンドのトラブルで支援遅れ

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公開日付:2019.02.20

 事業再生のマイルストーンターンアラウンドマネジメント(株)(TSR企業コード:296291099、東京都、以下MTM)。政府系金融機関なども出資する事業再生を手掛ける投資会社として発足した。そのMTMが支援する老舗百貨店の「大沼」の再建が揺れている。
 「大沼」は山形県唯一の百貨店で、創業は江戸時代の元禄13年(1700年)。創業300年余を誇る地元名門だ。「大沼」を運営する(株)大沼(TSR企業コード:210002948、山形県)が経営難に陥り、2018年4月にMTMがスポンサーに名乗り出た。だが、大沼の資金不足から再建に暗雲が漂い始め、仕入代金の支払いが遅れている。
 さらにMTMには大沼への出資金の還流問題も浮上している。難問山積の名門百貨店を巡る再生の現場を、東京商工リサーチ(TSR)情報部が迫った。

大沼・山形本店(2月撮影)

大沼・山形本店(2月撮影)

トラブルが続発、口座差し押えも

 大沼の現状について、MTMと大沼の社長を兼務する早瀨恵三氏がTSRの取材に応じた。
 大沼の再建が難航している理由について、早瀨社長は「(MTMと無関係の)投資会社が大沼のスポンサーになりたいという話があったが、困難な要求もあり断った。その後、妨害が始まり資金調達が難しくなった」と話した。
 「妨害」とは何か。早瀨社長は明言を避ける。だが、「大沼の一部幹部や投資会社が関わっている」と断言する。
 「(スポンサーを申し出た投資会社と)面談した際に、スポンサーを譲らなければ出資金の還流などをメディアに流すと言われた。実際、情報を流され資金調達できなくなった」と語る。
 2018年7月、大沼は資金不足に陥る。MTMも資金調達が遅れ、買掛金の一部で決済が遅れた。これ以降、MTMと大沼の幹部の意思疎通が難しくなったという。
 早瀨社長は同年9月20日、大沼の社長だった長澤光洋氏を解任した。早瀨社長は、「9月26日、約77万円の支払いが遅れていたシステム会社がMTMの口座を差し押さえた。後で代金は支払ったが、その後も口座凍結の解除まで時間を要した。差押も投資会社が関係しているのは間違いない」と訴えた。
 早瀨社長が「対立している」と話す投資会社は、TSRの取材に「大沼との間で何ら契約があるものではない。取材にコメントする立場でも、お答えできる立場でもない」とコメントした。

出資金還流の説明

 MTMが大沼に出資した金額は3億円。当初、投資家から資金を集める予定だったが、叶わなかった。そこでMTMは1億円をホテル運営会社から、残り2億円を金融会社から調達し、MTMの100%出資子会社を経由して大沼に出資した。その後、出資当日にMTMは大沼から1億円強を引き出し、ホテル運営会社に返済。これが「出資金還流」問題となっている。
 TSRは独自に大沼の『中間期モニタリング報告』を入手した。作成者や真偽は不明だが、昨年11月、大沼が金融機関に再建の進捗の報告資料として作成したとされる。そこには「出資金の流れ」として、大沼からMTMに「経営指導料」として5,400万円、「仮払金」として1億1,800万円の支出が記載されている。
 「出資金還流」問題について早瀨社長は、「(大沼の)私的整理の検討時に、当時の関係者から破産もやむなしの声があがっていた。私的整理の枠組みで時間が限定されるなか、大沼の資金も枯渇した。運転資金が必要で、破産を回避するため緊急的に投資を決断せざるを得なかった。プリンシパル(自己資金)で対応したため、グループ間の資金融通もあった。夏前には投資家の資金に変更する予定だったが、妨害行為で資金調達が難しくなり、プラン通りに進めることができなくなった」と疑惑を否定した。

資金還流の問題が広がる

 早瀨社長は、「投資会社として手元流動性が必要だ。対立側はそこを狙い、機密情報を金融機関や出資先、マスコミに流し、資金調達を止められた」と憤る。
 「MTMの株主で同社に役員も派遣し、ファンドに出資する銀行側の代理人から、2018年12月に出資金還流の説明を求められた」(早瀬社長)。そこではプリンシパルの説明をし、問題ないというスタンスで話したという。だが、同月に銀行の派遣役員は辞任し、さらに銀行がMTMに出資した株式は早瀨社長が買い取る手続きの準備中だという。
 名指しされた銀行はTSRの取材に、「個別案件はお答えできない」とコメントした。

大沼・山形本店は増収増益

 大沼のピーク時の売上高は1993年2月期の196億6,219万円。その後、消費低迷や競合などで、2018年同期は81億3,500万円とピークから半減。16期連続減収、4期連続赤字と苦戦が続く。
 早瀨社長は、2019年2月期決算を「売上高は75億円前後。山形本店は増収増益、米沢店は減収減益」と見通しを語った。
 大沼山形本店の店舗幹部はTSRの取材に、「(本店は)順調だ。通常通り営業し、特に混乱はない」と落ち着いた口ぶりで説明した。
だが、早瀨社長は「2月は運転資金が必要で、資金調達の準備を進めている」と綱渡りの資金繰りを明らかにした。

(株)大沼 売上高・当期純利益推移

(株)大沼 売上高・当期純利益推移


 大沼・山形本店を訪れた女性客は、「大沼さんに30年以上通うが、最近はお客さんが減って寂しい。山形のシンボルだから頑張ってほしい」と、山形弁を交えてエールを送る。
 早瀨社長は、「3月にエクイティ(株式)で約3億円を調達する計画だ。それを機に(資金繰りの)正常化を進める。大沼の売却や整理は一切考えていない」と語る。
 MTMが別法人で経営再建中の商業施設「Nanak(ななっく)」(岩手県盛岡市)は、「いったん閉店し、再開発も検討」(早瀨社長)と、支援方法の変更も模索し始めている。
 出資金の還流問題や支援先の再建が進まず力を発揮できないMTM。社会的意義の大きい再生ファンドであり続けるには信頼回復が急務だ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年2月21日号掲載「取材の周辺」を再編集)

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