リフォームテクノロジー取締役会長・栗原将氏 インタビュー ~ 「ぼったくり」なし・ネット完結、住設業界の慣習変えたDX ~
ユニークな社名とCMでもおなじみの「交換できるくん」(渋谷区)は、給湯器や食洗器などの住宅設備機器の販売をネット専業で手掛ける住設DX企業だ。
写真で見積もり、明確な総額表示、自社施工網の高い品質管理を強みに、効率的なビジネスモデルで成長してきた。
10月1日から、リフォームテクノロジー(株)(東証グロース、TSRコード: 350929149)を頂点とした持株会社体制に移行し、交換できるくん(株)(TSRコード: 047014067)は会社分割で新設され、そのグループ傘下に入った。
東京商工リサーチ(TSR)は、グループの創業者で、取締役会長に就任した栗原将氏にインタビューした。事業の道のりや今後の展望、住設業界を取り巻く環境などを聞いた。
取締役会長 栗原将氏
1975年10月生まれ、神奈川県出身。高卒後、通信機器の営業職に就く。
1998年、水道修理業「サンリフレホールディングス」を設立。
2001年、住宅設備に特化したECサイトを開設し、ネット見積りや明細のオープン化を導入。
2020年6月社名を「交換できるくん」に変更し、12月に東証マザーズ(現・グロース)上場を果たす。
2026年6月より取締役会長に就任。
―創業の経緯は
もともとは通信機器の営業マンだったが、漠然と経営者を志していた。住宅設備に強いこだわりがあったわけではなく、弟が個人事業主で水道修理を手掛けていたこともあり、一緒に水道工事業を始めた。当初は他に社員はおらず、スーツで見積りに出かけ、作業着で現場に入り、修理や工事、集金に奔走した。
2000年代に入るとネット通販が普及し、次第に親和性の高いリフォームや住宅設備機器のウェブ販売へ事業の軸足を移した。当時の住宅設備業界は、定価が明記されないカタログを業者が持ち歩き、値引きなしで見積もりを提示する不透明な価格体系が常態化し、一部で「ぼったくり」も横行していた。
こうした商慣習を打破することで成長したいと考えていた。業界でご法度とされた希望小売価格からの割引をインターネット上で明示して、同業者から激しいクレームを受けた。問屋から仕入を止められる圧力を受けたこともある。それでも顧客に喜ばれる適正な商売をするという信念で事業を続けてきた。
―ウェブ完結型の事業モデルが強みだ
事業を進めるなかで、業界特有の需要と供給のミスマッチに着目した。これが大きな転機になった。例えば、築十数年の住宅で食洗機や蛇口だけが故障した場合、買い替えのために消費者がとれる選択肢は多くない。新築時(にお願いした)工務店は少額工事に消極的のケースが多く、(別に対応先を探したとしても)水道業者の工事料金は高額で機器の提案力が乏しい。
また、街のリフォーム業者でも単価100万円規模のシステムキッチン全体の工事でないと、訪問見積りの採算が合わない。食洗機のような単価20万円程度の交換工事は訪問の手間を考慮すると赤字に転落する。
採算性の課題をウェブ販売で解決できると考えた。顧客に自ら設備の写真を送ってもらい、訪問なしでウェブ上で見積もりを完結させる。当時はネットオークションが流行り出した時期で、ユーザーが写真をアップロードする仕組みから着想を得た。低単価の案件でも確実に利益を生み出せる、ウェブ完結型の施工モデルを完成させた。
―社名(交換できるくん)の由来は
住宅設備は需要の発生が数年周期と長いので、顧客の記憶に長期にとどまる社名が必要だ。一般的だとリピート時に思い出してもらいにくい。強く記憶され、検索エンジンからの流入も狙える点を重視した。それでも「交換できるくん」は奇抜すぎないか、と当初は悩んだが、結果的に女性層中心に親しみやすく安心感があると評価されたと自負している。
とはいえ、ウェブ完結モデルの最大の障壁は、「ネットで工事を依頼して本当に大丈夫か」という消費者の不安だ。ネットでの買い物が一般化してきたとはいえ、高額商品でもあり、工事まで頼むにはハードルが高い。
そこで取り組んだのがIPO(株式上場)だった。最大の目的は資金調達ではなく、業界の負の側面(ネット販売に対するいかがわしいという偏見や、同業者同士の足の引っ張り合い)と決別することだった。上場のための社内体制の整備や信用を獲得することで、クリーンな企業体質をステークホルダーに向けて証明したかった。
―創業から30年が経過した。変化は
日本の住宅設備の市場は、製品の二極化(安価な量産品と高級品への分化)が進んだ一方で、基本的なビジネスモデル自体は何十年も変化していない成熟産業だ。ただ、コロナ禍を経て、非対面で住宅設備を購入・交換するという消費行動が定着したことは、当社に大きな追い風になっている。
当社の強みは、一度利用した顧客が他設備の交換時にも再度利用するリピート需要。また、自社で価格決定権を握っているため、メーカーの価格改定に対しても価格転嫁することで収益性が維持できる点だ。
これまで、営業利益率10%を目標に据え、売上だけを追わず、筋肉質で安定した事業基盤の構築に力を入れてきた。

インタビューに応じる栗原会長
―「リフォームテクノロジー」の戦略は
10月1日、「交換できるくん」を分社化し、持株会社・リフォームテクノロジーを頂点とした体制に移行した。グループ関連事業を束ねるグループ経営に変換する。
住宅設備販売や水道修理業界の中には依然として、労務管理を含むコンプライアンスやガバナンス体制の整備が十分でない事業者も存在する。上場企業として培ったコーポレート機能、コンプライアンス体制、マーケティングノウハウを駆使したマイノリティ出資や経営支援(コンサルティング・ファンド的アプローチ)は相乗効果を生むと見込んでいる。
対象企業の事業価値を向上させ、グループ化や第三者への仲介など、様々なイグジット戦略で業界全体の健全化と独自の収益システムを構築させたいと考えている。
一方、自身は代表権を退き、新体制へと権限の移譲を進めている。狙いは次世代の経営陣が自発的に思考し、機能する組織づくりだ。
創業者や経営トップが実権を握り続けると、社員や幹部は顧客や事業ではなく、常にトップの顔色をうかがうようになり、部門長が責任と権限を持つ経営者に育たない。経営の最前線から一歩退くことで、組織としての成長を目指している。
AIの台頭など社会構造が大きく変化するなかで、リフォーム関連業界全体の成長や適正化に向けて、当社グループが変革の旗振り役になれればいいと考えている。

栗原会長と「交換できるくん」ロゴ
EC市場の広がりを追い風に、コロナ禍の逆風すらビジネスチャンスととらえ、当社はネット完結型の住設機器販売の事業モデルを確立した。
これは長年、業界に身を置いて課題や非効率を見続けてきたからこそ生まれた発想だ。
一方で、成熟産業にあっても、アイデアや工夫次第で新たな事業機会や需要を生み出し、さらに掘り起こす余地があることを示した。
環境変化や顧客ニーズを捉えながら事業モデルを磨く当グループの姿勢は、多くの新興企業にとって参考になるだけでなく、成熟市場での成長戦略を考える1つのヒントとなりそうだ。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年10月29日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)