倒産前の「事業譲渡」 コロナ後に高水準 2025年度は213件、旅館,ホテルが最多
~ 「事業譲渡後の倒産」 動向調査 ~
主力事業を他社に譲渡した後、倒産手続きに入る「事業譲渡後の倒産」が、2025年度は213件発生した。2024年度は227件で、2年間の平均は220件となり、前回調査(2019年度-2023年度)の同189件を上回り、増勢が続いていることがわかった。
「事業譲渡後の倒産」」は、もともと経営不振に陥った企業が、スポンサー等に事業譲渡した後、旧会社を整理する過程で発生することが多い。ただ、近年は経営に行き詰まって破産する際、資産性の高い事業を積極的に売却・譲渡するケースが増え、「破産」の構成比が43.0%(前回調査39.0%)と、徐々に高まっている。
また、業歴50年以上の老舗企業が3割を占めた。業歴が長い老舗ほど、他社にない魅力的な経営資源を抱えていることが大きい。同時に、当該事業に携わっていた従業員の雇用も譲渡先で継続される可能性が残り、雇用面でのメリットも大きい。
一方、こうした譲渡可能な経営資源を持ちながら、倒産に追い込まれる背景には経営者の事業承継問題が大きく影響している。代表者の高齢化が加速する中で、事業承継へのアシストが急務になっている。
近年、事業再生の現場では法的整理だけに縛られない、多様な再建手法が採られるようになった。こうした動きに連動して「事業譲渡後の倒産」は引き続き、増加をたどる可能性が高い。
※本調査は倒産集計時点で、主要事業を他社へ譲渡していることが判明した事例を「事業譲渡後の倒産」と定義し、集計分析した。
※再建型倒産で、再生計画に基づいて倒産後にスポンサーなどに事業譲渡したケースは集計の対象外。
※前回調査(2024年7月実施、2019年度-2023年度の5年間が対象)に次いで2回目。

【産業・業種別】上位4産業で8割
440件の産業別は、最多がサービス業他の151件(構成比34.3%)だった。次いで、製造業の110件(同25.0%)、小売業52件(同11.8%)、卸売業45件(同10.2%)と続く、上位4産業で全体の8割(81.3%)を占めた。
サービス業他や小売業は店舗、製造業は生産設備、卸売業は商圏など、それぞれ経営の根幹になる資産を抱えている。他社でも有効活用できるメリットが件数の多さに繋がっている。
業種別 旅館,ホテルが最多の31件
さらに細かく分類した業種別は、最多が旅館,ホテルの31件(構成比7.0%)だった。
宿泊施設は典型的な装置産業で、設備投資や運転資金の負担も重く、金融債務が他業種より重くなる傾向にある。新会社やスポンサー企業への事業譲渡を通じ、旧会社の債務を切り離して再生を目指したり、オーナー変更で営業継続するケースが多い。
次いで、一般貨物自動車運送業の13件(同2.9%)、受託開発ソフトウェア業の9件(同2.0%)、土木工事業の7件(同1.5%)が続く。
ドライバーやエンジニア、建設作業員など、いずれも人手不足が深刻な業種だけに、事業譲り受けにより、人材補強につながる面が件数を押し上げているようだ。

【形態別】特別清算と破産が大半
形態別では、最多が「特別清算」の240件(構成比54.5%)で半数を超えた。
特別清算は株主総会で解散を決議後、清算手続きに入る。スポンサーや受け皿会社への譲渡のほか、企業グループ内の事業再編で別のグループ会社が引き継ぎ、旧会社を清算するケースなど、事業譲渡が既定路線のケースも多い。
次いで、「破産」が189件(同42.9%)で4割を占めた。破産手続きで会社は清算されるが、事業資産の譲渡で破産手続費用の捻出が見込まれる。また、新会社へ従業員の雇用が継続される可能性も期待される。
特別清算も破産も消滅型倒産だが、事業は別会社が引き継ぐため、再建スキームの一環として広がっている。

【負債額】最大は旧ビッグモーター
負債額別は、最多が1億円以上5億円未満が163件(構成比37.0%)。次いで、5千万円以上1億円未満が77件(同17.5%)、10億円以上が70件(同15.9%)と続く。
負債1億円以上が298件(同67.7%)と約7割を占めた。中規模の負債を抱えた倒産が多い点が特徴だ。
440件のうち、負債額の最大は中古自動車販売の(株)BALM(旧(株)ビッグモーター、TSRコード:750059338、2024年12月民事再生)で、負債831億円だった。
不正請求をはじめ大規模、かつ大胆なコンプライアンス違反の発覚を発端に、経営が悪化。伊藤忠グループなど新たなスポンサーが設立した(株)WECARS(TSRコード:861037553)に全事業を譲渡し、民事再生法を申請した。

【業歴別】老舗企業目立つ
業歴別では、10~50年未満が最多の256件(構成比58.1%)で、約6割を占めた。
次いで、50~100年未満が131件(同29.7%)で約3割を占め、老舗企業が多い。
業歴100年以上も3社あった。業歴を重ね、一定の事業基盤を持つ企業が多い。
反面、業歴10年未満は50件(同11.3%)と、全体の1割にとどまった。新興企業では譲渡対象となる事業資産が乏しく、従業員の流動化も激しいことが要因とみられる。
