「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~
「建設現場の花形」と言われる鳶(とび)職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など、建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって、採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。東京商工リサーチ(TSR)が鳶工事業の倒産を分析した。
鳶工事業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。2026年1-8月の倒産は110件(前年同期比26.4%増)で2010年同期(101件)以来、16年ぶりに100件を上回った。1989年以降でみると、同期間の最多はリーマン・ショックでデベロッパーの倒産が相次いだ2009年の105件だ。年間最多は2010年の148件だが、2026年は現在のペースで推移すると170件も視野に入る。
ことし8月までの110件をみると、原因別は売上不振が78件(構成比70.9%)、赤字累積が24件(同21.8%)と、業績不振が9割(同92.7%)を超える。
規模別では、資本金1,000万円未満が98件(同89.0%)、従業員数別でも10人未満が101件(同91.8%)と小・零細規模が中心だ。
都道府県別では、大阪府が11件で最も多い。次いで、愛知県9件、神奈川県と千葉県、宮城県が各8件で大都市が多い。東京都は4件で、再開発の勢いの違いもありそうだ。
特別原因では、「物価高倒産」が9件(前年同期3件)と急増している。コスト上昇への対応力に注目することが必要だ。
また、「人手不足」倒産は19件(同10件)で、これもほぼ倍増している。19件のうち、従業員退職7件(同3件)、人件費高騰(同2件)、求人難(同1件)、後継者難(同4件)は各4件だった。厚生労働省によると7月の有効求人倍率は1.18倍(全業種)だが、鳶職人を含む建設躯体工事従事者は7.94倍に達する。若者の鳶職人離れが、建設現場で静かに危機感を生みつつある。

業績は二極化
5期連続(最新期は2025年度)で業績を比較できる鳶工事業者1万5,941社を分析した。
全体の売上高合計は3兆2,165億円(前期比4.5%増)で、4期連続で増収だった。また、純利益も1,045億円(同24.4%増)で、3期連続増益だった。鳶工事業は業績の上では活況を呈しているようにみえる。だが、完工高1億円未満の業者は、赤字企業が37.5%に達する。同10億円~50億円のレンジの赤字率は7.0%で、規模格差が鮮明だ。
大手・中堅と中小・零細では、採用や価格交渉力で差が生まれている。次世代につなげる「鳶」技術の伝承を含め、小規模企業への支援体制の整備も求められている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年9月10日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)