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金利0.50%上昇で、赤字企業率は29.4%に悪化 平均経常利益は不動産業、金融・保険業で影響大

~ 中小企業の「金利上昇」業績影響調査 ~


 日銀のマイナス金利解除後、企業向け貸出金利が上昇局面を迎えている。2016年1月のマイナス金利の導入決定後、低金利での資金調達環境が続いた中小企業では利払い負担の増加が収益圧迫を招いている。
 その一方で、預金や貸付金から得る受取利息は上昇する。企業の推定支払利子率、推定受取利子率に対し、それぞれ0.25~1.00ポイントを一律に加え試算すると、2025年の決算を基に金利が0.50ポイント上昇した場合、平均経常利益は2025年の4,725万円から4,642万1,000円に減少し、赤字企業率は27.7%から29.4%に上昇した。

 東京商工リサーチ(TSR)は2025年(1-12月期)決算を取得した中小企業のうち、財務データで有利子負債が計上された32万1,953社を対象に、金利上昇が損益に与える影響を分析した。
 日本銀行は7月の金融政策決定会合で政策金利を1.0%に据え置いたが、経済・物価・金融情勢に応じて今後も利上げを続け、金融緩和の度合いを調整していく方針を示している。
 中小企業は、直接金融などで資金調達する大企業と比べ、金融機関等からの借入金への依存度が高い。そのため、金利上昇が赤字転落の引き金になる可能性がある。
 日銀会合では利上げによる経済下押しの影響波及まで1年から1年半程度のタイムラグがあるとの意見も示された。政策金利の引き上げが実際の企業向け貸出金利にどう波及するか、企業収益への影響を引き続き注視することが必要だ。
※本調査の対象は、財務データ上に有利子負債が計上された中小企業32万1,953社(2025年1-12月期)を抽出し、分析した。中小企業の定義は「中小企業基本法」に基づく。


金利上昇で中小企業の赤字企業率が上昇

 2025年1-12月期の財務データを取得できた中小企業を対象に、受取利息と支払利息割引料から推定した利子率が上昇した場合の経常利益や赤字企業率を試算した。
 2025年1-12月期の中小企業の平均支払利息は450万3,000円、平均受取利息は207万円で、平均負担額は243万3,000円だった。
 平均経常利益を試算すると、2025年の4,725万円から、0.25ポイント上昇で4,683万5,000円、0.50ポイント上昇で4,642万1,000円に減少。1.00ポイント上昇では4,559万1,000円と、2025年から3.5%減少(165万9,000円減)する。
 赤字企業率も2025年の27.7%から、0.50ポイント上昇時には29.4%、1.00ポイント上昇時には31.0%へ悪化する。
 金利上昇は支払利息、受取利息を押し上げるが、中小企業全体では支払利息の増加が受取利息の増加を上回り、損益悪化と赤字企業の増加が進む試算となった。

金利上昇幅別 中小企業の収益状況比較表

金利上昇幅別 平均経常利益と赤字企業率試算

金利上昇時の赤字企業率、全10産業で悪化 不動産業で影響大きい

 産業別で試算した。0.50ポイント上昇時の赤字企業率は、10産業すべてで2025年を上回り、金利上昇が幅広い産業へ損益悪化を及ぼす。なかでも不動産業は0.50ポイント上昇時に21.7%から27.0%へ5.3ポイント悪化し、悪化幅が突出した。不動産業は土地・建物などの取得で借入金に依存するため、金利上昇による支払利息の増加が収益を圧迫しやすい。このほか、金融・保険業が2.7ポイント、製造業が2.4ポイントと悪化幅が大きかった。
 悪化幅が小さかったのは、情報通信業0.9ポイント、建設業1.2ポイントの順。
 金利が1.00ポイント上昇すると、不動産業の赤字企業率は31.0%で、2025年から9.3ポイント悪化する。金利悪化幅が大きくなるほど産業間の影響差も鮮明に出た。
 
 平均経常利益は、不動産業や金融・保険業への影響が大きい。不動産業は2025年の1億2,373万円から、0.50ポイント上昇時には1億1,725万3,000円へ647万7,000円減少した。金融・保険業は4億2,993万5,000円から3億6,845万6,000円へ6,147万8,000円減少する。試算対象となる資産・負債額そのものが大きく、受取・支払双方に同じ悪化幅を加えた場合、利益変動額が大きくなった。
 建設業と情報通信業では、金利上昇後の平均経常利益がわずかに増加する。0.50ポイント上昇時は、建設業は2025年の1,733万3,000円から1,733万6,000円へ3,000円増加、情報通信業も4,079万1,000円から4,097万3,000円へ18万2,000円増加する。全体の金額ベースでは、両産業とも受取利息の増加が支払利息の増加を上回り、平均経常利益を押し上げる結果となった。
 ただし、赤字企業率は建設業が30.5%から31.7%へ1.2ポイント、情報通信業も24.7%から25.7%へ0.9ポイント悪化する。金額ベースでは、一部企業の受取利息増加が全体を押し上げる一方、企業数では支払利息の増加が受取利息の増加を上回る企業が多く、平均経常利益は増加しても赤字企業率は悪化した。

産業別 上:赤字企業率試算 下:平均経常利益試算表

業種別 水産養殖業、不動産関連で影響大

 中分類別で、対象企業が50社以上の業種の赤字企業率の推移を算出した。
 金利が0.50ポイント上昇した場合、中分類別では水産養殖業の赤字企業率が19.6%から26.7%へ7.1ポイント悪化し、悪化幅が最も大きかった。次いで、金利上昇の影響を受けやすい不動産関連で不動産取引業が5.8ポイント、不動産賃貸業・管理業が4.7ポイント悪化で続いた。

地区別 赤字企業率の悪化幅は近畿が最大

 地区別で試算した。金利0.50ポイント上昇時の赤字企業率は、全9地区で2025年を上回った。悪化幅が最も大きいのは近畿で、23.8%から26.4%へ2.5ポイント悪化した。次いで、四国の1.87ポイント悪化、中国の1.84ポイント悪化、東北の1.69ポイント悪化と続く。一方、北陸は26.1%から27.3%へ1.2ポイントの悪化にとどまり、最も小さかった。
 赤字企業率は、0.50ポイント上昇時には最高が東北36.8%(2025年35.1%)。次いで、四国の34.1%(同32.2%)、中国の32.4%(同30.6%)だった。もともと赤字企業率が高い地区と、金利上昇による悪化幅が大きい地区は必ずしも一致せず、近畿は2025年の赤字企業率が23.8%と9地区で最も低い一方、0.50ポイント上昇時の悪化幅は最も大きかった。
 平均経常利益は、金利上昇時には9地区全てで減少する。0.50ポイント上昇時は、減少額が最も大きい関東は、2025年の6,890万円から6,735万円へ155万円減少した。次いで、近畿が85万円減少、四国が54万3,000円減少した。
 赤字企業率の悪化幅が最も大きかった近畿は、平均経常利益の減少額でも関東に次いで大きかった。一方、関東は平均経常利益の減少額が最大だったものの、赤字企業率の悪化幅は1.60ポイントと比較的低かった。

地区別 上:赤字企業率試算 下:平均経常利益試算表

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