「百貨店アパレル」コロナ禍後の最高業績 ブランド価値と販路開拓で、二極化が進む
~ 2026年「百貨店向けアパレルブランド」動向調査 ~
百貨店アパレルブランドで知られる主な上場アパレル12社(以下、百貨店アパレル)の2025年度の業績(連結ベース)は、売上高合計が1兆1,797億6,800万円(前年度比11.1%増)、利益合計は555億2,400万円(同1.6%増)だった。
アパレル業界は、コロナ禍の臨時休業や外出自粛で業績低迷に陥った。だが、収束後は内需の反動増とインバウンド需要で急回復している。コロナ禍後は、富裕層向けの高額アパレルの購買意欲が高まっているが、その足は都心部の旗艦店に向いている。さらに、百貨店アパレルの一部は高価格帯へのシフトや、ブランド価値向上の戦略が奏功し、2025年度の百貨店アパレルの売上高は過去6年間で最高を記録した。
利益は、原材料高や人件費などの上昇で多重のコストアップが負担となり、増益6社、減益6社と二極化の様相を呈している。
主戦場である百貨店業界は、全国主要58社の2025年度決算で売上高合計が2.7%減、利益合計が24.6%減と、8割以上(84.4%)が減収に追い込まれた。特に、地方や郊外の百貨店で閉店が相次ぎ、百貨店空白県は現在の4県からさらに増える見込みだ。
東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースで、主要な百貨店アパレルの上場12社の業績を分析した。百貨店アパレル12社の2025年度の業績は、増収増益を維持したが、利益は1.6%増と鈍化が目立った。11社(91.6%)が黒字だったが、コスト吸収の格差が出て半数の6社(50.0%)が減益に追い込まれた。特に、地方や中間層向け市場が主戦場の百貨店アパレルは、低迷から脱け出せず明暗を分けた格好だ。
百貨店ブランドの付加価値向上に寄与した百貨店アパレルだが、富裕層とインバウンド中心の購買層にシフトし、中間価格帯の婦人服や総合アパレルは苦戦している。今後、“脱”百貨店の動きと同時に、百貨店に残るブランドも売場の見せ方、接客、外商のほか、訪日客対応までを含む戦略が課題になっている。
※本調査は、百貨店向けインショップを展開する上場企業12社が対象。
連結業績を採用し、最新決算(2025年度)は2025年4月~2026年3月までに迎えた決算を指す。
百貨店アパレル売上高 コロナ禍以降で最高
百貨店アパレルの上場12社の2025年度の売上高合計は、1兆1,797億6,800万円(前年度比11.1%増)だった。インバウンド需要や高価格帯が寄与し、過去6年で最高を記録した。
利益合計は555億2,400万円(同1.6%増)で増益を維持した。
近年は高価格帯商品や価格改定(値上げ)が売上高を押し上げたが、仕入れコストや人件費の上昇が収益を圧迫し、前年度比1.6%増の微増にとどまった。値上げ効果は一時的で、ブランド価値の向上と収益強化が求められる。

売上高100億円以上が約8割
百貨店アパレルの売上高分布は、売上高100億円以上が10社(構成比83.3%)で最多だった。50億円以上100億円未満と10億円以上50億円未満はそれぞれ1社(同8.3%)だった。
売上高トップは、「アンタイトル」や「インディヴィ」、「タケオキクチ」など60以上のブランドを展開するワールド(兵庫県)。
2025年度の売上高伸長率は、 「▲5~0%未満」が5社で最も多かった。次いで、「10~100%未満」の増収が3社、「5~10%未満」の増収が2社と続く。
売上高伸長率のトップは、売上高トップのワールドで25.8%増だった。次いで、「23区」や「自由区」をブランド展開するオンワードホールディングス(東京都)が13.6%増、パルグループホールディングス(大阪府)が12.9%増の順。
売上伸長率の上位は、主力ブランドの選択と集中を進め、ECサイトや自社アプリへの投資継続でネットと実店舗の連携が強化され、売上伸長に寄与した。

今期業績見込み 約6割が増収増益
百貨店アパレル12社の2025年度の業績と、2026年度の業績見込みを比較した。 2025年度の決算で「増収増益」、「増収減益」、「減収増益」、「減収減益」が各3社(構成比25.0%)と均衡し、販売力とコスト対応力の差が露呈した。
一方、各社の2026年度業績見込みは、「増収増益」が7社(構成比58.3%)と約6割を占めた。以下、「増収減益」が4社(同33.3%)、「減収増益」が1社(同8.3%)で、期首の赤字予想は1社にとどまった。
百貨店アパレルは、引き続き高価格帯の販売強化と主力ブランドへの経営資源を集中するとみられる。だが、円安や物価高に歯止めが掛からないなか、ECサイトや自社アプリへのデジタル投資やインバウンド需要の取り込みが業績を左右する状況が続く。

売上高ランキング
売上高と伸長率でトップのワールド(25.8%増)は、60以上のブランド展開の強みを活かし、不採算ブランドの廃止や実店舗のスクラップ&ビルドを迅速に進めた。また、ECプラットフォームや自社アプリで集約した会員データをAI需要予測にダイレクトに反映し、過剰在庫を作らない仕組みを定着。セールに依存しないビジネスモデルを確立により、コスト上昇を吸収している。
2位のオンワードホールディングス(13.6%増)は、「23区」や「自由区」など百貨店で認知度が高い主力ブランドに経営資源を集中。さらに、高価格帯へのシフトでブランド価値の向上につなげた。また、実店舗の販売員がEC上でコーディネートを提案する戦略が成果を上げ、店舗減をネット売上でカバーした。
3位のパルグループホールディングス(12.9%増)は、百貨店向けセレクトショップを維持しながら、ライフスタイル雑貨など成長分野のポートフォリオが奏功した。自社アプリ会員を中心に、SNSマーケティングで流行の移り変わりが激しいトレンド商品の定価販売に努め、二ケタ成長を維持した。
以下、4位はレディース・メンズファッションからゴルフウェア、ストリートファッションまで幅広く展開するTSIホールディングス(6.6%増)、5位はレディースアパレルを中心に手がけるクロスプラス(3.4%減)と続く。
