「遊園地・テーマパーク」値上げも成長は鈍化 収容客数の限界、物価高が業績の逆風に
~2026年 「遊園地・テーマパークなど運営企業」業績動向調査 ~
全国の主な遊園地・テーマパークの運営会社、122社の業績は、伸びが鈍化していることがわかった。
コロナ禍が落ち着き、国内旅行とインバウンドが活発になると同時に、各地の遊園地やテーマパーク(動物園、植物園、水族館も含む)の業績は改善した。だが、物価高や人件費高騰で原価やサービス価格が上昇し、値上げだけでは利益の確保が難しくなっている。
人気の施設では収容可能客数が限界に達し、客数の増加による業績拡大が見込めない局面を迎えている。こうした状況を背景に、主な遊園地・テーマパークは、客数増加に頼らない成長に向けた施策が問われている。
東京商工リサーチ(TSR)は、国内の主な遊園地・テーマパークを運営する122社の業績を調査した。
122社の2025年度の売上高合計は1兆931億円(前年比3.4%増)で、増収は74社(構成比60.6%)と6割を超えたが、増収企業は前年の84社から10社減少した。利益は122社のうち121社で判明し、増益は63社(同52.0%)と5割を超えた。増益企業は前年の57社から6社増加した。
※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(390万社)から、日本産業分類(小分類)「遊園地」「テーマパーク」「動物園・植物園・水族館」から、2025年度(2025年4月期~2026年3月期)を最新期とし、5期連続で売上高が比較可能な122社と、122社中当期純利益が比較可能な121社を抽出し、分析した。「博物館・美術館」は対象外とした。
※対象とした小分類の事業以外も展開する企業については、他事業も含めた合計の売上高・利益が対象。
※調査対象とした5期の期間内に企業・運営施設の双方が新設されたケースは、当該企業の設立から2025年度までの決算期数が対象。
※調査対象とした5期の期間内に、他事業を展開する親会社などに合併された対象施設運営企業は、合併元・合併先ともに集計対象外。
※売上高ランキングは、上場企業および上場企業の連結子会社、官報やホームページなどで売上高が判明している企業を対象とした。ハウステンボス(株)は2025年度の売上高をホームページで公開しているが、5期連続の売上比較が不可能なため、業績推移の算出対象の売上高122社、利益121社には含まない。
利益伸長率は鈍化、2026年度業績にとっての悪材料も複数存在
主な遊園地・テーマパーク運営の122社の2025年度の売上高合計は1兆931億円(前年比3.4%増)で、4期連続増収だった。利益も、5期の比較可能な121社の合計は1,577億円(同3.0%増)で、4期連続の増益となった。
日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の訪日外客数がすべての月で前年同月を上回り、インバウンド消費と国内訪問客の増加が業績拡大を後押しした。
だが、遊園地やテーマパークの収容可能客数には物理的限界があるほか、物価高や人件費の高騰で入場料や飲食、サービス提供価格が上昇し、売上高と利益の増加率は年々鈍化している。
2026年1月の訪日外客数は2022年1月以来、4年ぶりに前年同月を下回ったが、これまでの右肩上がりの増加率を維持するのが難しくなっている。
2026年2月の米国とイスラエルによるイラン攻撃以来、世界の航空運賃が上昇しており、国内旅行・インバウンド双方の旅行需要への悪影響が懸念される。遊園地やテーマパークの運営会社はこれまでと異なる企業努力が求められそうだ。

損益別 黒字が約8割も減益が半数近く
利益が判明した121社の2025年度の最終損益は、黒字が前年度から1社増加し95社(構成比78.5%)と8割近くを占めた。一方、赤字は26社(同21.4%)で、前年から1社減少した。
増益企業は63社(同52.0%)で、前年度から6社増加した。ただ、2023年度との比較では3社減少した。減益企業は56社(同46.2%)で前年度から3社減少したが、2023年度からは14社増加しており、収益の落ち込みがジワリと顕在化している。
コロナ禍の収束で、来場者の急増が増益に直結したが、円安・物価高の局面が続き、増益の難易度は高くなっている。

売上高 増収企業が約6割、売上は5%未満の増収が最多
122社の2025年度の売上高は、増収が74社(構成比60.6%)と6割を占めたが、前年度の84社から10社減少した。一方、減収は46社(同37.7%)で、前年度の34社から12社増加した。
売上高増減率は、「5%未満の増収」が33社(同27.0%)で、122社のうちの4分の1以上だった。次いで、「10~100%未満の増収」が24社(同19.6%)、「5~10%未満の増収」と「▲10~▲5%未満の減収」が各17社(同13.9%ずつ)で続く。

中部地区が増収企業比率トップ
地区別の増収企業比率は、中部がトップで83.3%(集計対象社数18社)だった。次いで、九州が75.0%(同12社)、関東が65.0%(同40社)、中国が60.0%(同5社)、近畿が52.2%(同23社)と続く。
増収企業比率が50%を下回ったのは東北のみで、増収企業率は12.5%(同8社)と低かった。
北陸は、集計対象の企業がゼロだった。

売上高トップは(株)オリエンタルランド
売上高トップは(株)オリエンタルランド(東京ディズニーリゾート)の5,881億7,100万円(前年度比2.9%増)。入場者数は前年比で微減だったが、変動価格制による高価格帯チケットの構成比が増加したことや、時間を指定することでアトラクションなどの待ち時間を短縮できる「ディズニー・プレミアアクセス」の販売が好調だったこともあり、ゲスト1人当たり売上高が過去最高を更新したことなどが増収に寄与した。
次いで、(株)バンダイナムコアミューズメント(ナムコ・ナンジャタウン、浅草花やしき)の975億4,900万円(同5.8%減)、(株)東京ドーム(東京ドームシティアトラクションズ)の615億1,300万円(同6.5%増)、F1の来場者増などで大幅増収のホンダモビリティランド(株)(鈴鹿サーキットパーク、モビリティリゾートもてぎ)の443億9,100万円(同43.4%増)と続く。
主な遊園地・テーマパーク運営大手は、中長期的な付加価値の向上や売上拡大に向け積極的な投資を始めている。
オリエンタルランドは2035長期経営戦略で、2028年度のディズニークルーズ就航を掲げている。就航に向け、2026年4月には(株)オリエンタルランド・クルーズ(TSRコード:045345023)を設立した。東京ディズニーリゾートを40年以上運営して積み重ねたノウハウを活用し、就航から数年後に売上高は約1,000億円、年間乗客数約40万人、営業利益率は既存のテーマパーク事業程度を見込む。就航2年目の2029年度にはクルーズ事業の黒字化も掲げている。また、稼働率の高いホテル事業では、東京ディズニーリゾート周辺でのホテル増設も検討している。
(株)サンリオエンターテイメントは、周辺自治体とも提携し、運営するハーモニーランド(大分県日出町)の「エンタメリゾート化」に向け始動した。2026年6月に取得前の広さの3.8倍規模の30.85haの土地を取得したと発表。今後、約10年かけて老朽化する施設の更新、大分の観光資源である温泉も備えた長期滞在型ホテル建設などに着手する予定だ。昨年は大阪・関西万博の開催に合わせ、万博開催期間限定で大分空港を「大分ハローキティ空港」と改称し、空港内の装飾も変更し、ハーモニーランドの集客に注力した。この施策は好評で、2度の期間延長で2027年3月末まで続く予定。

遊園地・テーマパークは、コロナ禍が落ち着くと業績は急拡大したが、物価高や人件費高騰による原価の向上、施設によっては老朽化に伴う更新や収容可能客数の限界も重なり、収益環境は徐々に厳しくなっている。また、受入能力を超えた来場者の増加は、顧客満足度の低下を招き、リピーター獲得に悪影響を及ぼす可能性がある。一方で、収容可能客数に余力のある地方の中小規模の施設では、人口減少や少子高齢化で来場客数の増加が見込みにくい状況だ。
一部の人気施設を除き、変動価格制の導入による収益強化は難しい。一方で、厳しい収益環境のもとで利益を維持・増加させるため、リスクを伴う大型投資を決断するケースも想定される。また、施設内のグッズ販売、飲食なども含む体験価値の向上などで、入場料やパスポート以外での客単価の上昇やリピーター獲得など、各社・各施設の特徴・強みを総動員する営業戦略が必要になりそうだ。