• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

調味料メーカーに異変、前年(1-7月)倒産ゼロが8件に ~ 飲食店や食品メーカーの苦境に連鎖、目立つ老舗の対応遅れ ~

 味噌や醤油などの調味料メーカーの倒産が急増している。2026年は7月までに8件発生し、過去30年で最多を更新した。前年同期はゼロだった。8件のうち半数は業歴50年以上の老舗だ。
 輸入原料・食材の仕入や製造コストが上昇するなか、価格転嫁するにも一般消費者の財布の紐は固く、他社の動向は無視できない。また、居酒屋やラーメン店など飲食業の倒産も過去30年で最多を記録するなど、業務用のエンドユーザーも苦境にある。
 調味料メーカーで、何が起きているのか。



 調味料(味噌、醤油、ソースなど)製造業の倒産(負債1,000万円以上)を分析した。過去30年の1-7月の倒産は、2008年の5件が最多だった。2025年はゼロだったが2026年は8件に急増した。
 8件を業歴別でみると、50年以上が4件(構成比50.0%)と半数を占めた。原因別では、販売不振が6件(同75.0%)、負債額別では1億円以上が4件(同50.0%)と、老舗で一定規模を誇る企業の倒産が目立つ。
 「物価高」倒産は4件(構成比50.0%)で半数を占めている。このほか、2件(同25.0%)が「人手不足」関連倒産だった。押し寄せる仕入や製造コストの上昇が調味料メーカーの経営を圧迫している。

 佐世保市の大日興産(株)(TSRコード:932002200)が5月29日、佐賀地裁から破産開始決定を受けた。調味料エキスやラーメンスープなどを製造し、年商10億円程度をあげていた。だが、原材料や燃料の高騰分の価格転嫁が遅れ、業績が悪化していた。
 また、6月8日には(株)調味(TSRコード:400483521、愛知県半田市)とグループ2社が名古屋地裁から破産開始決定を受けた。スープの素やラー油などを製造していた。しかし、コロナ禍の受注減に加え、最近の原材高騰が響き、事業継続が困難となった。

調味料製造業の倒産 件数推移



 調味料の基本「さしすせそ」は、料理に欠かせない。素材に深く染み入り、隠し味としても機能する。同じジャンルでもメーカーごとに風味は異なり、それぞれに私たちを愉しませてくれる。だが、取引先の苦境や業態転換、価格競争に抗うことが難しくなっている。縁の下の力持ちの調味料メーカーの倒産急増は、飲食店や食品業全体の変化を映し出している。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年8月19日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~

「建設現場の花形」と言われる鳶職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。鳶工事業の倒産を分析した

2

  • TSRデータインサイト

「渋谷区」が倒産最多、2年連続も視野 ~ 倒産企業の半数が業歴10年超、新設法人は伸び鈍化 ~

街の主役は若者から大人へ。再開発で変貌を遂げる「シブヤ」に異変が生じている。 渋谷区に本社を構える企業倒産(1-8月)は、全国の市区郡別で最多の123件に達した。昨年(2025年1-12月)は161件で2007年以来、18年ぶり全国ワーストだった

3

  • TSRデータインサイト

2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4%

「本離れ」が言われて久しいが、書店経営が回復に転じた。全国の主な書店304社の2025年度の売上高合計は、6,121億4,000万円(前年度比1.6%増)、利益合計は40億2,600万円(同365.4%増)で、売上高は微増だったが、利益は前年度の4.6倍に急回復した。

4

  • TSRデータインサイト

翻訳業が苦境、利益は3年で7割減 ~ AIと競合で破産したケースも ~

AIが翻訳業界にドラスティックな変化を迫っている。日進月歩で精度が向上するなか、言語間の壁が低くなっている。この余波が翻訳業界に広がり、業績は3期連続で減収減益に追い込まれた。

5

  • TSRデータインサイト

「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超

9月24日は「畳の日」。全国畳産業振興会が4月29日と9月24日の年2回定めている。日本の住文化の伝統を引き継ぐ畳のすばらしさをアピールすることが目的だが、畳製造業が長期低迷に陥っている。 全国の主な「畳製造業」256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円(前年度比1.3%減)だった

TOPへ