全東信、幹部逮捕時(24年)の「調査報告書」 ~ 営業至上主義、「新規獲得」重視の風土 ~
決済代行の(株)全東信(TSRコード: 575448075、大阪府)が破産してから約1カ月。7月6日に破産開始決定を受ける2年前の2024年1月、東京支社の営業本部長が私電磁的記録不正作出・同供用容疑で警視庁に逮捕されたが、その後に全東信が関係先に送付した「調査報告書」の内容が判明した。
報告書には、本部長が営業担当を務めた複数の加盟店について、経営者と異なる人物名義でのクレジットカード会社に加盟申請し、対価として加盟店から金銭を受領していた旨が記載されている。営業成績向上を急ぐ余り、加盟店獲得を重視する企業風土があった、との記載もある。
調査は全東信の副社長(当時)が実施した。
2023年1月~2024年1月に、本部長が担当した加盟店のうち、不正の可能性が高い955店舗を調査した。その結果、955店舗のうち、923店舗は申込書の内容と運営実能に相違がないことを確認。残る32店舗は連絡がつかないなど申込書の内容と運営実態の一致を確認できなかったとしている。そのため、「クレジットカード各社とも協議の上、加盟店契約の解除を行う予定」と記載している。
聞き取りを行ったものの、本部長以外に不正申込みを行った従業員の存在は確認できなかったという。一方で、本部長以外が営業担当の店舗についても、「適宜調査を行い、内容確認を行っていく」と記載されている。
報告書は、東京支社が競合他社との熾烈な加盟店獲得競争のなかで営業成績向上を急いだと背景を分析。その上で、「新規加盟店獲得を重視する企業風土があった」と結論付けた。
さらに、再発防止策にも触れている。
1.新規の加盟店申請において、本人確認を徹底する。
2.加盟店契約締結にあたっては、営業担当者以外の者が現地訪問や所在地確認を行い、加盟店登録内容と一致しているかを確認する。
3.前項の確認作業は、加盟店契約締結済みの店舗も順次行い、全加盟店のモニタリングを強化する。
4.改めて役員をコンプライアンス統括責任者、営業本部長、営業部長をコンプライアンスリーダーとするコンプライアンスにかかる責任主体の明確化を図る。
5.定期的な社内研修を行い、コンプライアンス意識の醸成を維続的に図る。
全東信としては、報告書をもって関係先への火消しを図った格好だ。だが、逮捕者を出しているにもかかわらず、社内調査に留まっており、深層に迫った報告書になっているとは言い難い。
コンプライアンス違反を犯した非上場企業に対しては、デットガバナンスや取引先ガバナンスが重要になる。このタイミングで与信を見直したのか。全東信が破産した今、視線はその先に向かう。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年8月4日号掲載「取材の周辺」を再編集)