• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

街の歯医者さん6,590社 売上高が1兆円を突破 売上5億円未満が95.8%、業績は二極化が鮮明に

~2025年「歯科診療所」業績動向調査~


 ”歯の健康は全身に影響する”。全身の病気予防にもつながる「歯科診療所」は日常に欠かせない存在だ。

 全国の主な「歯科診療所」(歯医者さん)6,590社の2025年の売上高合計は、1兆282億700万円(前年比3.8%増)、純利益合計は303億8,000万円(同4.1%増)で、人口が減少する中でも着実に市場を拡大していることがわかった。
 売上高は4年連続の増収だったが、増収3,781社(構成比57.3%)、減収2,790社(同42.3%)と業績は二極化が鮮明になっている。
 2026年上半期(1-6月)の歯科診療所の倒産は、15件(前年同期比25.0%増)で、過去20年間で2番目に多かった。歯科医療は、従来の待ちの姿勢から、デジタル歯科医療、自費診療、高齢化対応、の3分野で成長が期待されている。こうした分野で、独自の技術を研鑽できるかが生き残りの分岐点になっていくだろう。

 全国の主な「歯科診療所」6,590社の売上分布は、売上高5億円未満の中小・零細規模が6,314社(構成比95.8%)と大半を占める。虫歯などの治療から、予防・審美などにニーズが広がり、差別化には技術だけでなく、デジタルレントゲン、インプラント機器など高額な投資も必要だ。
 さらに、人件費の上昇や銀歯など貴金属の値動き、中東情勢の影響による医療品等の値上がりで、「歯科診療所」を取り巻く環境は厳しさを増している。
 2026年度(令和8年度)の診療報酬改定で、「歯科診療所」は歯科技工物を製作する「歯科技工所」との連携強化が盛り込まれた。どちらか一方では成り立たず、両方があってこそ成り立つ関係だけに、「歯科診療所」の企業努力だけでは収益力向上は難しい局面を迎えている。
※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、2025年の業績(2025年1月~2025年12月期)を最新期とし、5期連続で業績が判明した「歯科診療所」6,590社を抽出、分析した。調査は今回が初めて。

「歯科診療所」の売上高・利益は順調に拡大

 全国の主な「歯科診療所」6,590社の2025年の業績は増収増益で、売上高合計は1兆282億700万円(前年比3.8%増)、純利益合計は303億8,000万円(同4.1%増)だった。

 売上高は4年連続で増収が続くが、純利益合計は2023年は264億円台まで落ち込んだ。2024年から2年連続の増益で復調の兆しはみえるが、増益スピードは鈍化している。
 「歯科診療所」は歯のクリーニング等の定期検診で、売上確保のきっかけを得ている。だが、人件費の上昇や診察・治療に必要な医療品の機材、消耗品の値上がりで、保険診療だけでは利益確保に苦慮している状況が浮かび上がる。

「歯科診療所」の業績推移

売上高5億円未満が9割超

 売上高別では、1億円未満が3,292社(構成比49.9%)で最も多い。次いで、1~5億円未満が3,022社(同45.8%)、5~10億円未満が206社(同3.1%)で続く。

 売上高5億円未満が95.8%を占め、多くは個人経営で地域密着型の小・零細規模が占めている。

「歯科診療所」売上高別

増収企業の比率が2.5ポイント増

 売上高の増減収別では、2025年は増収が3,781社(構成比57.3%)、減収は2,790社(42.3%)だった。2024年は増収が3,611社(同54.8%)、減収は2,965社(同44.9%)で、増収企業の比率が2.5ポイント増加した。

 増収企業と減収企業の二極化が表れている。

「歯科診療所」対前年増減収別

増益企業の比率が1.3ポイント減

 利益面は、2025年は増益が3,180社(構成比48.2%)、減益が3,393社(同51.4%)だった。2024年は増益が3,266社(同49.5%)、減益が3,306社(同50.1%)で、増益企業が1.3ポイント減少した。

 また、2025年の黒字企業は4,381社(構成比66.4%)で、赤字企業2,209社(同33.5%)を上回った。過去2年と比較しても黒字企業と赤字企業の割合は大きく変わらない。

「歯科診療所」対前年増減益別

2025年休廃業・解散件数は倒産の4.8倍

 休廃業・解散は、2025年が125件(前年比9.4%減)で、倒産(26件)の4.8倍に達する。倒産が増加傾向にあるなか、休廃業・解散という形で市場から静かに退出する歯科診療所の多さは、業績だけでなく事業承継等の歯科業界の課題も透けて見える。

「歯科診療所」倒産と休廃業・解散 年(1-12月)件数推移

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~

「建設現場の花形」と言われる鳶職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。鳶工事業の倒産を分析した

2

  • TSRデータインサイト

「渋谷区」が倒産最多、2年連続も視野 ~ 倒産企業の半数が業歴10年超、新設法人は伸び鈍化 ~

街の主役は若者から大人へ。再開発で変貌を遂げる「シブヤ」に異変が生じている。 渋谷区に本社を構える企業倒産(1-8月)は、全国の市区郡別で最多の123件に達した。昨年(2025年1-12月)は161件で2007年以来、18年ぶり全国ワーストだった

3

  • TSRデータインサイト

2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4%

「本離れ」が言われて久しいが、書店経営が回復に転じた。全国の主な書店304社の2025年度の売上高合計は、6,121億4,000万円(前年度比1.6%増)、利益合計は40億2,600万円(同365.4%増)で、売上高は微増だったが、利益は前年度の4.6倍に急回復した。

4

  • TSRデータインサイト

翻訳業が苦境、利益は3年で7割減 ~ AIと競合で破産したケースも ~

AIが翻訳業界にドラスティックな変化を迫っている。日進月歩で精度が向上するなか、言語間の壁が低くなっている。この余波が翻訳業界に広がり、業績は3期連続で減収減益に追い込まれた。

5

  • TSRデータインサイト

「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超

9月24日は「畳の日」。全国畳産業振興会が4月29日と9月24日の年2回定めている。日本の住文化の伝統を引き継ぐ畳のすばらしさをアピールすることが目的だが、畳製造業が長期低迷に陥っている。 全国の主な「畳製造業」256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円(前年度比1.3%減)だった

TOPへ