2025年度「上場企業の不動産売却」 84社 地価上昇で高額化進む、譲渡損益総額は1.8倍
~ 2025年度「上場企業 不動産売却」調査 ~
東京証券取引所に株式上場する3,739社のうち、2025年度の国内不動産の売却を開示したのは84社(前年度85社)で、前年度を1社下回った。また、売却地の総面積は74社が公表し、合計145万8,023平方メートル(前年度157万494平方メートル、公表70社)だった。公表社数は4社増加したが、面積は縮小した。
譲渡益のトップは、NIPPON EXPRESSホールディングス(プライム)の742億6,500万円。次いで、日産自動車(同)の739億500万円、味の素(同)の381億円の順だった。市場別では、スタンダードが43社(同50社)で、前年度に続き最も多かった。
譲渡損益の公表は78社で、総額5,287億3,400万円だった。前年度2,918億5,500万円(81社)から1.8倍に増加し、現在の東証3市場を対象にした2022年度以降、2023年度(5,774億5,600万円)に次ぐ高水準となった。78社のうち、譲渡益を計上したのは74社で、9割以上(構成比94.8%)を占めた。前年度(同93.8%)から1.0ポイント上昇した。
売却地の面積が合計1万平方メートルを超えたのは27社(前年度24社)で、前年度の1.1倍に増加した。売却地の公表面積トップは、堺化学工業(東証プライム)の43万7,093平方メートルで、福島県の産業廃棄物最終処分場を売却した。
保有不動産売却の動きは、コロナ禍の赤字補填や働き方の変化で広がったが、こうした売却が一巡し、2025年度は84社と3年連続で減少した。ただ、都心部を中心に地価が高騰し、多額の譲渡益を計上するケースが目立った。
※本調査は、東証プライム、スタンダード、グロース上場企業3,739社(2026年3月末時点)を対象に、2026年6月19日までに2025年度(2025年4月~2026年3月)における国内不動産(固定資産)の売却を開示した企業を集計、分析した(契約日基準、各譲渡価額・譲渡損益は見込み額を含む)。
※東証の上場企業に固定資産売却の適時開示が義務付けられているのは、原則として譲渡する固定資産の帳簿価額が純資産額の30%に相当する額以上、または譲渡による損益見込み額が経常利益、または当期純利益の30%に相当する額以上のいずれかに該当する場合とされている。
※2022年から東証の市場再編により集計基準を変更したため、2021年度以前(東証1部・2部企業を対象)のデータはすべて参考値。
開示企業の9割が譲渡益計上
2025年の不動産売却を開示した上場企業は84社(前年度85社)で、3年連続で100社を下回った。譲渡損益の公表は78社(前年度81社)で、このうち譲渡益は74社(同76社)が公表した。総額は5,291億5,500万円(前年度比76.8%増)で、前年度(2,992億4,400万円)から大幅に増加した。
一方、譲渡損の計上は4社(前年度5社)で、前年度から1件減少し、損失額は▲4億2,100万円(同▲73億8,900万円)と前年度を大幅に下回った。
譲渡益トップは、NIPPON EXPRESSホールディングス(プライム・中核子会社の日本通運が譲渡)の742億6,500万円。以下、日産自動車(プライム)の739億500万円、味の素(同)の381億円(日本基準)の順。譲渡益100億円以上は15社(前年度5社)で都内中心に高額取引が増加した。

公表売却土地総面積 合計145万平方メートル
2025年度の売却土地の総面積は74社が公表し、合計145万8,023平方メートル(前年度157万494平方メートル、70社)で、公表社数は4社増えたが、総面積は縮小した。
売却土地面積合計1万平方メートル超は27社(前年度24社)と増加したが、このうち売却土地面積が合計10万平方メートル超は2社(同3社)に減少し、総面積は前年度を下回った。
平均売却土地面積は、1万9,703平方メートル(前年度2万2,435平方メートル)だった。
公表売却土地面積のトップは、化学工業製品製造の堺化学工業(プライム)で、43万7,093平方メートル。福島県いわき市で産業廃棄物最終処分場(管理型)として利用中の施設を売却した。
譲渡理由は、2026年3月期の顔料級酸化チタン事業の終了で、産業廃棄物の発生が大幅に減少し、産業廃棄物最終処分場を保有する目的は一定程度達成したため。
2位はアクサスホールディングス(スタンダード)の12万6,039平方メートル、3位はダントーホールディングス(同)の8万4,702平方メートルだった。
譲渡価額総額 公表25社合計で約2,441億円
譲渡価額の公表は25社(前年度17社)で、総額は2,441億500万円(同1,785億5,700万円)だった。トップは、日産自動車(プライム)の970億円。2位は、味の素(同)の451億円、3位は雪印メグミルク(同)の236億円の順。NIPPON EXPRESSホールディングスは事前開示で約1,000億円としていたが、詳細は未開示。
業種別 食料品が最多の9社
業種別では、食料品が9社(前年度7社)で最多。本社や工場移転に伴い、保有資産を売却した企業が多かった。9社中、最新期の最終利益が赤字の企業は2社(構成比22.2%)にとどまる。
2位は化学・小売業・陸運業・不動産業が各7社で並んだ。
最終利益が赤字の企業数が半数を上回った業種は「その他製品」のみだった。

2026年3月に国土交通省が発表した「令和8年地価公示」は、全用途平均、住宅地、商業地のいずれも5年連続で上昇した。東京圏、大阪圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも上昇幅が拡大したが、名古屋圏や地方圏では上昇幅が横ばい、もしくは縮小の傾向も出始めた。
2025年度は不動産を売却した上場企業は微減し、平均売却土地面積も縮小したが、東京都を中心に高額取引が増加。公表した78社の譲渡損益は、5,287億3,400万円(前年度2,918億5,500万円、81社)と大幅に増加した。
コロナ禍の売却の動きが落ち着き、上場企業の不動産売却は3年連続で減少した。また、物価高騰に伴い解体費などが想定以上に上昇し、跡地活用の検討が遅れたケースもあり、地方圏を中心に物価や地価の高騰が取引を停滞させた側面もあるとみられる。
一方、製造業を中心に、企業の設備投資への意欲は旺盛だ。地価上昇で譲渡益を確保しやすい環境が続き、含み益の大きい保有不動産を設備投資の原資として有効活用する動きが今後も増える可能性がある。