牙をむく「クマリスク」 ~ BCPの見直しを迫る一方、新たなビジネス展開も ~
クマ出没による人的被害が続いている。今年も冬眠から目覚めた春以降、各地で目撃されている。地域社会の安全を脅かすだけでなく、企業活動にもリスクとなっている。
東京商工リサーチ(TSR)が2026年2月に実施した「クマ出没と企業活動への影響」調査によると、「(冬眠前に)クマ出没で対応をした」と回答した企業は7.8%(全国平均)に達する。
「クマリスク」への取り組みを取材した。
2026年2月実施のアンケートで、クマ出没について「対応をした」と回答した企業は東北で27.8%に達した。全国平均を大きく上回る結果だ。
ことし6月、福島県の電子機器メーカーの敷地にクマが侵入した。担当者は「門を常に閉門し、クマの忌避剤を導入するなどの対応を迫られた。朝方の侵入で、幸い社員の人的被害はなかった」と振り返る。
アンケートでは、「配送ルートを変更した」(東北、製造業)、「拠点を縮小・または閉鎖した」(中部、総合工事)などの声が寄せられた。クマ出没がサプライチェーンに支障を及ぼす事態になっている。
クマ出没に対応した保険、製品
一方、新たなビジネスも生まれている。東京海上日動火災保険は2025年11月、「クマ侵入時施設閉鎖対応保険」をリリースした。クマの侵入による施設の閉鎖や宿泊業などでの予約キャンセルなどの損失を補償。電気柵や威嚇装置などの安全対策費用も対象だ。
担当者は、「今まで300件以上の問い合わせがある。加入者は北海道や東北に多く、業種は宿泊業やゴルフ場の運営業者など。まだ被害はないが、施設利用者に安心・安全な環境を提供するため、加入を考えている事業者が多い」と話す。
岩手県で建材販売などを手がける橋爪商事(株)(TSRコード: 170056740、大船渡市)は6月23日、AIを駆使したクマ検知システムをリリースした。担当者は、「7月に仙台の展示会に出展した。これから導入の相談が増えるかもしれない」と期待を寄せる。
ことし5月以降、都市部でもクマ出没情報が相次いだ。環境省は7月17日、「アーバンベア対策チーム」を発足した。「クマ対策の成功事例を情報収集し、共有することで市街地での出没への対策強化を図る」(同省担当者)と語った。
クマ出没が企業活動に支障を来たしているなか、保険商品や検知システムなど、新たなビジネスも生まれている。
クマの出没は、住宅街など生活圏にも迫り、官民あげて対策が進む。顕在化するクマリスクは、BCP(事業継続計画)の見直しも迫っている。
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年8月4日号掲載「取材の周辺」を再編集)