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「雇用調整助成金」等の不正受給 累計1,973件に 倒産発生率は7.3%で通常の26.3倍

~2026年5月「雇用調整助成金不正受給公表企業」動向調査~


 コロナ禍に雇用を支えた「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給は、2026年1月から5月までに全国で72件が公表された。

 2020年4月から2026年5月までの累計は1,973件に達し、不正受給の総額は635億4,680万円にのぼることがわかった。このペースで推移すると、2026年中に累計2,000件を超える見通しとなった。

 都道府県別の不正受給の公表件数(累計)は、最多が愛知県の301件で、唯一300件を超えた。企業数が多い東京都240件、大阪府191件を大きく上回り、神奈川県151件の2倍に達した。

 累計1,973件のうち、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースで業歴が判明した1,521社を分析すると、公表時に業歴10年未満は579社と約4割(構成比38.0%)を占めた。
 また、コロナ禍で雇調金の特例措置が始まった2020年4月以降の起業も93社確認された。
 不正受給を公表された1,973件のうち、2026年5月までの倒産は146件を数える。倒産発生率は7.39%で、全国倒産の発生率0.28%(2025年度、TSR調査)の26.3倍の異常な高率になっている。
 不正受給が発覚すると、助成金の返還や追徴金などの資金のキャッシュアウトが負担になる。さらに、取引先や金融機関からの信用が失墜し、事業継続が難しくなる事を示している。 
 月次で公表される企業数はピークを越え、急激に減少している。だが、コンプライアンス違反による信用失墜からの回復は容易ではなく、今後も公表企業の経営は厳しさが続く可能性が高い。
※本調査は、雇用調整助成金、または緊急雇用安定助成金を不正に受給したとして、各都道府県の労働局が2026年5月31日までに公表した企業を集計、分析した。前回調査は1月30日発表。

雇調金不正受給公表件数・受給金額推移

雇調金等の不正受給公表件数が2,000件に迫る

 全国の労働局が公表した雇調金等の不正受給は、2020年4月から2026年5月31日までに1,973件に達した。支給決定が取り消された助成金は合計635億4,680万円で、1件あたり平均3,220万円だった。
 公表された1,973件のうち、「雇調金」だけの受給は1,170件で、約6割(構成比59.3%)を占めた。
 パートタイマー等の雇用保険被保険者でない従業員の休業に支給される「緊急雇用安定助成金」のみは253件(同12.8%)で、両方の受給も550件(同27.8%)あった。

都道府県別の最多公表は愛知県の301件、唯一300件を超える

 地区別の公表件数は、最多が関東の738件(構成比37.4%)。次いで、中部411件、近畿311件、九州173件、東北112件、中国110件、四国62件、北陸32件、北海道24件の順。 

 前回調査(2026年1月発表)からの増加率は、東北が23.0%増(21件増)で最も高く、北海道9.0%増(2件増)、近畿4.7%増(14件増)が続く。一方、中国は公表がなかった。

 都道府県別は、最多が愛知の301件で、2位の東京240件を61件上回る。次いで、大阪191件、神奈川151件、千葉105件が続き、上位の5都府県は100件を超えた。
 以下、福岡82件、栃木73件、広島62件、京都59件、埼玉56件、宮城55件、三重42件、新潟39件、群馬36件、福島と愛媛が各34件、茨城32件の順。
 一方、最少は香川の1件で、山形2件、島根3件の順で少ない。
※ 各都道府県の労働局が公表した所在地に基づいて集計しており、本社所在地と異なる場合がある。

雇調金不正受給公表件数地区別・都道府県別

飲食業と建設業が200社超、人材派遣や旅行、美容などのサービス業他が半数を占める

 雇調金等の不正受給が公表された1,973件のうち、TSRの企業情報データベースで分析可能な1,530社(個人企業を含む)を対象に、産業別と業種別に集計した。
 産業別では、サービス業他の701社(構成比45.8%)が最多で、ほぼ半数を占めた。次いで、建設業218社(同14.2%)、製造業160社(同10.4%)、運輸業111社(同7.2%)、小売業98社(同6.4%)、卸売業90社(同5.8%)の順で並ぶ。
 細分化した業種別でみると、「飲食業」が219社(同14.3%)で最も多い。次いで、「建設業」218社(同14.2%)、人材派遣や業務請負などの「他のサービス業」148社(同9.6%)、旅行業や美容業などの「生活関連サービス業,娯楽業」123社(同8.0%)など、コロナ禍で打撃を受けた業種を中心に、上位6業種が100社を超えた。なお、前回調査と順位の変動はなかった。

雇調金不正受給公表企業産業別・業種別

公表時の業歴50年未満が8割超

 雇調金等の不正受給の公表企業で、公表時の業歴が判明した1,521社を分析した。
 1,521社のうち、10年以上50年未満が743社(構成比48.8%)と半数を占めた。次いで、5年以上10年未満416社(同27.3%)、50年以上100年未満が174社(同11.4%)、5年未満が163社(同10.7%)の順。 
 10年未満が579社(同38.0%)と4割弱だった一方、業歴100年以上の老舗も25社が公表された。
 雇調金特例措置が始まった2020年4月以降の設立(創業)は93社だった。

雇調金不正受給公表企業 業歴別

公表企業の倒産は146件、倒産発生率は7.39%

 不正受給が公表された企業のうち、2026年5月までに146件の倒産が確認された。公表された1,973件の7.39%にあたり、前回調査から0.57ポイント上昇した。
 普通法人の倒産件数÷普通法人×100で算出した、2025年度全国企業倒産の発生率は0.28%で、これと比べ、不正受給の公表企業の異常値が際立つ。
 倒産した146件のうち、公表後の倒産は102件(構成比69.8%)だった。不正受給の公表・発覚で取引先から信用を失い、受給金返還の負担も重なり、破たんに至った動きが透けてみえる。

雇用調整不正受給公表企業 倒産件数

◇      ◇      ◇

雇調金等は事業主が負担する雇用保険料を積み立てた「雇用安定資金」を財源とする。
 コロナ禍の雇調金等は、特例措置による助成率の引き上げや上限額の引き上げにより、業況悪化に見舞われた企業で働く従業員の雇用維持に一定の役割を果たした。一方で、迅速な支給を目的に手続きを簡略化した隙を突き、制度を悪用した不正受給も頻発した。厚生労働省によると、非公表企業を含む不正受給は2025年12月末で4,557件、支給決定取消金額は約1,139億円に及び、そのうち250億円余りが未回収となっている。
 国民負担に支えられる社会保障制度の悪用は、厳しい目が向けられ、返還が当然求められる。しかし、雇調金等の不正受給企業の倒産発生率は、通常の26.3倍にあたる7.39%と異常に高く、支給決定取消金額をすべて回収することは困難だ。
 不正受給を公表された企業が、助成金の返還や追徴金の納付等を済ませたうえで、適切な支援を求めることができる環境であるかが、事業継続の糸口になるだろう。

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