「鰻の成瀬」、株式譲渡を巡り対立が表面化~ 仮処分決定と株主間契約 ~
うなぎ料理専門店「鰻の成瀬」のフランチャイズ(FC)やコンサルティングなどを手掛けるフランチャイズビジネスインキュベーション(株)(TSRコード:136729983、滋賀県、以下FBI社)の周辺が騒がしい。
「鰻の成瀬」は、FBI社の代表者がFC関連の事業経験を基に2022年9月にオープン。職人が不要で安価にうなぎ料理を提供できる点を強みに急速にFC加盟店を拡大し、ピーク時には約380店を構えるまでに急成長した。
だが、その後は店舗の閉鎖が相次ぎ、現在は246店舗(ホームページ)に減少。一部のメディアで業績不振が報道されている。
こうしたなか、2026年3月31日にファンド事業展開のAIフュージョンキャピタルグループ(株)(TSRコード:036731315、東京都港区、東証スタンダード、以下AI社)がFBI社の株式を取得したことを発表。4月10日付で発行済株式の58.0%を取得し、子会社化した。
株式譲渡に反発する株主
AI社よる株式取得に対し、FBI社の株式を10.0%保有する(株)N&S Partners(TSRコード:132341328、東京都港区、以下NSP社)が反発している。
NSP社は、FBI社の代表者らによる株式譲渡を一切承諾しておらず、当該株式譲渡は株主間契約に明示された株式譲渡禁止条項に違反しているとし、4月1日付で、東京地裁に第三者への譲渡その他一切の処分行為の禁止を申し立てた。
4月24日、NSP社は東京商工リサーチ(TSR)の取材に応じた。NSP社の見解(要旨)は以下の通り。
4月10日付で東京地裁は本件の仮処分を決定した。今回の仮処分決定で、FBI社の代表者によるFBI株の第三者への譲渡は法的に明確に禁止されている。FBI社の株式譲渡承認は、FBI社の株式の半数以上を保有する代表者が株主総会決議を強行し、AI社がFBI社の株式を取得したことになっている。
だが、当然ではあるが仮処分決定に反した株式譲渡には重大な問題があり、代表者とAI社に対して損害賠償請求を提起する予定だ。
仮処分決定を無視する形でAI社がFBI社の株式を取得し、子会社化を進めることが許されるのであれば、司法判断の実効性が損なわれかねない。また、結果としてルールを守らない者が利するような事態を招きかねない点でも、極めて重大な問題をはらむと考えている。
AI社への売却の話が出る数カ月前からAI社とは別の企業への売却話が進んでいた。検討が大詰めを迎えていたにも関わらず、代表者は他の株主への十分な説明や合意を経る事なく、独断でAI社への売却を強行した。
AI社以外の企業からは最終意向表明書も提示されており、価格面や今後の成長政略等、あらゆる面でAI社の条件を大きく上回る提案がなされていた。
※なお、NSP社によると、5月28日にFBI代表者とAI社に対して損害賠償請求を提起した。
AI社の見解は
4月28日、AI社はFBI社の株式取得完了に関する経過を開示した。「仮処分は、譲渡株主(FBI社代表者ら)と譲渡株主以外の株主(NSP社)との間の株主間契約の条項により当事者間で決定している。譲渡株主と譲渡株主以外の株主との間での効力にとどまり、第三者である当社には仮処分決定の効力はない」(リリース資料、カッコ内はTSR補足)としている。
そのうえで、「譲渡株主に確認を行ったところ、株主間契約は無効との合理的な説明がなされ、譲渡株主の判断によりFBI社の株主総会が4月10日に開催された。今回の株式譲渡が会社法、諸法令およびFBI社の定款に基づいて適法に承認決議され、譲渡株主から4月10日に当社(AI社)に対して株式譲渡があったことから、4月1日付の株式譲渡契約に基づき株式取得を行い、株主名簿書換も完了している」(同)との姿勢を示した。
AI社は、「株式譲渡は有効であると考えており、株式譲渡およびFBI社の子会社化を実行した。今後開示すべき事項が生じた場合には速やかにお知らせする」(同)としている。

「鰻の成瀬」の店舗(TSR撮影)
(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2026年5月29日号掲載「取材の周辺」を再編集)