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「与信限度額」 企業物価上昇で約4割が引き上げ「新リース会計基準」、「知らない」企業は約7割

~ 2026年8月「与信ルールと新リース会計」に関するアンケート調査 ~


 長引く原材料高や人件費上昇で、企業物価指数の上昇が続いている。同一の仕入量やサービスでも取引金額が膨らみ、従来の与信枠(与信限度額)では支障を来たす事態も想定される。
 また、2027年4月から上場・大会社を対象に「新リース会計基準」(新基準)が適用されるが、全企業の約7割(68.8%)が「知らない」と回答した。新基準は、原則すべてのリース取引が貸借対照表(B/S)に計上するオンバランス化される。B/Sが肥大化し、自己資本比率やROA(総資産利益率)などの安全性・収益性の指標が見かけ上悪化する可能性がある。
 企業の与信管理は、こうした事業環境の悪化や制度変更などに伴い、従来の審査ルール、信用格付けモデルでは対応しきれない事態の発生も懸念される。

 東京商工リサーチ(TSR)は7月31日~8月11日、企業を対象に「与信ルールと新リース会計」に関するアンケート調査を実施した。
 企業物価指数の上昇を受け、与信限度額を「一括引き上げ・引き上げた(取引)先が多い」と回答した企業は約4割(36.0%)だった。与信限度額の引き上げは、大企業が39.5%に対し、中小企業は35.6%だった。また、同一取引先の与信限度額引き上げ率は、平均21.6%に達した。
 一方、新リース会計基準は約7割(68.8%)の企業が「知らない」と回答した。オンバランス化に伴う財務指標の変化で、与信規定を見直した企業は約2割(18.3%)にとどまった。
 企業物価指数の上昇で、与信限度額を見直す動きが見られる一方、2027年4月に迫った新基準への準備や認識には温度差が大きいようだ。
※ 本調査は、2026年7月31日~8月11日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答6,356社を集計、分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。    



Q1.企業間取引の価格変動を示す「企業物価指数」が上昇を続け、同じ物の仕入やサービス受領でも単価が上がっています。貴社は2023年以降、与信限度額の考え方を見直しましたか?(単一回答)

 2023年以降、与信限度額の見直しを行った企業3,011社から回答を得た。
 限度額の引き上げ・引き下げ先は「ほぼ同数」と回答した企業は57.0%で最も多かった。次いで、限度額を「引き上げた先の方が多い」との回答が29.2%、「一括して与信先に対する限度額を引き上げた」が6.7%で続く。
 与信限度額を「一括引き上げ・引き上げた先が多い」は、大企業が39.5%に対し、中小企業は35.6%で、大企業が3.9ポイント上回った。

Q1.貴社は2023年以降、与信限度額の考え方を見直しましたか?

Q2.2023年と比較して、同一企業に対する与信限度額は何%引き上げましたか?引き上げ率の平均値を回答ください。(1-100まで)

 与信限度額を引き上げた企業506社から回答を得た。
 2023年と比較し、同一取引先への与信限度額の平均引き上げ率は21.6%だった。2026年7月の企業物価指数(速報値)は135.8で、前年同月比7.2%上昇した。さらに、人件費や物流費も上昇しており、コスト上昇分がダイレクトに取引価格に反映しやすくなっている。このため、企業規模によって引き上げ率の捉え方の違いが浮き彫りとなった。大企業の平均引き上げ率は、全体平均の21.6%を下回る18.8%だった。一方、中小企業は21.8%で大企業を上回った。
 中小企業は、大企業より取引上の立場が弱く、取引先(発注元や仕入先)から提示された価格をそのまま与信額に反映せざるを得ない。
 そのため、自社のリスクマネジメント枠を超えた与信枠にもなりやすく、逆に取引数量を減らす対応も取らざるを得ないケースも出てくる。
 大企業は、取引先の与信枠を一律引き上げでなく、取引先の財務分析や信用格付けに応じて見直しているようだ。

Q2.2023年と比較して、同一企業に対する与信限度額は何%引き上げましたか?引き上げ率の平均値を回答ください

Q3.原則、すべてのリース契約を貸借対照表に計上(オンバランス)する「新リース会計基準」の上場・大会社への強制適用が2027年4月に始まります。このことを知っていますか?(単一回答)

 2027年4月から適用される新リース会計基準について尋ねた。
 新リース会計基準の適用について、全体の約7割(68.8%)の企業が「知らない」と回答した。一方、「知っている」との回答は、大企業が64.5%、中小企業が28.2%と、36.3ポイントの大差がついた。
 自社が直接の適用対象となる大企業は、準備や理解が進んでいるが、適用対象外(中小企業の会計に関する基本要領を適用)の企業が多い中小企業は、制度への認識や関心が薄い実態が浮き彫りとなった。ただ、上場や大企業が取引先にある場合、取引先の財務数値がオンバランス化で大きく変動するため、与信管理上の影響への準備不足も懸念される。

Q3.原則、すべてのリース契約を貸借対照表に計上(オンバランス)する「新リース会計基準」の上場・大会社への強制適用が2027年4月に始まります。このことを知っていますか?

Q4.新リース会計基準では貸借対照表が肥大化し、自己資本比率など安全性に関わる財務比率が低下する可能性があります。貴社はこうした点を踏まえて、与信規定を見直しましたか?予定も含めて回答ください。(複数回答)

 Q3で「知っている」と回答した企業のうち1,638社から回答を得た。
 新リース会計新基準の導入に伴い、これまでオフバランス処理されていたオペレーティング・リースが資産・負債に計上されるようになる。このため、B/Sが肥大化し、自己資本比率やROA(総資産利益率)等の指標が悪化する可能性がある。こうした財務比率の変化を踏まえ、自社の与信規定(審査ルールや格付けロジック)を見直した企業は、全体で18.3%(1,638社中、301社)と2割に届かなかった。
 制度適用まで1年を切ったが、大企業75.7%、中小企業74.2%の企業が「見直す予定はない」と回答した。新リース会計基準に対しては、既存の審査ルールで運用する実態が明らかとなった。
 新基準により取引先の経営実態に変化がなくても、財務分析の内容が悪化と捉えられるケースもあり、その場合は自動的に信用格付けの下降や与信限度額が変動することも懸念される。
 全体的に見直しが遅れている背景には、制度そのものの周知不足に加え、具体的に自社の審査モデルへどう影響を組み込むべきか、具体的なガイドラインや標準モデルが定まっていないことが要因と見られる。

Q4.新リース会計基準では貸借対照表が肥大化し、自己資本比率など安全性に関わる財務比率が低下する可能性があります。与信規定を見直しましたか?

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